Mass Gatheringにおける集団災害のガイドライン作成とその評価に関する研究

文献情報

文献番号
200201318A
報告書区分
総括
研究課題名
Mass Gatheringにおける集団災害のガイドライン作成とその評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
山本 保博(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井千穂(大阪府千里救命救急センター)
  • 浅井康文(札幌医科大学)
  • 辺見弘(国立病院東京災害医療センター)
  • 杉山貢(横浜市立大学)
  • 石井昇(神戸大学)
  • 石原哲(医療法人社団誠和会白鬚橋病院)
  • 杉本勝彦(昭和大学)
  • 小井土雄一(日本医科大学)
  • 勝見敦(武蔵野赤十字病院)
  • 森村尚登(国立横浜病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1000人以上の集まりは安全面から集団の行動は管理される必要があるとされている。Mass-gatheringにおける災害は、いったん起これば人々が密集しているためパニック状態も加わり、多くの死傷者を出すことになる。歴史的にみてもMass-gatheringにおける集団災害は、災害のインパクトの大きさ以上に死傷者が出ており、集団災害の中でも特殊な災害として捉えることが必要である。よってこのようなMass-gatheringにおける集団災害に対しては、事前の周到な災害医療計画に基づく準備が必須である。欧米ではMass-gatheringに該当するイベント開催の際は、事前に周到な医療計画書の提出が義務付けられている。本邦においても明石の花火事故のような悲惨な事故を繰り返さない為にも、Mass-gatheringに対する医療体制のregulationが必要であると考える。本研究の目的は、初年度(平成13年度)、次年度(平成14年度)は2002 年FIFAワールドカップ(WC)大会を題材の中心にしてMass-gatheringにおける集団災害医療対応のモデルを作り上げ、実際にWC大会において集団災害対応の構築を試み、大会後に評価することである。そしてこれらの経験をもとに、最終的には本邦におけるMass-gatheringに対する医療計画のガイドライン作成のための基盤作りをすることである。このガイドライン作成の基盤が明確にすることにより、様々な規模やタイプなど異なったあるいは各地域におけるMass-gatheringでの集団災害に対する適切な対応・準備が行えることが期待される。
研究方法
初年度(平成13年度)の研究、特にマニュアルの提示、セミナーの開催により、WC大会における集団災害対応の準備の必要性は各開催地に対して充分に啓発することができたと考える。この結果を持って、平成14年度は下記の研究を行う。
1)第16回WC大会は本年5月31日開幕する。本邦においては6月1日より6月30日の決勝戦まで、全国10ヶ所(札幌、宮城県、新潟県、茨城県、埼玉県、横浜市、静岡県、大阪市、神戸市、大分県)で32試合が行われる予定である。現在各開催地間で集団災害対応の準備は、まだまだ温度差があるが、マニュアルを提示したことにより、開催直前までに、どれだけ統一性のある準備が構築されたか検証する。検証する方法としては、今回我々が作成したマニュアルを基にしたチェックリストを作成し、それに従って研究者が現地調査を行う。調査の中心は、I)スタジアムの集団災害医療体制II)競技場内外の体制 III)関連諸機関の連携体制IV)広域集団災害医療体制V)国際帰省搬送を含んだ外国人医療体制等とする。調査後、研究者は結果を現地にフィードバックしアドバイスする。
2)マニュアルを韓国の集団災害対応の準備と比較検討し可能ならば統一性を持たせる。実際には本年4月に釜山で行われる韓国救急医学会で、日本の準備状況を発表し、両国間で更に検討する。
3)大会期間中は、スタジアム内医療の疫学的調査を行う。開催地10ケ所で同一の疫学的調査票を使うことにより、Mass-gatheringにおける疾病構造を調査する。
4)本邦のMass-gatheringにおける集団災害の検証を行う。平成12年6月のYOSAKOIソーラン祭りの会場テロ、平成13年7月の兵庫・明石花火大会事故等の検証を行う。
1)~4)の研究により、本邦独自のMass-gatheringの際に準備すべき救急医療・集団災害医療体制の規定を作成する。
結果と考察
1) 全国10ケ所の開催地では、救急医療体制はもとより、集団災害対応体制が敷かれた。この研究班が立ち上がる以前では、WC大会をMass gatheringの観点から捉え、集団災害対応準備の必要性を考える者が居なかったことを考慮すると、最終的に全てのスタジアムで集団災害対応準備がとられたことは、この研究班の最も大きな成果であると考える。個々のスタジアムでとられた体制の詳細に関しては報告書で述べる。また、初年度当班が提示したガイドラインおよびマニュアルの各地域への普及の度合いについてアンケート調査を行った。アンケート結果においては報告書に詳細を譲るが、スタジアムエリア内とエリア外の2つに分ける考え方、一般救急医療対応と集団災害対応を分けて考える方法など、多くのスタジアムでマニュアルが受け入れられたと考えられた。
2) 2001年11月および2002年1月の韓国との合同カンファレンスでWC大会前の準備過程を両国間で比較検討し、また、2002年11月にはWC大会終了後の事後検証を合同で行った。
3) 大会期間中の傷病者の疫学的調査の結果をまとめた。幸い集団災害は発生しなかったが、メーリングリストによる大会開催中情報交換により各地域の傷病者や体制に関する情報を概ねリアルタイムに把握しながら対応することが出来た。今回のWC大会の傷病者数・重症度ほか疫学データを概ね算出することができたが、今回のデータ収集は、日常的に実施されているMass gathering eventの種類や規模に応じた効率よい集団災害医療・救急医療プランを作成するために有用であり、今後各eventのデータ集積を図り傷病者に関するリスクファクターを検討してデータ積み重ねて行くことにより、Mass-gatheringに対する医療計画のガイドライン作成のための基盤が構築されると期待された。
4) YOSAKOIソーランおよび明石花火大会事故の検証結果に関しては既に十分な報告書が提出されていると判断し、今回の報告には含めないこととした。
結論
1)~4)の研究結果を踏まえて、本邦独自のMass gatheringの際に準備すべき救急医療・集団災害医療体制の規定を含んだガイドラインを作成するにあたって、以下のような案を提示したい。
今後、Mass gathering の際に準備すべき救急医療・集団災害医療プランに関する標準ガイドライン作成のためには以下の事項が必要と考えた。
1.Mass gathering eventの定義
2.プラン作成にあたっての必要事項
2.1. プラン作成の主体となる機関の確認
2.2 連携諸機関
3.プラン作成の実際
3.1 組織構成
3.1.1救急医療・集団災害医療対策本部
3.1.2通信情報センターの設置
3.1.3現場医療救護班
3.1.4後方病院
3.2 プラン作成のポイント
1) 救急医療・災害医療対応を実施する期間あるいは時間帯を決定する
2) イベント情報を確認する
3.3 人員とスキル
3.4 資器材
3.5 記録

公開日・更新日

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