病院歯科の地域歯科医療支援等の機能面からみた現状分析と歯科医療提供体制の推進に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200201358A
報告書区分
総括
研究課題名
病院歯科の地域歯科医療支援等の機能面からみた現状分析と歯科医療提供体制の推進に関する総合的研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
寳田 博(三井記念病院歯科・歯科口腔外科)
研究分担者(所属機関)
  • 山田祐敬(岡崎市民病院歯科口腔外科)
  • 田中義弘(神戸市立中央市民病院歯科口腔外科)
  • 佐野晴男(都立荏原病院歯科口腔外科)
  • 梅村長生(愛知三の丸病院歯科口腔外科)
  • 川崎浩二(長崎大学歯学部予防歯科教室、歯学部附属病院初期治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
-
研究終了予定年度
-
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病院歯科(病院内に併設されている歯科診療施設)に関して地域歯科医療支援等の機能面からみた全国規模における精度の高い現状分析を行い、今後の効率的歯科医療提供体制の確立を推進するためには、病院歯科をどのように定義し、歯科医療の中でどのように位置付けたらよいか、また歯科医療提供体制の確立を推進する上で問題点がどこにあるかに関して総合的に研究する。
研究方法
歯科大学・歯学部附属病院29施設に加えて、病院要覧に記載してある全病院の中から、歯科に関連する標榜科名を掲げている施設(精神病院の歯科施設を除外)を抽出。これらの施設を対象として、平成12年における各施設の実績を基礎としたアンケート調査を行った。対象施設を、1.一般病院歯科施設(以下、一般病院歯科と略す)、2.医科大学・医学部付属病院歯科施設(以下、医施設歯科と略す)、3.歯科大学・歯学部附属病院(以下、歯施設と略す)、の3群に分け、それぞれの群に対して別個の調査表を作成した.設問はできるだけ3群に共通の内容としたが、各群に固有な問題については独自の設問も作成した.設問総数は111問であった。統計的分析は、一次集計に加えて、以下の5テーマについて分担研究を行い、問題点の掘り下げを行った。1.自冶体病院歯科における歯科医療支援等の機能面からみた現状分析と歯科医療提供体制に関する研究(山田祐敬、岡崎市民病院歯科口腔外科部長)、 2.地方自冶体と大都市圏における病院歯科の現状分析と歯科医療提供体制からみた比較研究(田中義弘 神戸市立中央市民病院歯科口腔外科部長)、 3.大都市における病院歯科の歯科医療支援等の機能面からみた現状分析と歯科医療提供体制に関する研究(佐野晴男 都立荏原病院歯科口腔外科医長)、 4.一般病院における歯科施設の機能面からみた現状分析と歯科医療提供体制との関わりについての研究(梅村長生 愛知三の丸病院歯科口腔外科部長)、 5.歯科医科医育機関における機能面からみた現状分析と歯科医療提供体制の推進に関する研究(川崎浩二 長崎大学歯学部予防歯科学講師)。
結果と考察
最終的な対象施設数は1,474施設であり、回収率は全施設で71.4%、一般病院歯科70.3%、医施設歯科84.2%、歯施設93.1%であった。従来不明確であった病院歯科の機能として、1.口腔外科疾患の治療を主体とする高次歯科医療による地域歯科医療支援機能、2.有病者を筆頭に感染症患者、障害者、在宅患者に対する後方支援機能、3.教育研修機能、の3項目に集約した。一般病院歯科施設は数が圧倒的に多く実態は多彩である。標榜科名では「歯科」が60%を占めており、診療業務が「一般歯科治療を中心」にしている施設が56.9%を占めている。分担研究の結果によれば、一般病院歯科の機能評価は、常勤歯科医師が3名以上の施設(大都市型)と2名以下の施設で分岐していた。自治体病院では救急医療への参画、紹介率の高さなど病院歯科機能が高いものの、設立母体が都道府県立、市立、町村立、公立によって病院歯科機能が異なることが明確となった。所在地を中心として「都市型」と「地方型」に分けて比較した結果では、病院歯科加算、逆紹介、常勤歯科医3人、登録医、学会認定医の5項目において特徴的であった。さらに、病床規模(200床以下、200~400床、400床以上)と高次医療との関連性が高いことが判明した。今後の歯科医療提供体制における病院歯科の機能を考えたとき、常勤歯科医師数が2人以下、特に一人医長
の一般病院歯科施設を歯科医療提供体制の中でどう位置付けるかが最も重要である。医学部・医科大学附属病院歯科診療施設では、特定機能病院としてその機能が明確にされつつあり、実態としても病院歯科機能がもっとも高いと判断された。歯学部・歯科大学附属病院は、将来像として自施設を地域の高次歯科医療機関として位置付けており、現実でも近年高次歯科医療を必要とする患者が増加している。一方、約3/4の施設において近年初診患者数は増加傾向または変動がないにもかかわらず、約半数の施設で臨床研修用の患者が減少し教育上支障をきたしている。高次医療の指標の一つと考えられる病床利用率は、22.5%から94.4%と幅があり、50%を切る施設が6施設みられた。受診患者数は増加傾向にあるが、臨床研修に支障をきたしている施設が52%あり、37.3%の施設で将来に不安をもっている。経営的には約87%の施設が赤字であり、臨床研修のための建前と経営的な側面とが乖離している状況が示唆された。
結論
問題点として1.病院歯科の恒常的不採算性、2.歯科医師臨床研修制度と採算性、3.病院歯科機能の客観的評価、4.一般病院歯科施設の類型化、5.「かかりつけ歯科医」制度との整合性、をあげ検討した。今後の現実的な課題として以下のごとくまとめた。1)病院歯科の収入は他科に比べて低く、経営状態は歯科医育機関において特によくない。病院歯科の採算を改善するには、いわゆる有病者歯科治療へのなんらかの評価をすべきである。2)研修施設として一般病院歯科の積極的な参入を図るためには歯科医師臨床研修における単独施設の条件を緩和すべきである。3)一般病院においては、常勤歯科医師が2人以下、特に一人医長の施設を今後の歯科医療提供体制の中でどう位置付けるかが最も重要であり、その方法として(1)地域歯科医療支援病院のない二次医療圏において機能的な特化を促進、(2)有病者歯科医療への受け皿として機能、(3)慢性期医療の歯科保健医療における指導的存在として再生存続させる、などをあげた。今後の歯科医療提供体制は、病院歯科機能評価と採算性を軸としてある程度の機能分化は自然な形で進んで行くものと考えられるが、これらの課題に対して積極的に対応することにより、「かかりつけ歯科医」との関連において歯科医療の効率化を政策的に推進することが急務であると考えられる。

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