医療技術評価総合研究の企画と評価に関する研究

文献情報

文献番号
200201245A
報告書区分
総括
研究課題名
医療技術評価総合研究の企画と評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
小林 秀資(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 瀬上 清貴
  • 岡本 悦司
  • 曽根 智史
  • 川南 勝彦
  • 西村 秋生
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、①医療技術評価総合研究事業全体の研究申請状況を比較検討し、それぞれの研究申請内容を整理し、確認するとともに採択された事業について分析すること、②わが国の医療技術の進展のために平成16年度から必修化する臨床研修医の指導医教育体制における医療技術評価についての研究を行うことにより、今後のわが国の医療技術評価全体の発展に寄与することを目的とした。
研究方法
国立保健医療科学院内に研究班を設置し、分担研究者をはじめとする国立保健医療科学院の研究所員並びに外部協力者によって研究を実施した。今年度の研究方法としては、第一に、臨床研修必修化までの動向確認と厚生労働省や医学教育学会、大学附属病院等院長学部長会議等の動向を確認した。第二に、フランス、イギリス、オーストラリアにおける臨床研修実施状況を調査し、わが国との国際比較を行った。第三に、医療技術評価を実施した研究者への評価研究を実施した。
結果と考察
研究の結果、わが国の臨床研修必修化の動向については、様々な意見が錯綜する中で意見統一が図られており、研究終了段階までに厚生労働省、文部科学省の方向性が示されており、来年度いっぱいをかけて様々な具体的な方策を決定していくことが明らかとなった。実際には多くの考え方が錯綜し、その意見統一が難しかったこと、必修化する場合に臨床研修医の経済保障をどうするか等の問題が未解決であり、来年度の動向に注目する必要があろう。第二に、フランス、イギリスの臨床研修はわが国同様に見直しが図られており、それらの国の動向を確認するとともに、わが国の動向をそれらの国々で参考にすることが期待された。フランスでは専門医師数を政府が算定しており、その算定数に応じて希望者のうち上位の者から希望の専門科に行くという方法がとられていた。研修は省令に基づいて行われており、国立大学医学部の研修担当委員がカリキュラムを作成する。臨床研修指導医に対する教育プログラムはない。イギリスでは、卒前教育5年でその後1年間を研修する方式であるが、アクレディテーションを受けたGPも研修機関となれる。イギリスでは卒後研修1年では不十分であるという意見があり、卒後研修を2年間とする改革を行おうとしている。しかし、評価については大学に一任されていた。オーストラリアでは、ポストグラディエイト1年目をPGY1、2年目をPGY2sとして、Junior Medical Officerとしてのプレレジストレーション教育が行われていた。また、評価方法として、臨床研修医とその指導医がマークシート記入方式による評価が行われており、これを集計してニューサウスウェルズ州政府が全体を把握していた。これらの方法は、わが国の今後の参考になるものと考える。第三に、医療技術評価研究の実施状況等に関する調査では、研究の社会へのインパクトについては、新たな学術的な発見や解明がもたらされたとする回答が9割を超えていた。研究成果の診療への反映、治療成績の向上、診療ガイドラインへの反映に対する肯定的な回答は3割から4割台であった。各分野へのインパクトの程度は、行政へのインパクトがあったとする回答割合がもっとも多く、7割を超えていた。また、研究成果は、国内および海外における原著論文や口頭発表として、多くの発表がされていることが明らかになった。
結論
結論として、第一に、平成16年のわが国の臨床研修必修化に向けての動向把握研究から、わが国の医学教育並びに卒後教育についての現状が明らかとなり、成人教育方法の必要性等を提唱することができる。成人教育理論による成人教育の必要性は、特に医学教育の中で強調されてきたことでは
あるが、この理論をいかに他の保健医療福祉分野専門職にも適用していくかが重要である。今後はより明確な保健医療福祉専門職への成人教育方法の確立が必要となるものと考える。旧公衆衛生院、国立医療・病院管理研究所ともに保健医療福祉専門職への現任教育を行ってきた実績があり、今後は成人教育方法論の現場への浸透が重要であると考える。特に今回は文献サーベイではあったが、米国のハーバード大学における教育方法やカナダのマクマスター大学における Evidence-based Clinical Practice等の教育法を検討していくことは重要であると考える。また、イギリス、フランス、オーストラリアにおける臨床研修実施状況から、ヨーロッパ諸国においても臨床研修プログラムについては、アメリカやカナダほど発展してはいないが、各国独自の臨床研修を行っており、その一部はわが国の臨床研修必修化に向けての参考になることが明らかとなった。第二に、医療技術評価総合研究事業の評価研究については、現在様々な形での研究評価が課題となっており、わが国の厚生労働科学総合研究事業に取り入れられているところではあるが、これらの評価スケールの作成に寄与することができるものと考える。

公開日・更新日

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