食品用の器具、容器包装などの安全性の評価法等に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301201A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用の器具、容器包装などの安全性の評価法等に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
有薗 幸司(熊本県立大学)
研究分担者(所属機関)
  • 高尾雄二(長崎大学)
  • 篠原亮太(熊本県立大学)
  • 松崎弘美(熊本県立大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 食品医薬品等リスク分析研究(食品安全確保研究事業)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
6,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品容器等に使用されるプラスチック製品は、種々の添加剤などが含まれており、また、木製品および竹製品は防腐材や割れを防ぐための樹脂などを含浸している場合や抗菌剤を添加している場合が多く、それらが食品中に移行する可能性は否定できない。本研究では、食品用の器具、容器包装等を用いて大きく分けて4つの試験研究を行うことを目的とした。すなわち、使用時に溶出する可能性のある種々の有機化合物や金属についての総合的なスクリーニングを行うことを目的とした。また、木・竹製品については、4種類の防カビ剤について定量分析を行った。さらに、これら食品容器等からの浸出液のバイオアッセイ試験として酵母Two-Hybrid試験を行った。また、ICP発光分析法を用いて金属類のスクリーニングを行った。
研究方法
溶出試験には、熱湯溶出とジクロロメタン溶出の二種類の溶出方法で19試料について試験溶液を調製した。熱湯溶出液は、ジクロロメタンを加え、脱水後、濃縮し、GC/MSにより定性した。また、ジクロロメタン溶出試験は、脱水後、濃縮し、GC/MSにより定性した。なお、毎回、ガラスフラスコを用いてコントロール試験も並行して行った。
木・竹製品については、オルトフェニルフェノール,チアベンダゾール,ジフェニル,イマザリルを対象に、9検体について、定量分析をGC/MSを用いて行った。
バイオアッセイ試験は、酵母Two-hybrid試験によって、20検体のプラスチック製および木製の食品容器等から溶出する有機化合物にエストロジェン活性の有無を試験した。
金属イオンのスクリーニングは、39種の金属イオンを測定対象とし、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法を用い、前処理には、マイクロウェーブ分解で行った。
結果と考察
有機化合物のスクリーニング分析は、市販の食品容器等の19サンプルについて、溶出試験を行い、前年までと同様に数多くの化学物質が検出された。製品表面に残留したオイルやワックス類と考えられる有害性が低いと判断できる単純な構造を有する鎖状炭化水素類も検出されたが、芳香族環などを有する毒性が疑われる有機化合物も検出された。いくつかの試料から共通して検出された有機化合物は、Dioctyl phthalate1-Cyclohexene-1-carboxylic acid 2,2-Dimethoxy-2-phenylacetophenone、methyl 2-benzoylbenzoate、21h, 23H-Porphine, 2, 3, 10, 17, 18, 22-hexahydro-2, 2, 7, 8, 12, 13, 15, 17, 17-nonamethyl-、2, 6-Di-tert-butyl-4-methylphenol(BHT)、Dibutyl phthalate、2, 4-Di-tert-butylphenolであった。
木・竹製品9検体について、4種類の防カビ剤の定量した結果、ほとんどの試料で測定対象とした防カビ剤は見られなかった。しかしながら、木製品6種類の1つであるアイススプーン-2と竹製品3種類の1つである竹串-2でイマザリル及びジフェニルの存在がそれぞれ確認でき、そのうち竹串-2については9.9 ng/g-sampleのジフェニルが確認されたが、これは勧告値の約1/10,000量であった。
バイオアッセイの結果、ほとんどの試料でエストロジェン活性は確認できなかった。ただし、ストックバッグ-1,はし-1,はし-2の合計3検体でエストロジェン活性がある有機化合物が含まれていることが確認された。特に、ストックバッグ-1では比較的高い活性が確認されが、溶出試験の結果と対比させると、これからは非常に大きいフタル酸のピークがあり、これが原因である可能性が高い。また、はし-1及びはし-2については、塗料が塗布されており、塗料成分に含まれる多種多様の有機化合物が総合的に影響したと判断した。
プラスチック製品9検体について、ICP発光分光分析法を用いて試料中に含まれる金属イオンを分析した結果、多くの種類の金属が検出されたが、有害な重金属に関しては、確認されなかった。ただし、プラスチック類に重合触媒等として含まれている金属が幾つか検出された。
結論
市販の食品容器等19サンプルについて溶出試験を行った結果、非常に多くの化学物質が検出された。その中でも複数の試料に共通して検出される有機化合物もあった。また、木・竹製品については4種類の防カビ剤について定量分析を行った結果、竹串一種類から極微量のビフェニルを0.01(g/g検出したが、その他は不検出であった。なお、この値は勧告値の一万分の一程度と見積もられ、健康影響はないと判断できる。一方、容器からの浸出液のバイオアッセイ試験として、20サンプルで酵母Two-Hybrid試験を行った。17サンプルで反応は見られなかったが、2サンプルでエストラジオール-17?の100 pMに相当する反応が、1サンプルで1000 pMに相当する反応が得られた。これは、これら3試料中に女性ホルモン作用を示す化学物質が含まれていたことを表している。また、ICP発光分析法により市販容器等に含まれる金属類をスクリーニング分析した結果、触媒等として添加されている金属が幾つかの試料で検出されたが、有害な重金属等は検出されなかった。

公開日・更新日

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