臭素化ダイオキシン類に係る労働現場のリスク評価研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301292A
報告書区分
総括
研究課題名
臭素化ダイオキシン類に係る労働現場のリスク評価研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 治彦(中央労働災害防止協会)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤光弘(中央労働災害防止協会)
  • 山田 周(中央労働災害防止協会)
  • 神山宣彦(独立行政法人産業医学総合研究所)
  • 小川恭康(独立行政法人産業医学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 食品医薬品等リスク分析研究(化学物質リスク研究事業)
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
76,397,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臭素化ダイオキシン類の有害性は、塩素化ダイオキシン類の有害性と同等と考えられており、ダイオキシン対策特別措置法附則第2条においては、その調査を進めることが記載されている。労働環境は、一般環境に比べ、労働者の臭素化ダイオキシン類のばく露が高濃度であると推定され、よりリスクが高いと推定される。そこで、廃棄物焼却工場、家電リサイクル工場及びプラスッチク処理工場等で作業に従事する労働者を対象として、臭素化・臭素系ダイオキシンのばく露評価及び健康影響評価、そして、ばく露評価に有効な血液濃度の高感度分析法の開発及びその測定法の簡易化等を行うことにより、労働者への健康影響を未然に防止するためのリスク評価法を確立することを目的として調査研究を行った。
研究方法
作業環境調査は、調査に協力のえられる焼却処理工場、家電リサイクル工場、プラスッチク処理工場を対象として、各工程ごとに複数点の測定点を設定し、空気中の臭素化・臭素系ダイオキシン類、塩素化ダイオキシン類、粉じんを測定し、また焼却処理工場においては、飛灰・焼却灰、家電リサイク工場、プラスッチク処理工場では塵埃を採取し、これらの関係について解析するとともに異性体分布についても解析を行う。健康影響調査は、調査対象者に対して、調査趣旨を十分な説明をした上で、インフォームドコンセントを書面で得る。調査は、採血バッグに血液150~200mlを採取し、臭素化ダイオキシン類濃度と生化学検査、リンパ球機能検査等を行い、臭素化ダイオキシン類ばく露と健康影響の関係について疫学的解析を行う。臭素化ダイオキシン類濃度の高感度分析法の開発は、動物血液に既知量の臭素化ダイオキシン類を添加し、微量分析及び精度の確認を行なう。その上で、ヒト血液についても検討を加える。一方、高感度分析の課題としては、大量注入装置を用いた試料の大量注入、キャピラリーカラム、チューニング、分解能、質量校正用標準物質PKF等の問題があるので、これなる点についても検討も併せて行う。目標としては、ヒト血液30~40ml程度で分析可能とすることを考えている。
結果と考察
廃棄物焼却工場、家電製品リサイクル工場及びプラスチック製品製造工場等で作業に従事する労働者を対象とした臭素化ダイオキシン類によるばく露評価及び健康影響評価を行うと共に、ばく露評価に有効な血液濃度の高感度分析法の開発及びその測定法の簡易化等を行い、労働者への健康影響を未然に防止するためのリスク評価法を確立し、労働衛生対策の基礎資料とすること目的として、平成15年度も調査研究を行っている。
1)作業環境の実態調査
平成14年度は、協力の得られた廃棄物焼却工場、6ヵ所の工場で調査を行った。気中臭素化・臭素系ダイオキシン類は、すべての工場で検出され、実測濃度で、0.1~21.95pg/m3であった。気中塩素化ダイオキシン類は、3.19~333.65pg/m3であった。臭素化・臭素系ダイオキシン類と塩素化ダイオキシン類の毒性が同程度とすると、焼却作業場の臭素化・臭素系ダイオキシンのリスクは、塩素化ダイオキシン類と比較して低いものと考察された。
平成15年度は、協力の得られた家電リサイクル工場、4ヵ所の工場、廃棄物焼却工場、1ヵ所の工場で調査を行った。これらの工場から採取した作業環境中臭素化・臭素系ダイオキシン類及び集塵機等から収集した試料については、現在分析中である。データは、臭素化・臭素系ダイオキシン類濃度、塩素化ダイオキシン類濃度、異性体濃度等について多方面から解析する予定である。
2)健康影響調査
平成14年度は、インフォームドコンセントの得られた1ヵ所の工場の廃棄物焼却処理工場の健康影響調査を行った。廃棄物焼却工場で、協力の得られた15名について血液中塩素化ダイオキシン類濃度及び血液中PBDE濃度の測定を行った。血液中濃度は、平均的日本人の濃度範囲であり、過剰ばく露可能性を示す証拠はなかった。この他、臭素化ダイオキシン類生成の主要原因物質と考えられ、かつそのもの事態による人体汚染が懸念されているポリ臭素化ジフェニールエーテル等の臭素系難燃剤を含む2ヵ所の素材メーカの事前調査も解析中である。
平成15年度は、インフォームドコンセントの得られた家電リサイクル工場及び廃棄物焼却処理工場各々1ヵ所の健康影響調査を行った。データは、疫学的手法で解析中である。なお、解析にあたり、血液中臭素化ダイオキシン類の分析は、大量の血液を必要とすることから、解析方法を文献的に検討を行い、複数の血液をプーリングして分析しても、ばく露-非ばく露群間のオッズ比の算出は、可能であることが確認されたので、この方法を用いて、血液中臭素化ダイオキシン類ばく露のリスク評価を行う予定である。
3)臭素化ダイオキシン類の高感度分析法の開発
臭素化ダイオキシン類の高感度分析法の開発については、動物血液を用い、微量分析及び精度の確立について検討を行い、平成14年度には以下の結論をえている。
文献調査により、血液中臭素化ダイオキシン類のモデル測定法及びそれに必要な血液量の推算を行った。血液中あるいは母乳中の臭素化ダイオキシン類濃度の測定値について実験手順の詳細が記載されている従来の文献と最近の分析機器の進歩を考慮して、モデル測定法を考案した。それによって、当面の検出目標を塩素化ダイオキシン類と同等の5pg/g lipidとすれば、ヒトの必要血液量は、25~91gになると推算された。
血液中臭素化ダイオキシン類濃度のモデル測定法を検討した。サンプリングから前処理、濃縮、分析までの上記のモデル測定法を標準血液試料(臭素化ダイオキシン類の既知量を動物の血液に混入して作製)に応用して臭素化ダイオキシン類の回収率を調べ、同時に定量下限値の目安と精度を検討した。
臭素化ダイオキシン類の高感度分析法について、平成15年度も検討し、分析方法を確立した。この方法を用い、ラットの臓器とウシ血液に既知量の臭素化ダイオキシン類を添加し精度を確認した。更に、ヒト血液について臭素化ダイオキシン類の分析を行ったところ四及び五臭化物を検出したが、六及び七臭化物は検出されなかった。一方、高感度分析の課題としては、大量注入装置を用いた試料の大量注入、キャピラリーカラム、チューニング、分解能、質量校正用標準物質PKF等の問題があるので、平成15年度も引き続き検討を行い、更なる高感度分析法の確立を検討した結果、従来のGC用キャピラリーカラムは、高感度の臭素化ダイオキシン類を測定すると性能劣化が著しいことが判明した。そのため某社で新たに開発されたキャピラリーカラムを用い、ルーチン分析に可能かどうか、再検討を行っている。目標としては、ヒト血液30~40ml程度で分析可能とすることを考えている。
結論
廃棄物焼却工場、家電製品リサイクル工場及びプラスチック製品製造工場等で作業に従事する労働者を対象とした臭素化ダイオキシン類によるばく露評価及び健康影響評価を行うと共に、ばく露評価に有効な血液濃度の高感度分析法の開発及びその測定法の簡易化等を行い、労働者への健康影響を未然に防止するためのリスク評価法を確立し、労働衛生対策の基礎資料とすること目的として、調査研究を行っている。
平成14年度には、廃棄物焼却処理工場、6ヵ所の工場を対象として臭素化・臭素系ダイオキシン類及び塩素化ダイオキシン類の作業環境の実態調査を行った。また、インフォームドコンセントの得られた1ヵ所の工場の廃棄物焼却処理工場の健康影響調査を行った。血液中塩素化ダイオキシン類の分析法は、既に確立し、臭素化ダイオキシン類の高感度分析法について検討を行った。
平成15年度は、家電リサイクル工場、4ヵ所の工場と廃棄物焼却処理工場、1ヵ所の工場を対象として臭素化・臭素系ダイオキシン類及び塩素化ダイオキシン類の作業環境の実態調査を行った。また、インフォームドコンセントの得られた家電リサイクル工場と廃棄物焼却処理工場各々1工場の労働者を対象として健康影響調査を行った。血液中臭素化ダイオキシン類の高感度分析法は、臭素化ダイオキシン類の高感度分析法について、平成15年度も検討し、分析方法を確立した。この方法を用い、ラットの臓器とウシ血液に既知量の臭素化ダイオキシン類を添加し精度を確認した。更に、ヒト血液について臭素化ダイオキシン類の分析を行ったところ四及び五臭化物を検出したが、六及び七臭化物は検出されなかった。一方、高感度分析の課題としては、大量注入装置を用いた試料の大量注入、キャピラリーカラム、チューニング、分解能、質量校正用標準物質PKF等の問題があるので、平成15年度も引き続き検討を行い、更なる高感度分析法の確立を検討した結果、従来のGC用キャピラリーカラムは、高感度の臭素化ダイオキシン類を測定すると性能劣化が著しいことが判明した。そのため某社で新たに開発されたキャピラリーカラムを用い、ルーチン分析に可能かどうか、再検討を行っている。

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