歯周疾患の予防、治療技術の評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201355A
報告書区分
総括
研究課題名
歯周疾患の予防、治療技術の評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
鴨井 久一(日本歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 桐村和子(日本歯科大学)
  • 米満正美(岩手医科大学)
  • 石井拓男(東京歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科保健医療のなかで、歯周疾患の予防、治療技術の開発は、8020運動、健康日本21と連動して歯周組織の保全・維持に重要である。本研究は、平成12年度、13年度、14年度の3か年の継続研究として、従来の歯周疾患診査で用いられている疫学検査、臨床検査を補完する唾液を用いた臨床検査法を確立することを目的としている。
研究方法
健常者と歯周疾患患者を対象として、唾液検査(生化学・細菌検査)・血液検査(生化学検査)、口腔診査および生活習慣を中心としたアンケート調査を実施し、それらの関連性を検討した(基準値設定グループ、予防歯科グループおよび歯周病グループ)。また、歯周疾患の経済的評価グループは、全国市町村の国保診療費データ、全国市町村の国保加入者データ、各市町村の人口10万人あたりの歯科医師数、所得格差、老人保健事業データなどの資料をもとに、老人保健事業と歯科医療費についてクロス集計を行った。
結果と考察
①唾液生化学検査項目のうち、LDH、ALPおよびF-Hbは歯周疾患のスクリーニングに対して有用な指標となりうることが明らかになり、さらに各検査項目について健常者における基準値(LDH=352U/l、ALP=8.5U/l、F-Hb=0.5mg/l)を設定することができた。従来のスクリーニングでは、CPIを主体としていたが、唾液検査を一つの指標とすることで経済性、簡便性がうたわれ、効率の良い検査が行われるものと考えられた。②生活習慣を中心とするアンケート調査では、就寝前生活習慣、自発的生活習慣および趣向的生活習慣の3つの構成概念からなる質問項目を設定した。分析結果から、疫学診断に有用な質問項目からなるアンケートを作成することができた。なかでも、運動や歯間清掃の自発的生活習慣に関する項目が、疫学診断として有用であることが示唆された。③歯肉炎治療の有効性は臨床所見から明らかであった。歯肉炎の程度や治癒状況は喫煙、不規則な生活習慣により影響された。また、歯肉炎患者においても、唾液検査結果は血液検査結果と関連しなかったことから、唾液検査は歯肉炎検査として有用であることが示された。歯周病原性細菌は、菌種により特異的な変動パターンを示した。④歯周疾患中等度・重度の病態では、LDHおよびALP活性は高値を示し、治療の進行と共に低下した。歯周基本治療、歯周外科治療の終了時に臨床パラメーターの推移と共に両酵素活性もほぼ基準値のレベルに到達した。歯周病原性細菌の推移も、前述の治療後と同様に減少傾向を示した。細菌検査では、Porphyromonas gingivalis(P.g)、Prevotella intermedia(P.i)およびBacteroides forsythus(B.f)の3菌種について、総菌数に占める割合を測定することが重要であることが確認された。⑤「歯の健康教育」の実施は1994年にかけて増加したが(50%を超える)、その後は平衡状態を保ち、また歯科衛生士の参加数の増加が認められた。「歯の健康相談」では、歯科医師、歯科衛生士共に増加が認められた。
結論
唾液を用いた歯周疾患に対する臨床検査のうち、有用性が認められたものは生化学検査では、LDH(352U/l)、ALP(8.5U/l)およびF-Hb(0.5mg/dl)であった。なお、( )内の数字は基準値である。また、細菌学検査ではP.g(0.1~0.4%)、P.i(0.1~0.2%)およびB.f(0.1~0.3%)の3菌種であった。( )内の数字は、健常者および歯周治療者のデータから設定した基準値(総菌数に占める割合)である。
以上のとおり、唾液を用いた生化学および細菌学検査の数項目について、基準値の設定ができたことから、唾液検査は歯周疾患のスクリーニングや診査に有用となるものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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