女性の健康寿命延長のためのホルモン補充療法活用に向けての基礎的、疫学的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201095A
報告書区分
総括
研究課題名
女性の健康寿命延長のためのホルモン補充療法活用に向けての基礎的、疫学的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
本庄 英雄(京都府立医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 矢野 栄二(帝京大学)
  • 寺本 民生(帝京大学)
  • 山岡 和枝(国立保健医療科学院)
  • 田宮菜奈子(帝京大学)
  • 芦田みどり(生活福祉研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
14,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
女性は一般に男性より長生きだが、障害や痴呆の期間は男性の数倍は長い。女性の寝たきり期間を短く、自律を目的として、健康寿命のためのホルモン補充療法(HRT)の適応と限界、それ以外の方法の活用を求め、“女性センター"研究、基礎・疫学・臨床・医療サービス・国際比較研究を初年度に引き続き継続している。
1)女性センター研究班 カウンセリングを初年度から引き続き行ない、HRTをはじめ、自律訓練法や認知療法を積極的に行い、カウンセリングの重要性が改めて認識された。また近畿近辺の産婦人科医師及び患者向けアンケートを行ない、WHI中間報告の報道による中高年女性のホルモン補充療法への意識変革を調査し、HRTに対する認識の高さや、HRTの今後のあり方が変化していくことを確認した。
2)基礎研究班 Alzheimer病におけるエストロゲンの影響、有効性を基礎的に検討しているが、エストロゲンのastrocyteを介しての細胞外Amyloid βの沈着抑制効果はAlzheimer病の発症予防や進行遅延に寄与する多因子中の一因と考えられた。神経原線維変化の成分であるリン酸化タウを定量することにより、エストロゲンがアルツハイマー病における痴呆の改善に役立つことが示唆された。植物性エストロゲン(ワァイトエストロゲン)の摂取・血中濃度調査―京都市と福島県郡山市との比較をM.K. Melby氏を中心としてワァイトエストロゲンが更年期・老年期女性の内分泌・症状にいかに影響を及ぼすかを引き続き検討している。
3)疫学斑 第2年度は、乳がんや子宮がんなどの女性特有の疾患に焦点をあて、既存の検診受診率、標準化死亡比などの市区町村別データに基づき地域集積性を中心に分析した。地域集積性の統計的検討により、日本国内での地域格差を明らかにすることができた。また、女性の自覚症状に及ぼす社会文化的要因の影響の分析を既存の意識の国際比較調査結果に基づき分析した。
4)臨床斑 女性特有の乳がん、子宮がんのがんに対する予防策としての検診の有効性・有用性について文献的な検討を行った。乳がん検診の有効性については、日本女性のマンモグラフィ検診を全面的に正当化することはできない。視触診単独法と超音波による検査は、有効性を判断できる根拠がいまだ出されていない。子宮がん検診についてはこれまでRCTによる検討は行なわれていないが、わが国を含む先進国の数多くの症例対照研究により、検診受診による浸潤がん発生率の明らかな減少が示されている。子宮体がん検診の死亡率減少効果について論じた報告は国内外を問わず見当たらず、子宮体がん検診については、方法や効果、検診対象者の範囲などをさらに検討する必要がある。女性検診においては、体格やホルモン代謝など人種的な差異からも欧米での評価をそのまま適用するのは慎重を要し、日本女性を対象としたわが国独自のデータの蓄積と大規模調査研究の進展が待たれる。
女性では高血圧,糖尿病,喫煙といった危険因子がより強く作用する可能性が考えられた。また薬剤治療に伴う血清脂質変化でも、女性は男性と異なる反応をする面があることも判明した。
5) 医療サービス研究班 就労者と介護者としての2つのライフステージにおけるストレス程度および各々の関連要因の男女比較を行った。介護ストレスの程度は女性のほうが高く、主観的職業性ストレスの程度には男女差はなかったが、心理的ストレスは男性が高く、身体的ストレスは女性が多く訴えていた。介護ストレスでは主に女性がより重症な者を介護していることが要因と考えられ、また、同じ要介護度のものを介護していても女性の負担が高くなっている可能性もあった。職業性ストレスでは、ソーシャルサポートが果たしている役割が女性において大きく、ストレスの身体化・心理化に男女差があることが考えられた。ライフステージにおける各種ストレスとそのマネージメントについて、ジェンダーの視点は重要であることが示唆された。また、女性においては、職業性ストレスと介護ストレスが並存する場合も多くあり、相互の関連性を含め、今後の課題である。
6)国際比較研究班 2002年4月セミナーを開催し、内外の高齢者の性差と生活環境がもたらす健康への影響について分析し、初年度に引き続き海外調査、インタビューを行い、著作「女性保健医療システムの国際比較研究に関する研究 ジェンダー医学 <高齢化=女性化>時代に向けて」を著した。


研究方法
結果と考察
結論

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-