第三者による病院機能評価活動の効果的・効率的な評価手法の研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201299A
報告書区分
総括
研究課題名
第三者による病院機能評価活動の効果的・効率的な評価手法の研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
伊賀 六一(財団法人日本医療機能評価機構)
研究分担者(所属機関)
  • 大道久(財団法人日本医療機能評価機構)
  • 寺崎仁(財団法人日本医療機能評価機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
11,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合版評価項目をより効果的・効率的にかつ適切に運用するための方策として、2つの課題に沿って研究開発を行うこととした。ひとつは、社会的に特段の役割を担う病院の機能について専門的に評価するための「付加機能評価項目」を開発することを目的とした。もうひとつは、統合版評価項目による審査結果のとりまとめ業務を効率化するための情報システム開発であり、評価調査者から提出される情報のデータベースへのインポート機能など、運用を効率化するための機能を整備することを目的とした。
研究方法
付加機能評価項目体系を開発するに当たり当初は「救急医療機能」「リハビリテーション医療機能」「緩和ケア機能」「臨床研修機能」の4分野を評価対象領域とした。訪問審査の枠組みとして評価調査者2名が1日で審査することを想定し、中項目で20~30項目程度に集約することを目標とした。評価項目は、評価対象医療機関で想定されている機能を抽出するとともに、それが評価可能な代用特性となっているかどうかについて検討した。書面審査調査票については、Structureおよび一部Outcome要因について抽出・整理した。
これらの検討の経過において、臨床研修機能については、国の制度が大きく改定される時期でもあることから、今年度の検討対象からは除外することとした。
次に情報システムの開発に当たり、従来の手順を改め、訪問審査結果をスプレッドシートやワードプロセッサーなどを用いて電子化された方法で入力し、フロッピーディスクまたは電子メールで提出する方式とした。そして提出されたファイルをデータベースに自動的に取り込むことを想定した。これによって作業の効率化が図られるとともに、人的作業による入力ミス等も防止することが期待できる。これらの仕様をまとめ、プログラムの開発・テストについては情報処理会社に委託した。
結果と考察
「救急医療機能」については、地域における高次救急(3次救急医療、もしくはそれに準ずる救急医療)を担うことを役割としている病院を対象として「Em.1救急部門の地域における役割と基本方針」「Em.2救急部門の組織体制の確立」など6つの大項目を設定した。また、救急医療機能の現況調査として「1.基本情報」「2.病床数の状況」「3.地域の状況」など8区分についてデータの提出を求めるための調査票を策定した。さらに「救急患者の診療件数とアウトカム一覧」という設問を設け、脳神経疾患、循環器疾患、呼吸器疾患、腹部救急疾患、外傷の区分ごとに施療件数とそのアウトカムのデータを求めた。
リハビリテーション医療機能については、議論の結果領域名称を変更し、「リハビリテーション機能」とした。そのうえで、対象医療機関は①総合リハビリテーション施設(A)もしくは(B)の施設基準を取得し、言語聴覚療法(Ⅱ)以上を取得している施設、②回復期リハビリテーション病棟を保有している病院で、言語聴覚療法(Ⅱ)以上を取得している施設、③(老人)理学療法(Ⅱ)かつ(老人)作業療法(Ⅱ)かつ言語聴覚療法(Ⅱ)以上を取得している施設とした。また「Rh.1リハビリテーション部門の地域における役割と基本方針」「Rh.2リハビリテーション部門の組織体制の確立」など6つの大項目を設定した。リハビリテーション機能の現況調査として「1.基本情報」「2.リハビリテーションに関する施設指定」「3.病床数の状況」など12区分についてデータの提出を求める調査票を作成した。このなかで、入院時と退院時の自立度の改善状況をFIMまたはB.I.で回答するなど、アウトカムについてもデータを求めることとした。
緩和ケア機能については、緩和ケア病棟もしくはホスピスを保有する病院を対象として「Pc.1ホスピス・緩和ケア病棟の運営」「Pc.2患者の尊厳・プライバシーと安全の確保」など5つの大項目を設定した。緩和ケアの特性としてケアの対象が患者のみならず家族にも及ぶこと、医療的な対応のみならず、スピリチュアルなケアも必要となること、全人的な対応のために、宗教者やボランティアなど、医療職以外の人材の役割・機能なども想定する必要があることなど、統合版評価項目では捉え切れていない部分を評価することが課題となった。また緩和ケア機能の現況調査として「1.基本情報」「2.病床数・病床利用率」「3.職員・スタッフ」など7区分について、それぞれ活動状況を示すデータを提出するための調査票を策定した。
付加機能評価項目体系の開発により、専門的な役割を有している施設の評価について的確に対応するための体制が整った。ただし、統合版評価項目で認定を受けており、かつ要件に該当する病院からの申し込みがあった場合に機能評価を行うものであるため、普及には一定程度の時間がかかると思われる。また、高度・専門的な内容の評価項目を含んでいるため、評価調査者の十分なトレーニングが必要であり、実運用に向けての課題である。さらに、病院機能評価は中立・公正な第三者が行うことが基本であるが、付加機能評価については、特定の領域について当該領域の専門家が評価活動をすることになるため、学会などの活動を通じて評価調査者と受審病院がなんらかの関係を持っている場合が大いに想定される。したがって倫理規定の遵守について、一般の訪問審査以上に厳しく求められる。
また、将来的に付加機能評価が一定程度の普及をした場合、現況調査として求めているアウトカムのデータ蓄積がすすむため、クリニカル・インディケーターなどアウトカム指標の策定に向けた基礎資料となることが期待される。
一方、2つ目の課題である情報システムについては、評価調査者による審査結果報告書案の提出書式をマイクロソフト・エクセルおよびマイクロソフト・ワードを用いて作成した。また、データベースに異常値が入力されることを防ぐために、文字種やデータ範囲などを検証するためのマクロ機能を組み込んだ。これにより、従来よりも約2倍のデータ処理が可能となった。また、原則として入出力を電子データに一元化したことにより、業務の簡略化も図られた。これらによって、今後の受審病院数増にも対応できる情報処理の体制が整備できた。ただし、評価調査者に対するコンピューター操作の教育・訓練ニーズがあることも確認された。操作マニュアルの策定・配布、操作実習などの基礎教育や不具合時のサポート体制などについて検討する必要がある。
一方、的確な評価がなされているかどうかを確認するためには専門知識を持った担当者の査読業務による検証が必要である。この部分は情報化が困難であり、受審病院の増加に対応するためには、対応できる人材の養成が必須である。
結論
付加機能項目体系の開発によって、専門的なニーズに対応するための環境を整えることができた。統合版と組み合わせて運用することで、病院の組織機能全体を評価することが可能となった。また情報システムの整備によって、統合版評価項目での受審病院数増大に対応するための整備がなされた。
課題としては、訪問審査を行う評価調査者や、評価調査者から提出される審査結果報告書の査読担当者など、専門知識や専門スキルを持った人材の確保・育成が挙げられる。これらは病院機能評価を円滑に実施するための成功要因であり、これが欠けると事業全体の隘路になる可能性がある。これらに対応するためには各種ツールの開発はもとより、手順などの標準化、判断基準の標準化およびそれらの教育が必要である。

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