C型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301136A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
熊田 博光(虎の門病院消化器科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯野四郎(清川病院)
  • 清沢研道(信州大学第二内科)
  • 金子周一(金沢大学大学院医学系研究科消化器内科)
  • 各務伸一(愛知医科大学消化器内科)
  • 恩地森一(愛媛大学医学部第三内科)
  • 佐田通夫(久留米大学医学部第二内科)
  • 赤羽賢浩(山梨医科大学第一内科)
  • 西口修平(大阪市立大学肝胆膵病態内科)
  • 沖田極(山口大学医学部消化器病態内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Ⅰ. 統一研究 全国でC型肝炎を専門としている主要大学あるいは病院において、過去5年間に実践されている治療実態および治療成績を調査し、2002年にまとめたC型肝炎ウイルス感染者に対する治療の標準化のガイドラインを補足、修正する。
研究方法
Ⅰ.班員の上記施設16施設を対象に実態調査を行った。その集計結果を基にC型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化のガイドラインをまとめた。実態調査は1997年から2002年までに治療を開始した症例を対象に1)インターフェロン(IFN)療法(Ribavirinとの併用療法を含む)の治療成績、2)IFN非適応例、無効例に対する治療法と治療効果の実態、について施行した。
結果と考察
Ⅰ. 統一研究1)IFN療法の治療成績;各施設より集められた3085例のデータを解析した。背景は男:女=1800:1281、年齢17-83歳(中央値53歳)、投与回数 初回2020例、2回目879例、3回目以上648例、肝組織像Staging F0-1/2/3/4=1365/879/482/166、であった。このうちIFN投与中や投与終了後の経過観察期間が不十分である症例を除き、IFN治療効果が判定可能であった2264例を解析した。A)全体の治療性成績(完全著効率):ウイルス量とGroup(serotype)別に検討した。Genotype 1の低ウイルス量の症例(209例)では71.3%、高ウイルス量症例(1176例)では20.2%であった。Group 2の低ウイルス量症例(266例)では82,3%、高ウイルス量症例(613例)では57,3%であった。B)Group、ウイルス量別の治療成績:「Group 1、低ウイルス量」209例の完全著効率71%、不完全著効率10%、無効18%、1.IFN単独6ヶ月以下投与(158例)、完全著効70%、不完全著効12%、無効22%、2.IFN単独7ヶ月以上投与(28例)、完全著効68%、不完全著効21%、無効11%、3.IFN,Ribavirin併用療法(25例)、完全著効80%、不完全著効16%、無効4%、「Group 1、高ウイルス量(IFN単独)」 587例の完全著効率16%、不完全著効率25%、無効60%、1.IFN単独6ヶ月投与(492例)、完全著効13%、不完全著効22%、無効63%、2.IFN単独1年以上投与(45例)、完全著効38%、不完全著効36%、無効27%、「Group 1、高ウイルス量(IFN, Ribavirin併用療法)」571例の完全著効率25%、不完全著効率15%、無効60%、1.IFN,Ribavirin併用6ヶ月投与(458例)、完全著効19%、不完全著効15%、無効66%、2. IFN,Ribavirin併用1年投与(74例)(Peg-interferonを含む)、完全著効62%、不完全著効18%、無効20%、「Group 2、低ウイルス量」266例の完全著効率83%、不完全著効率7%、無効10%、1.IFN単独6ヶ月以下投与(234例)、完全著効83%、不完全著効7%、無効11%、2.IFN単独7ヶ月以上投与(10例)、完全著効90%、不完全著効10%、無効0%、3.IFN,Ribavirin併用療法(22例)、完全著効78%、不完全著効0%、無効22%、「Group 2、高ウイルス量」613例の完全著効率57%、不完全著効率20%、無効22%、1.IFN単独6ヶ月以下投与(405例)、完全著効51%、不完全著効26%、無効23%、2.IFN単独1年以上投与(35例)、完全著効69%、不完全著効9%、無効18%、3.IFN,Ribavirin併用療法(158例)、完全著効73%、不完全著効8%、無
効18%、以上の結果から2002年度に作成したC型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化のガイドライン(2003年度版)を補足、修正した。[表1(初回投与)・表2(再投与)]今後PEG-IFN,Ribavirin併用療法などの治療法が施行できるようになれば、その都度、ガイドラインを改訂していく必要がある。(2004年度版)
2)IFN無効例、非適応例に対する治療 ;各施設より集められた905例のデータを解析した。背景は男:女=486: 419、年齢15-81歳(中央値60歳)、過去のIFN療法の有無 あり;369、なし;213、肝組織像Staging F0-1/2/3/4=150/151/99/50であった。治療法としては、UDCA、SNMC、IFN(少量投与)、瀉血の単独または併用投与であった。治療としては、単剤投与症例が705例(78%)、多剤投与症例が200例(22%)であった。A)単剤投与例:単剤で治療例の内訳は、UDCA 556例(79%)、SNMC59例(8%)、IFN40例(6%)、その他33例(5%)であった。「UDCAの治療成績(556例)」投与量は600mg投与例494例(89%)、300mg投与例39例(7%)であった。ALT値でみた治療効果では正常化203例(38%)、1.1-1.5倍160例(30%)、1.6-2倍98例(18%)、2.1-4倍68例(13%)、4.1倍以上12例(2%)であった。また治療開始時ALT値100IU/L以下の症例でのALT値の正常化率は43%(400例中172例)であった。「SNMCの治療成績(59例)」1回投与量は60mlが20例、40mlが18例、100mlが9例であった。ALT値の正常化症例は10例(17%)、1.1-1.5倍11例(19%)であった。B)多剤投与例:多剤投与で最も多かった投与薬剤はUDCAとSNMCの併用療法であった。(143例)1回投与量はUDCA600mg+SNMC60ml が49例、UDCA600mg+SNMC40ml が38例と多かった。治療によるALT値の正常化症例は29例(20%)、1.1-1.5倍51例(36%)、1.6-2倍40例(28%)、2.1-4倍16例(11%)、4.1倍以上6例(4%)であった。これらのデータを踏まえ治療のガイドラインとして1.ALT値100IU/L以下の症例に対しては、第一選択はウルソ600mg、2.ALT値100IU/L以上の症例に対しては、第一選択はSNMC(40-100ml/日)+ウルソ600mgとした。
結論
最近5年間の治療成績をもとに2002年度に作成したC型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化のガイドライン(2004年度版)を補足、修正した。また今回IFN無効例、非適応例に対する治療法についても治療のガイドラインを作成した。今後、本ガイドラインを中心に全国的規模で治療が進められ、医療格差の是正、医療経済への効率的還元、更に効果的な治療法の開発・確立へつながるものと期待できる。今後付随する種々の局面に対しては、広く意見を採り入れてガイドラインの改訂を行いたい。

公開日・更新日

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