都道府県、市町村の「健康日本21地方計画」及び保健所におけるたばこ対策実施状況とその評価(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301335A
報告書区分
総括
研究課題名
都道府県、市町村の「健康日本21地方計画」及び保健所におけるたばこ対策実施状況とその評価(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
谷畑 健生(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎米厚(鳥取大学医学部)
  • 青山 旬(国立保健医療科学院)
  • 川南勝彦(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 がん予防等健康科学総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、「健康日本21地方計画」を受けて都道府県、全国市町村および保健所が行うたばこ対策の実施状況を示し、たばこ対策の評価行い、地方計画および保健所でたばこ対策を取り組むべき今後の課題を明らかにすることを目的とする。
研究方法
(データベースの構築)全国保健所および全国市町村たばこ対策データベースに、管内保健所コード、管内市町村コード、人口(調査年、住民基本台帳)、都道府県コード、地域コードなどを付加する。
(市町村人口規模におけるたばこ対策実施状況)平成14年に当研究班によって行われた全国市町村たばこ対策実施状況研究で得られた平成14年度全国市町村たばこ対策実施状況調査データベースを用いた。このデータベースから都道府県別人口階級別、全国地域別に市町村のたばこ対策実施の有無を集計した。また保健所と市町村の関係を明らかにするために、保健所のデータベースは本研究班の成果である、平成13年度全国保健所たばこ対策実施状況調査データベースを使用した。
(たばこ対策についての保健所と市町村の関係)平成14年に当研究班によって行われた全国市町村たばこ対策実施状況研究で得られた平成14年度全国市町村たばこ対策実施状況調査データベースを用いた。このデータベースから都道府県別人口階級別、全国地域別に市町村のたばこ対策実施の有無を集計した。また保健所と市町村の関係を明らかにするために、保健所のデータベースは本研究班の成果である、平成13年度全国保健所たばこ対策実施状況調査データベースを使用した。
(たばこ対策実施状況を都道府県別に評価する方法の開発) 平成14年に当研究班によって行われた全国市町村たばこ対策実施状況研究で得られたデータベースを用いた。このデータベースから都道府県別人口階級別に市町村のたばこ対策実施の有無を集計した。この集計結果を調査対象市町村数で割り、都道府県別人口規模別市町村たばこ対策実施状況を求めた。このとき、データベース上で、たばこ対策の実施の有無を答えていない市町村と調査票を返送していない市町村はたばこ対策を行っていないと仮定した。次に全国市町村のたばこ対策実施期待度数を求めた。たばこ対策実施期待度数は全国人口階級別たばこ対策実施率に対して調査対象全国市町村数をかけたものである。たばこ対策実施期待比1というのは全国のたばこ対策実施率を示す。これによって全国のたばこ対策実施率に対して都道府県のたばこ対策実施率が下回っているか上回っているかどうかが比較できる。さらに都道府県で行われたたばこ対策が、都道府県民の喫煙率に沿って行われたものであるのかを評価する目的で研究を行った。平成13年度国民生活基礎調査より都道府県別喫煙率比を求めた。先の都道府県別のたばこ対策実施期待比と併せて、男女別に4つのカテゴリを作成した。1.喫煙率期待比が1%以上で、たばこ対策実施期待比1以上のもの(喫煙率が高く、市町村のたばこ対策を実施する割合が高い)、2.喫煙率が1未満で、期待実施比が1以上のもの(喫煙率が低いが、市町村のたばこ対策を実施する割合が高い)、3.喫煙率1未満で、期待実施比1以下のもの(喫煙率が低く、市町村のたばこ対策を実施する割合が低い)、4.喫煙率1以上で、期待実施比が1以下のもの(喫煙率が高いが、市町村のたばこ対策を実施する割合が低い)、と分類した。
結果と考察
(データベースの構築)
保健所データと市町村データがリンクできるように行った。このことにより、都道府県内のたばこ対策についての保健所-市町村の関係を用に解析できるようになった。
(市町村人口規模におけるたばこ対策実施状況)
特別区、政令指定都市、市、町、村別のたばこ対策実施状況、人口規模別のたばこ対策実施状況、地域別のたばこ対策実施状況を明らかにした。本研究によって、人口30万人以上規模の自治体と、30万人未満規模の自治体ではたばこ対策の実施状況が異なり、前者に比べて、後者は対策をしていない割合が高い。なかでも人口3万人未満規模の町、村はたばこ対策の実施が遅れており、中でも、九州、四国地方の実施率が低かった。これらの結果、人口規模が小さいことがたばこ対策の阻害要因に現れている。人口が少ない場合、行政の保健衛生部門はどの方面に向けて重点を行っているのかを明らかにする必要がある。
(たばこ対策についての保健所と市町村の関係)
人口規模が小さくなるほど保健所と市町村が連携してたばこ対策を行うことが少なかった。市町村からみて、保健所の機能、例えば啓発活動の拠点、事業の計画・企画の拠点、学校保健分野の拠点などの機能が市町村のたばこ対策を実施する上で役立った。一方でたばこ対策計画などに保健所の支援は必要でないと答えた自治体は5千人未満規模の自治体が最も多かった。学校保健分野連携の拠点、データベース機能、産業保健分野との連携の拠点、研修の拠点などの機能が管内保健所に備えられれば連携すると自治体が多かった。
(たばこ対策実施状況を都道府県別に評価する方法の開発)
市町村におけるたばこ対策実施が多い都道府県は、山形県、兵庫県、滋賀県の順であり、逆に低いところは沖縄県、長崎県、宮崎県の順であった。さらに都道府県喫煙率を加味して解析を行った。喫煙率が高く、市町村のたばこ対策を実施する割合が高い自治体は青森、岩手、山形など、喫煙率が低いが、市町村のたばこ対策を実施する割合が高い自治体は秋田、神奈川、石川など、喫煙率が低く、市町村のたばこ対策を実施する割合が低い富山、長野、沖縄など、喫煙率が高いが、市町村のたばこ対策を実施する割合が低い自治体は北海道、茨城、東京であった。
結論
わが国においてたばこ対策は都道府県によって、その実施状況に異なりがある。喫煙率を把握しながら対策を行っていない。人口規模の小さい市町村たばこ対策の実施状況が悪いことから、保健所の積極的な介入が必要である。しかし保健所にたばこ対策を行うための有効な機能がない場合があることから、市町村として積極的に支援を請うことがない場合がある。

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