超強力サンドイッチ型超音波モータを用いたパワーアシストスーツの実用化

文献情報

文献番号
200300218A
報告書区分
総括
研究課題名
超強力サンドイッチ型超音波モータを用いたパワーアシストスーツの実用化
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
遠山 茂樹(東京農工大学)
研究分担者(所属機関)
  • 永井正夫(東京農工大学)
  • 梅田倫弘(東京農工大学)
  • 桑原利彦(東京農工大学)
  • エコプルワント(東京農工大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
41,066,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本における65歳以上の人口に対する割合は年々増加している。高齢になるに従い、肢体に不自由を訴える人は当然多くなる。それに加え、障害を抱えた方たちも数多く存在する。都市においてエレベータ、エスカレータ、スロープの設置、障害者の目から見た家の設計や乗用車の設計などでバリアフリーの環境作りを積極的に行い始めている。これら環境的なサポートに加え、高齢者、障害者をサポートするものとして、義手、義足に代表される補装具がある。身体機能を補助する能動的なものから、駆動力を有し身体機能を補うものまで様々なものが開発されている。転じて介護者側に目を向けると、少子高齢化のため、肢体不自由となった高齢者を支える若手介護者の負担が増加しており、介護活動は健常な介護者にとっても肉体的に負担の大きなものとなっている。これを考慮すると高齢者同士での介護においては介護者側の高齢者がけがをするという事態も容易に想像できる。そこで肉体的負担の軽減、全身の動作をサポートするパワーアシストスーツ(以降PAS)を提案する。まず、このPAS開発の一歩として、主に介護動作をサポートすることを目的とする。今回開発するPASのアクチュエータとして超音波モータを使用することとする。超音波モータはダイレクトドライブであり、静音性に優れ、省スペース化に有効であるという特性を有している。このような特徴を有する超音波モータを介護支援機器は従来にないものであり必ず広く普及すると確信している。
研究方法
本年度は二年目であり初年度である前年度の成果を元に、より実用的なパワーアシストスーツの機構の開発、サンドイッチ型高出力モータの開発を中心に研究開発を進めた。前年度に開発したΦ100、Φ120、Φ145のサンドイッチ型モータの出力を向上させるために、単体での構造の再検討を行った。さらにこれらの技術を踏まえ、Φ110のサンドイッチ型モータ、及び一回り小型のΦ80強力超音波モータを製作した。開発したモータの応答特性を調べるため、追従制御のプログラムを開発し実験を行った。代表的な関節として膝関節を取り上げ、歩行パターンを追従するように制御を行い、きわめて優れた追従性能を得たる事ができた。加えて新たに製作した強力超音波モータの応答特性を調べるための追従実験も行った。また、安全システムとして足裏に設けたロードセルによる重心検出の基礎実験を行い、有効に検出できることを確認した。さらに制御性、携帯性を向上させるための小型モータドライバの開発を行った。パワーアシストスーツの機構開発は重要なテーマである。前年度に開発したスーツに改良を加え、物を持ち上げることに特化した構造のスーツ(リフトタイプ)とした。さらに、多くの介護動作を再現するために動作を重視したスーツ(サポータタイプ)を開発した。
結果と考察
前年度の成果をにより、特にサンドイッチ構造にすることでトルクを同体積で約2倍に引き上げることが出来ることがわかったため、今年度は、ステータ構造を再検討しトルクを向上させた。特にΦ110サンドイッチモータは約13[Nm]のトルクを得ることができた。同時にこれまで製作したモータより一回り小さいΦ80小型強力超音波モータを開発した。このモータをステータ単体で約2[Nm]であるが、他のモータに比べ大幅な軽量化に成功しており、通常ステータを二枚で構成するサンドイッチ型モータをさらに多段化することも可能である。特に今回製作したアシストスーツには試験的にこのΦ80のモータを装備し動作実験をおこなった。アンプの小型、効率化のため実験的に様々
機能を付加したプロトタイプのドライバを開発した。これにより最終的にはタバコ箱大の大きさに出来ると確認できた。さらに安全システムとして、足裏のロードセルからの情報により装着者の重心位置を把握し、過負荷時、緊急時の安全停止を確認した。今回製作したスーツは前年度開発したスーツがモータ装備なしで約40[kg]であるのに対し、モータ装備の状態で約16[kg]と大幅な軽量化に成功しただけではなく、動作の自由度を向上させることもできた。特に、介護施設で頻繁に行われるベッド-車椅子間の移乗移載動作を再現できた。今年度の研究の結果、パワーアシストスーツの技術は完成したといえる。次年度ではフィールドテストを重ねることで、特に制御プログラムの調整、主に上半身の動作の構造を再検討する。また今年度末に新たに提案されたタイプのサンドイッチ型超音波モータを製作し、スーツに装備する。
結論
二年目である今年度の研究により、体の一部をサポートするような補装具としての技術にも容易に応用できるスーツ機構を完成できた。さらに、トルクの向上に成功した大型超音波モータの応用範囲は広く、主に柔軟な動作を必要とする機器に活用できる。また、アンプの大幅な小型化の目処がついたため、応用範囲が広くなったといえる。

公開日・更新日

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