「医療安全管理者」の標準的な養成及び活動方法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200301027A
報告書区分
総括
研究課題名
「医療安全管理者」の標準的な養成及び活動方法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
山本 修三(日本病院会)
研究分担者(所属機関)
  • 西澤寛俊(全日本病院協会)
  • 元原利武(日本病院会)
  • 大井利夫(日本病院会)
  • 飯田修平(全日本病院協会)
  • 柳川達生(練馬総合病院)
  • 佐伯みか(練馬総合病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者に安全な医療サ-ビスを提供することは、医療機関としての最も基本的な責務の1つである。厚生労働省でも、平成14年4月に医療機関における医療安全管理対策を重要視し、「医療安全対策検討会議」を発足させ総合的な医療安全対策を検討している。その中で、医療機関における安全対策としては、医療提供に際しては組織的な安全対策を講じて、安全確保をすることが必要であり、このためには継続的な改善活動を遂行し、業務等に関して標準化を推進すべきであるとまとめている。現在、各医療機関では安全管理体制を構築するために医療安全管理委員会を設置し、ヒアリハット事例分析等を図り、また、職員の教育・研修を図り意識啓発に努めているところである。しかしながら、医療安全管理者の活動の実体と業務の標準化はまだまだ十分とはいえない。早急に「医療安全管理者」の養成、育成を図り、患者の安全確保、医療の信頼確保に努めることが求められる。本研究ではその一環として、四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会 以下四病協)主催の「医療安全管理者養成課程講習会」を通して「医療安全管理者」養成の教材開発と活動マニュアルの策定を推進している。
研究方法
本研究では、四病協が実施している「医療安全管理者養成課程講習会」での講義をベ-スに本課題に対する日本および外国の実態調査をふまえ「医療安全管理者養成の教材開発と活動マニュアル策定」を行う。まず、医療機関の「医療安全管理」の実態を把握する必要性から、日本病院会、全日本病院協会の会員に協力を得て医療安全対策の現状、院長を始めとする職員の意識、医療安全管理者の業務実態、病院の取組等を掌握した。この調査では、1.院長あるいは医療安全管理者の責任者2.医療安全またはリスクマネージメント担当責任者に区分し、それぞれの立場から「医療安全管理」に対する考え方を把握したことが特徴といえる。また、実務に携わっている受講者の協力を得て1.医療安全管理および事故防止に関する調査2.医療の質向上に関する調査を実施し、医療安全に対する意識、取組等の把握と併せて講義内容についての意見を求めている。さらに並行して、産業界で一般に用いられている品質管理手法(RCA、FMEA等)をヒアリハット事例分析に援用するため、これらの技法をすでに導入している豪州、米国の病院での実態調査を行った。
結果と考察
本研究班が実施した「医療安全管理者の業務実態」調査では回収率が20%弱と低く、一概に判断はできないが、「医療安全管理」部門を独立させ活動している施設は27.3%、独立していないは61.5%であり、医療安全管理に従事している人数は平均で8.1人(公:8.9人、私:7.4人)、専任別となると平均1.2人という現状にあった。この現状から、早急に「医療安全管理者」を多数養成し、患者が安心して医療を受ける体制構築すべきと考える。また、調査結果から、四病協で認定した「医療安全管理者」に対する業務として1.医療安全の研修・教育2.ヒアリハット事例の収集・分析・改善策の立案を希望しているのが80%以上という結果であり、講習会を通して希望している事項を満たすよう助言、指導を検討する。講習会の受講者も7割以上が講習会に満足したと回答があり、17項目に区分した講義内容についてもすべて重要であったとの回答を得ており、「医療安全管理者養成の教材と活動マニュアル策定」に向けての参考とした。併せてヒアリハット事例の内容分析手法としてのRCA、FMEA活用についてはまだ導入の域に達
していない。本研究は2年の初年度であり、最終目標である「医療安全管理者養成の教材開発及び確立したマニュアルの策定」作りに向けてのワンステップとして活動を図った。
結論
本研究班で医療安全管理の現状を調査した結果、各医療機関で従事している「医療安全管理者」の役割は一様ではなく、また、業務活動を明確化したマニュアルの整備も充分でない現状が伺えた。このことから早急に標準的な「医療安全管理者養成の教材開発及び確立したマニュアルの策定」が必須であることと再確認した。このため、初年度調査したアンケート調査結果及び四病協で実施している「医療安全管理者養成課程講習会」の講義内容を分析、評価し教材の開発につなげたい。具体的な要領としては、四病協・講習会を頻回に実施することで講義内容の充実、向上と標準化を図りながら、わが国の医療現場に即した、役に立つ教材の開発を図ることとしている。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-