生活用品、対策品の化学物質の発生と除去特性に関する研究

文献情報

文献番号
200301312A
報告書区分
総括
研究課題名
生活用品、対策品の化学物質の発生と除去特性に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
野﨑 淳夫(東北文化学園大学)
研究分担者(所属機関)
  • 池田耕一(国立保健医療科学院)
  • 堀 雅宏(横浜国立大学)
  • 鈴木昭人(INAX)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 食品医薬品等リスク分析研究(化学物質リスク研究事業)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
29,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)などの化学物質による室内空気汚染が社会的にも注目されるようになっている。汚染発生源としての建築材料に関わる化学物質発生量・特性は、種々の研究により徐々に解明されつつある。
しかしながら、居住者が室内に持ち込む生活用品(例えば、家具、燃焼器具、化粧品、芳香・消臭剤、ホビー用品など)の化学物質発生量や対策技術(空気清浄機、多孔質建材、ベイクアウトなど)の除去性能に関する科学的報告は、ほとんど行われていない現状にある。
そこで、本研究では、1)室内化学物質汚染の低減対策技術に関する適切な試験評価法を確立し、2)生活用品の化学物質発生量、3)各種対策技術の化学物質除去性能を実験的に求めるものである。さらには、4)生活用品の発生量と対策技術の除去性能を取り入れた高精度の室内濃度予測法を実現するものである。
これにより、室内に持ち込まれた物品の総量規制(許容発生量)を行う上で、必要な基礎的資料が得られるものである。
平成15年度の実施内容は、1)各種の低減対策技術の適切な試験評価法を確立し、2)生活用品の化学物質発生量と対策技術の除去量に関する実験室実験と実大実験を継続して行い、3)ある種の化学物質発生源を有する室内の化学物質濃度予測法を提案するものである。
研究方法
室内環境条件(温度、相対湿度、気流、換気量等)の制御できるステンレス製の実験チェンバー(気積:65[l]、5[m3]、11[m3])を用いて、ある種の生活用品の化学物質発生量と各種対策技術の除去量についての実験値を求めるものである。また、新たな室内濃度予測法を提案し、濃度予測値と実測値の整合性について検討した。
結果と考察
1)生活用品等からの化学物質の発生に関する研究
a)発生量M(μg/h)
①ホルムアルデヒド
家具(住設家具、一般家具)、衣類、電気式暖房器具(電気ストーブ、セラミックヒーター、ハロゲンヒーター)におけるホルムアルデヒドの発生量の範囲が明らかになった。
ⅰ)家具の発生量を求めた。住設家具のホルムアルデヒド発生量Mは、28.0~243[μg/h](Ave.89.5[μg/h]、n=4)、一般家具の発生量Mは、20.0~360[μg/h](Ave.162[μg/h]、n=5)を示した。
ⅱ)衣類の発生量Mは、0~0.167[μg/h](Ave.0.0949[μg/h]、n=11)を示した。
ⅲ) 電気式暖房器具の発生量を求めた。電気ストーブの発生量M]は、0~292[μg/h](Ave.99.3[μg/h]、n=2)、セラミックヒーターの発生量Mは、0~214[μg/h](Ave.56.8[μg/h]、n=2)、ハロゲンヒータの発生量Mは、0~404[μg/h](Ave.119[μg/h]、n=2)を示した。
②VOC
家具、衣類、電気式暖房器具におけるVOC発生量の範囲が明らかになった。
ⅰ)家具の発生量を求めた。住設家具のVOC発生量Mは、244~5187[μg/h](Ave.2099[μg/h]、n=4)、一般家具の発生量Mは、29.2~38178[μg/h](Ave.6678[μg/h]、n=6)を示した。家具は化学物質発生の抑制を意図した封止系塗料を実験2日前に塗布した。これにより溶剤のエタノールが検出され、大きな発生量を示している。一般的家具は数100~数1000[μg/h]の範囲にあるのではないかと考える。
ⅱ)衣類の発生量Mは、2.07~96.7[μg/h](Ave.27.5[μg/h]、n=15)を示した。
ⅲ) 電気式暖房器具の発生量を求めた。電気ストーブの発生量Mは、3.00~698[μg/h](Ave.202[μg/h]、n=2)、セラミックヒーターの発生量Mは、11.7~2704[μg/h](Ave.709[μg/h]、n=2)、ハロゲンヒータの発生量Mは、9.03~155[μg/h](Ave.54.7[μg/h]、n=2)、電気ストーブの発生量Mは、3.00~698[μg/h](Ave.202[μg/h]、n=2)、セラミックヒーターの発生量Mは、11.7~2704[μg/h](Ave.709[μg/h]、n=2)、ハロゲンヒータの発生量Mは、9.03~155[μg/h](Ave.54.7[μg/h]、n=2)を示した。
b)放散速度EF[μg/m2・h]
①VOC
自然塗料、フローリング(塗装無、塗装有)におけるVOC放散速度の範囲が明らかになった。
ⅰ)自然塗料の放散速度EFは、258~668[μg/m2・h](Ave.:411[μg/m2・h]、n=5)を示した。
ⅲ)無垢フローリングの放散速度を求めた。フローリング(塗装無)の放散速度EFは、14.8~168[μg/m2・h](Ave.59.2[μg/m2・h]、n=6)、フローリング(塗装有)の放散速度EFは、55.5~411[μg/m2・h](Ave.197[μg/m2・h]、n=7)を示した。
2)各種対策技術の化学物質除去性能
a)低減効果Rr[%]
①ホルムアルデヒド
ベイクアウト(床、壁、天井部位)、封止系塗料(エマルション系、セラック系、グラファイト重合塗膜)におけるホルムアルデヒドの発生源発生量低減率Rrの範囲が明らかになった。
ⅰ)ベイクアウトによる発生量低減率を求めた。ベイクアウトによる床部の低減率Rrは、11.7~36.5[%](Ave.23.7[%]、n=4)、壁部の低減率Rrは、10.7~21.1[%](Ave.15.2[%]、n=4)、天井部の低減率Rrは、8.02~48.5[%](Ave.31.4[%]、n=4)であった。
ⅱ)3種の封止系塗料による発生量低減率が明らかになった。封止系塗料(エマルション系)による低減率Rrは、2.34~67.2[%](Ave.34.8[%]、n=12)、封止系塗料(セラック系)による低減率Rrは、18.0~80.3[%](Ave.49.2[%]、n=12)、封止系塗料(グラフト重合塗膜)による低減率Rrは、13.0~92.0[%](Ave.65.1[%]、n=13)を示した。
②VOC
ベイクアウト(床、壁、天井)、換気システム、封止系塗料(グラファイト重合塗膜)におけるVOCの低減率Rrの範囲が明らかになった。
ⅰ)ベイクアウトによる発生量低減率を求めた。床部の低減率Rrは、5.89~27.8[%](Ave.19.4[%]、n=4)、壁部の低減率Rrは、5.00~32.9[%](Ave.22.4[%]、n=5)、天井部の低減率Rrは、19.6~39.9[%](Ave.31.3[%]、n=4)を示した。
ⅱ)換気システムによる室内濃度低減率は、26.5~67.7[%](Ave.50.8[%]、n=4)を示した。
ⅲ)封止系塗料(グラフト重合塗膜)による低減率Rrは、54.7[%](n=1)を示した。
b)相当換気量Qeq[m3/h]
①ホルムアルデヒド
家庭用空気清浄機、塗り壁材におけるホルムアルデヒドの相当換気量Qeqの範囲が明らかになった。
家庭用空気清浄機によるホルムアルデヒドの相当換気量Qeqは、8.10~19.9[m3/h](Ave.15.2[m3/h]、n=4)、塗り壁材による換気量換算値Qeqは、0.0612~5.42[m3/h・m2](Ave.1.84[m3/h・m2]、n=8)を示した。
尚、塗り壁によるホルムアルデヒド相当換気量は、気流0.2~0.3[m/s]における単位面積当たりの相当換気量(換気量換算値[m3/h・m2]])を示したものであり、無風の室内では、この様な除去性能は示されないものと考えられる。
②VOC
家庭用空気清浄機、塗り壁材におけるVOC相当換気量Qeqの範囲が明らかになった。
ⅰ)家庭用空気清浄機によるVOC相当換気量Qeqは、4.26~40.5[m3/h](Ave.13.0[m3/h]、n=10)を示した。
ⅱ)塗り壁材による換気量換算値Qeqは、0.0247~0.137[m3/h・m2](Ave.0.0640[m3/h・m2]、n=8)を示した。 
尚、塗り壁によるVOC相当換気量は、気流0.2~0.3[m/s]における単位面積当たりの相当換気量(換気量換算値[m3/h・m2])を示したものである。
3)総括的室内濃度予測法の提案
本研究では、生活用品の一部についての化学物質の発生量M[μg/h]と放散速度EF[μg/m2・h]の範囲、及び代表的対策技術についての化学物質の低減率Rr[%]と相当換気量Qeq[m3/h]の範囲を明確なものとした。これらの総量的資料と新たに提案した濃度予測式を用いることで、ある種の生活用品と除去機構を有する室内の総括的な濃度予測が実現できた。
結論
本研究では、室内空気汚染防止対策の実現に寄与する基礎的資料の収集を目的とし、(1)対策技術に関する試験評価法を確立し、(2)生活用品の化学物質発生量と対策技術の除去性能を把握し、(3)新たな総括的室内濃度予測法を実現した。
すなわち、
1)汚染低減対策技術(空気清浄機、ベイクアウト)に関する試験・評価法を提案した。
3)住設家具、一般家具、衣類、電気式暖房器具、自然塗料、建具等からの化学物質の発生レンジを明らかにした。
4)空気清浄機、ベイクアウト、第2種換気システム、封止系塗料、光触媒による化学物質除去性能について定量的に明らかにした。
5)化学物質の発生と除去機構の存在する室内におkれう高精度の化学物質濃度予測法を確立した。

公開日・更新日

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