韓国・台湾・シンガポール等における少子化と少子化対策に関する比較研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300047A
報告書区分
総括
研究課題名
韓国・台湾・シンガポール等における少子化と少子化対策に関する比較研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
小島 宏(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 西岡八郎(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 伊藤正一(関西学院大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではわが国との比較を交えながら、アジアNIESにおける少子化と少子化対策の動向と内外の格差について比較分析をするともに、少子化対策の効果を分析し、わが国の政府・地方自治体における少子化対策の策定・実施・評価に資することを目的とする。そのため、利用可能なデータの分析と並行して、アジアNIESと日本国内(少子・多子の地域・階層)において収集したデータによって内外の地域間・階層間格差を分析し、少子化の要因と少子化対策の潜在的効果を明らかにするとともに、わが国にとっての少子化対策の選択肢を提示しようとするものである。
研究方法
本研究は①文献・理論研究、②マクロデータの収集・分析、③既存ミクロデータの分析、④政策志向的分析からなる。①文献・理論研究としては、アジアNIESの各々とわが国について出生力転換前後の出生力の動向・要因と家族計画プログラムの効果を分析した研究等をレビューする。また、近年の少子化対策に関する文献がある場合にはそれらも合わせてレビューし、家族計画プログラムと少子化対策の効果に関する文献を比較検討する。さらに、NIESとわが国おける出生力変動、その要因、家族計画プログラムを含む出生政策の効果に関する文献を比較検討する。以上の文献研究と地域研究の専門家からのヒアリング等に基づき、政策効果を明示的に導入した出生力変動要因に関してNIESとわが国に共通な分析枠組みの設定を試みる。②マクロデータの収集・分析としては、NIESの各々とわが国について出生力をはじめとする人口指標、各種の社会経済的指標、政策指標に関するマクロデータを収集し、①で設定された分析枠組みと収集されたマクロデータに基づく出生力変動の規定要因の分析を行う。③既存ミクロデータの分析としては①で構築された分析枠組みと②の分析結果に基づき、NIESの各々とわが国について出生力変動の規定要因の分析を行う。また、NIESとわが国における別個のモデルをすり合わせた共通のモデルを用いて比較分析を行う。④政策志向的分析としては③で利用したミクロデータにマクロデータをリンクし、政策変数を含むマクロ的変動要因も加えた政策志向的分析を行う。以上の分析結果を総括し、わが国において潜在的に受容可能で出生促進的効果をもつ少子化対策の選択肢を比較検討しつつ提示することを目指す。
なお、第2年度は国内における資料・データ収集、専門家からのヒアリングを引き続き行い、文献研究と各国についてマクロデータに基づく分析を行うとともに、ミクロデータに基づく若干の比較分析を拡張し、韓国、台湾、シンガポールで現地調査を実施した。また、定性的研究の寄稿を得て補完を試みたほか、推進費でフィリピンの専門家を招聘し、少子化対策としての国際人口移動に関するセミナーを開催した。
結果と考察
本年度の研究により各国別の出生率の動向・格差、変動要因、政策的対応に関する最新の情報が明らかになり、一部の国に関する類似のモデルによる比較分析からは出生行動・意識に関する類似点・相違点があることも示された。実際、過去1~2年の間にアジアNIESはわが国を上回るような少子化を経験し、それに呼応して少子化対策が急速に進展しつつある。しかし、少子化の速度は国により異なるし、地域・階層によっても異なる。また、少子化対策として明示的な出生促進政策を採る国もあれば、国際人口移動政策を用いる国もあり、一様ではないが、そのような相違がわが国にとっての政策的含意をもちうる。
結論
アジアNIESと日本は急激な少子化と非常に低水準の出生率を経験しているという点で共通するし、その近接要因として晩婚化やその背景要因としての高学歴化や女性の労働力参加率上昇があることでも共通しているが、少子化対策については各国の国情を反映して異なる対応がみられる。そこで、各国の少子化の動向と少子化対策について継続的にモニターして行く必要があることが明らかになった。また、多くの国は1997年の金融危機に伴う雇用情勢の悪化の影響もあって近年、急速な少子化が進んでおり、わが国でもバブル崩壊以降の雇用情勢悪化の影響を再評価する必要があろう。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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