急性胆道炎の診療ガイドラインの作成、普及に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301023A
報告書区分
総括
研究課題名
急性胆道炎の診療ガイドラインの作成、普及に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
高田 忠敬(帝京大学)
研究分担者(所属機関)
  • 二村雄次(名古屋大学)
  • 平田公一(札幌医科大学)
  • 福井次矢(京都大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急性胆道炎は対象症例が極めて多いとともに、病変を表わすのではなく、かもしだされる病態、病状が主体であるために、最新の画像診断で捉えられない部分が少なくない。特に重症例ほどその傾向が強く、客観的評価や診療の標準化がないところに問題があり、対応する施設により診療内容が大きく異なっているのも現状である。急性胆道炎の重症例は生命が脅かされる疾病であるにもかかわらず、日本はもちろん欧米においても診療ガイドラインは存在せず、エビデンスの基づく急性胆道炎診療ガイドラインの作成および普及が臨床医療者から求められている。このような状況をふまえ厚生労働科学研究班を組織し、専門医集団である日本腹部救急医学会、日本肝胆膵外科学会、日本胆道学会の後援のもとで「急性胆道炎の診療ガイドライン」を作成することを目的とする。
研究方法
平成15年度:①エビデンスに基づいたガイドラインを作成するためMEDLINEや医学中央雑誌を用い文献を系統的に検索し、得られた文献のレベルを定め、質の高いエビデンス抽出を行う。このため、日本腹部救急医学会、日本肝胆膵外科学会、日本胆道学会から研究協力委員とガイドライン作成ワーキンググループ委員を選出する。委員の中には、ガイドライン作成やEBM実践に指導的立場にある医師や、臨床疫学、医療経済学者も加えた。平成16年度:②日本国内の医療現状と合わせ、実践的な治療法の推奨を行う。③コンセンサス会議、外部評価委員、実地医家より客観的評価を受け出版し、定期的に改訂する。しかし、この疾病ではエビデンスが古いものが多いとか、RCTが行われていないなどの問題があり、作成にあたっては問題提示(クリニカルクエスチョン)方式をとって委員によるコンセンサスを得ながら行わなければならない部分も少なくない。つまり、クリニカルクエスチョンに対する答えとしてエビデンス抽出結果およびコンセンサスを提示するという形式を用いた。
結果と考察
①文献の系統的検索結果:Medline:9,618件、医学中央雑誌6041件が検索された。得られた文献をガイドライン作成ワーキンググループ委員24名で評価し、質の高い論文を抽出した。(MEDLINE1,387文献、医中誌572文献)。②実践的な診療法の検討項目を以下の20項目とした。1)既出の急性胆道炎ガイドライン評価、2)疫学、3)臨床徴候、4)血液検査、5)細菌検査、6)画像診断、7)病理と病態、8)重症度評価、9)鑑別診断と鑑別疾患、10)基本的治療方針と初期治療、11)薬物療法、12)内視鏡的ドレナージ、13)経皮的胆道ドレナージ、14)外科的胆道ドレナージ、15)外科治療、16)腹腔鏡下手術、17)小児の急性胆道炎、18)高齢者の急性胆道炎、19)肝内胆管炎、segmental cholangitis、Oriental cholangitis、PBC、PSC、20)術後の胆管炎。③主要クリニカルクエスチョン項目を以下の9項目とした。1) 定義および病態:急性胆道炎とは何か?、2)疫学:なぜ急性胆道炎になるのか?治療後どうなるのか?、3) 症状と診断:検査のポイントはどこか?、4) 鑑別診断、術後胆道炎:胆道炎に悪性疾患は隠れていないか?、外科手術術後に胆道炎は隠れていないか?、5)急性胆道炎の重症度判定と搬送基準の考え方:どのように重症度を評価するか?、急性胆道炎の搬送基準は?、6)初期治療とその限界:基本的治療方針は何か?、7)胆道ドレナージ:胆道ドレナージ法の選択はどうするか?、8)急性胆嚢炎に対する外科治療:手術法の選択は?、9) 特殊な胆管炎、小児・高齢者胆管炎・特殊な胆管炎で注意すべき点は?。以上の主要クリニカルクエスチョンに続いて、それぞれ実臨床で求められる頻度が高い具体的で詳細なクリニカルクエスチョンを提示
し、推奨する診療を提示する形式とした。「臨床医にとって使いやすい」ガイドラインの来年度の完成を目標とする。④社会的影響への配慮:本ガイドラインは急性胆道炎診療に関する初めてのガイドラインとなる。そのため臨床医療への影響は著しく大きく、安易な内容ではかえって混乱を起こしかねない。さらに現在の標準的医療水準と捉えられる可能性も否定できず、場合によっては訴訟や裁判に関係する可能性も少なくない。完成後公表にあたっては、内容の十分な吟味から推奨文の表現にまで厳密な検討が必要である。
結論
急性胆道炎に対する診療ガイドラインによって、わが国における標準的診療方針が提示されることで、医療の標準化効率化、患者の予後改善、医療費削減が期待できる。

公開日・更新日

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