地域における地方衛生研究所の健康危機管理のあり方

文献情報

文献番号
200201090A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における地方衛生研究所の健康危機管理のあり方
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 一夫(福島県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 江部高廣(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 上木隆人(東京都衛生研究所)
  • 宮崎豊(愛知県衛生研究所)
  • 杉田隆博(大阪市立環境科学研究所)
  • 大道正義(千葉市環境保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
24,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては、健康危機事例に適切に対応するために、従来の研究結果をふまえた研究を行い地方衛生研究所(以下地研と略)が目指すべき地域における体制の方向を整理し、本来保持すべき基本機能の強化・充実による危機対応能を高めることとその実践をもって地研の健康危機管理対応機能が十分発揮できる状況の形成を図ることを目的とした。そのために、平成13 年度より3 ヶ年計画で以下の5つの研究課題に取り組んだ。それは、①健康危機管理事例のデータベース化とその利用に関する研究、②健康危機管理関連の情報ネットワークの構築に関する研究、③健康危機管理のための試験検査の開発と標準化に関する研究、④健康危機管理のための試験検査技術の充実・普及に関する研究及び⑤健康危機管理のための地域での連携体制の構築に関する研究である。これは、地域における健康危機管理の実践上での問題点を明らかとし、その現存の障害克服を企図したものであり、得られた成果を検証することと全国規模での机上訓練を行うことによって、全国のどの地域で健康危機管理事例が発生しても、全ての地域で正しい初動体制が取れることを到達目標とした。
研究方法
5分担研究者を中心に全国6支部から推薦された研究班員で構成する研究班において、地研協議会全会員(76研究所)が参加・連携して、①健康危機管理事例集の内容充実とその利用に関する研究(事例データベースの作成、利用と管理方法の確立)、②健康危機管理関連の情報ネットワークの構築に関する研究(地研ドメインネームの活用とポータルサイトとしてのホームページと検索システムの構築、各種情報の電子情報化とデータベース作成)、③健康危機管理事例に関連する試験検査の開発標準化に関する研究(緊急的に必要とされる可能性のある検査法情報の収集、検査法の標準化、精度管理の充実)、④健康危機管理のための試験検査技術の充実普及に関する研究(検査技術の遠隔研修方法の確立、研修支援システムの構築)、⑤地域での連携体制の構築に関する研究(分野毎の連携の検討を含めた地域ごとの連携協力の具体化、連携システムモデルの検討、地研・国研の連携協力体制の構築)を行った。
結果と考察
平成14年には、①でこれまでの健康危機管理事例集の詳細版を含む内容の充実を図りその管理・利用システムを確立し、危機管理における衛生研究所版チェックリストを作成し、検証した。更に健康危機事例の早期探知と早期原因究明のための食品苦情対応システムと健康危機原因絞り込みソフトの開発を行った。②でホームページを中心とした地研情報ネットワークの構築を行い、メーリングリストの作成・運営を行い、各種データベースとのリンク準備が整った。③で近年整備が進み、健康危機管理で多用が想定される定量PCR装置を利用した検査法の開発とその標準化を行い、バイオテロモデル菌を用いた同装置での病原体検出能を検証した。④でリファレンス情報データベース作成し、検査技術(エンテロウイルスの迅速同定のための一本鎖高次構造多型解析及びエンテロ71の遺伝子塩基配列の決定による血清型分別)の開発と支援システムの構築・普及を行い、⑤で健康危機事例発生時における時系列対応プログラムを開発し、13事例研究を通して健康危機発生時の迅速対応と連携体制の構築に向けた、地域における地研の役割の再検討行い、平常時の地域内連携体制の試行的構築を行った。これらにより、健康危機管理事例発生時における地研の対応として必要な、そして基本的資本である地研情報ネットワークの構築
の基盤整備がほぼ完成し、地研間の情報交換及び情報共有化が推進された。加えて各種データベースが整備されつつあり、これも情報ネットワーク上での運用準備が整いつつあり、次年度に計画している全国規模での机上訓練が可能となり、当初目的としていた全国どの地域で発生した健康危機管理事例への正しい初動体制が行えることがほぼ確実になったものと考える。
結論
健康危機事例発生時における備えるべき体制には、大きく分けると①事例の探知能力②発生事例の原因究明能力③被害対処及び拡大防止能力が挙げられる。この中で地研が担うべき部分は、迅速かつ正確な発生事例の原因究明であると考えられる。これを可能とするため、地研が備えるべき4本柱の機能(調査研究機能、試験検査機能、研修機能及び公衆衛生情報収集・解析・提供機能)を強化し、それを有効に活用する体制を構築する必要がある。本研究では、地方衛生研究所全国協議会全会員(76地研)が参加・連携し、5分担研究を通して、健康危機管理事例発生時の対応として必要な地研情報ネットワークの構築、各種対応マニュアル、各種データベース、検査法の開発・精度管理・普及を行った。現在検証中の部分も一部存在するが、当初目的としていた全国どの地域で発生した健康危機管理事例への地研としての正しい初動体制が行えることがほぼ確実になった。

公開日・更新日

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更新日
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