熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200968A
報告書区分
総括
研究課題名
熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 赤峰昭文(九州大学大学院歯学研究院歯内疾患制御学分野)
  • 飯田隆雄(福岡県保健環境研究所保健科学部)
  • 飯田三雄(九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野)
  • 石橋達朗(九州大学大学院医学研究院眼科学分野)
  • 石丸忠之(長崎大学医学部産婦人科)
  • 片岡恭一郎(福岡県保健環境研究所管理部情報管理課)
  • 片山一朗(長崎大学医学部皮膚科)
  • 金子 聰(国立がんセンター研究所がん情報研究部)
  • 岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野)
  • 古賀信幸(中村学園大学栄養科学部)
  • 辻 博(北九州津屋崎病院内科)
  • 徳永章二(九州大学大学院医学研究院予防医学分野)
  • 中西洋一(九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設)
  • 中山樹一郎(福岡大学医学部皮膚科学)
  • 長山淳哉(九州大学医学部保健学科)
  • 古谷博和(九州大学大学院医学研究院神経内科学分野)
  • 増田義人(第一薬科大学物理分析学)
  • 山口直人(東京女子医科大学衛生学公衆衛生学第二教室)
  • 山田英之(九州大学大学院薬学研究院分子衛生薬学分野)
  • 吉村健清(産業医科大学産業生態科学研究所臨床疫学)
  • 吉村俊朗(長崎大学医学部保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
86,870,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
油症事件発生から35年を迎えようとしている。多くの患者では油症の症状は徐々に軽快しつつあるものの、依然として、症状が残存している患者もいる。一方で、患者も高齢化し、症状が悪化した場合や、もしくは新たな症状が生じた場合は、それが油症と関連のある症状なのか、それとも高齢化に伴うものなのか判別が困難な状況になりつつある。この段階で再度、患者の症状、検査値など様々なデータを検討することによって、現在の油症患者の状態を的確に把握する必要がある。油症の原因は、油中に含まれるPCBであることは以前から知られており、その後PCDF等のダイオキシン類も混入していたことが明らかになり、現在ではPCBとPCDFの混合中毒であることはよく知られている。患者体内にあるPCBの濃度は比較的早期に定量できたが、PCDF等のダイオキシン類は体内に存在することは証明できても、微量であるために、定量することは困難な状況であった。しかし、測定技術の進歩により、昨年度の福岡県検診より測定が可能となり、今年度は全国で測定が可能となった。患者の症状、診察所見、検査値などと血中ダイオキシン類濃度の相関を検討し、PCDF等のダイオキシン類やPCBが油症の症状形成にどのように寄与したのか検討する必要がある。さらに、それをもとに、油症診断基準を検討し、再評価する必要がある。また、最近は年々検診受診患者が減少し、患者の全体像を的確に把握するのは困難な状況であった。最近検診を受診していない患者の状況を把握し、整理することが望まれている。PCDF等のダイオキシン類やPCBが、曝露後長期経過した場合にどのような影響を人体にもたらすかは明確になっておらず、少なからず健康に不安を持つ患者は多い。そのような悩みを理解したうえで、的確な健康管理の指導が必要である。以上のことをふまえながら、現在の患者像を把握し、それに基づいて健康を増進することが求められている。
研究方法
Ⅰ.班長が担当する研究
1. 班の総括と平成14年度の研究班会議開催
2. 油症検診の実施(各都道府県に委託)と検診結果の全国集計(福岡県保健環境研究所 片岡恭一郎専門研究員に委託)。
3. 油症診断基準の再評価 「油症診断基準再評価委員会」を開催し、PCDF類を含むダイオキシン類と、患者の所見、症状、検査値との相関を検討する。その知見をもとに、現在の油症診断基準の再評価を行う。
4. 油症パンフレットの改訂、ホームページの改訂。 昨年度作成されたパンフレットに、昨今の知見を新たに加え、改訂を行う。
5. 油症相談員の派遣 現在もなお症状に悩む患者や、原因物質の影響を心配する患者の健康相談や、健康管理指導を行う。また、最近検診を受診していない患者の健康状態を調査する。
6. 全国班診定委員会の開催 昨今の油症に対する社会的関心の高まりを反映し、認定をうけていない検診受診希望者が増加している。原因の油を摂取した可能性を持つ希望者に対し検診を行い、得られた所見、検査値等を総合的に評価し、診定を行う。
7. 検診項目の見直し 患者の症状の変遷にあわせて検診科目も変化させる必要がある。また、神経科、内分泌科、等の専門的、かつ医学的にも質の高い検診も望まれている。今年度から長崎県と福岡県で婦人科問診を開始する。
Ⅱ.九州大学油症治療研究班と長崎油症研究班が行う調査、治療および研究
1. 検診を実施し、油症患者の皮膚科、眼科、内科、歯科症状について詳細な診察を行い、従来の症状との比較を行うとともにデータを統計学的に解析し、経年変化の有無や変化の傾向につき調査する。また、婦人科については本年度より問診を開始した。これについても解析を行う。
2. 油症患者血液検査(総コレステロール、中性脂肪、アルドラーゼ、CK、NK細胞活性、甲状腺ホルモンなど)、尿検査、神経学的検査から健康影響を調査する。
3. 油症患者体内に残存するPCBs、PCQやPCDFを含めたダイオキシン類を把握するために、血中濃度分析を行う。
4. 油症原因物質などの体外排泄促進に関する研究を行う。
5. 油症発症機構に関する基礎的研究として、PCBsが気道上皮に与える影響、コプラナーPCBが細胞接着因子に与える影響、を検討する。TCDDの生殖毒性を検討するために、Aromatase欠損マウスをモデルとしてTCDDの抗エストロゲン作用を解析する。PCBがその主要な代謝物であるメチルスルフォン体に変化する際の酸化活性について、動物種による変化を検討する。
結果と考察
1. 油症患者検診結果
平成14年度の検診受診患者は300名であり、昨年度の236名と比較すると大幅に増加した。昨年度から福岡県で開始された血中ダイオキシン類濃度検査が、今年度より全国でも行われるようになったことが大きな要因として考えられるが、その他にも昨今の社会的関心の高まりも要因として考えられる。ちなみに今年度の未認定検診受診者は93名であった。
データベースの構築に伴い、検診時にデータベースを用いることが可能になった。患者を診察しながら過去の検診所見、検査値を直ちに参照することができ、よりきめ細やかな患者指導ができるようになった。
福岡県における油症一斉検診時に歯科を受診した油症認定患者を対象に歯周炎ならびに口腔内色素沈着の罹患率を調べた結果、いずれも健常者に対して高い割合を示した。口腔内色素沈着の発現率は高齢者よりも若年者に高かった。眼科では自覚症状として眼脂過多を訴えるものが多かったが、その程度は軽く、油症の影響とは考えにくかった。他覚所見としては、慢性期の油症患者において診断価値が高いとされる、眼瞼結膜色素沈着や、眼瞼腺チーズ様分泌はほとんど観察できず、臨床所見は徐々に軽くなってきてはいるが、今後とも慎重な経過観察が必要である。皮膚科では、年々症状が軽快する傾向にあったが、今年度は母集団の変化の影響に伴い、傾向が著しく変化した。今後数年の動向を観察する必要が示唆された。また、未だに油症特有の皮膚病変を呈し、それによりQOLが著しく損ねられている患者も少なからずおり、今後とも注意深い経過観察が示唆された。生殖機能への影響を検討するため、今年度より婦人科問診を福岡県、長崎県で開始した。それぞれ58名、60名の合計118名が受診した。調査項目それぞれにつき、油症患者における頻度と、文献的に報告されている頻度を比較したが、油症患者に特有の所見は抽出されなかった。しかし、受診患者数が少ないこと、記憶が不明確なこともあり、結論を導くためには今後しばらく継続する必要性が示唆された。
2. 油症相談員の派遣
今もなお症状に悩む患者の健康相談や、昨今のダイオキシン類に関する社会的関心の高まりとともに、原因物質に対する不安を抱える患者の相談を目的に今年度より油症相談員制度を設けた。福岡県と長崎県の、看護師資格、もしくは準看護師資格を持つものそれぞれ2名に依頼した。健康相談を行いながら、それに加えて、最近検診を受診していない患者の健康状態の調査も行った。今年度いっぱいで長崎県、福岡県は一通り終了する予定である。来年度は長崎県、福岡県以外の最近検診を受診していない患者に対しても調査を行う予定である。
3. 油症診断基準再評価委員会の開催
患者が摂取した原因の油にはPCDFも含まれ、現在ではPCBとPCDFの混合中毒であることは広く認められている。実際、患者血液、組織よりPCDFが検出されている。PCBは比較的早期に定量化され、濃度と検査値、診察所見などの相関が検討され、油症診断基準にも取り入れられている。その一方で、PCDFは体内に微量にしか存在しないため、多量の血液が必要であり、定量化は困難であった。しかしながら、検診班内での技術改良により、少ない血液量で再現性のある測定が可能となった。それを受けて昨年度より福岡県の検診からPCDFを含めた血中ダイオキシン類検査を開始した。結果は患者各人に手紙を出し、通知した。血中ダイオキシン類濃度と検査値、検査所見との相関を「油症診断基準再評価委員会」で検討した。相関が示唆された項目もあったが、最終的な結論を導くためには、今後数年間の繰り返しの検討が必要である。また、「油症診断基準再評価委員会」で検討したことについては、検査受診患者に対し手紙を出し、通知した。
4. 油症パンフレットの改訂
患者の健康管理の確立を目的として平成13年7月にパンフレット初版が作成された。その初版に対する患者からの意見をもとに改訂を行った。PCB/ダイオキシン類/ダイオキシン類似化合物についての昨今の知見を加えた。この改訂に伴い、ホームページも更新した。
5. 全国班診定会議の開催
最近では診定対象者は年々減少し、福岡県班、長崎県班、広島県班以外の追跡班でその対象となるものはほとんどいなかった。今年度は未認定の検診受診者が大幅に増加した結果、福岡県班、長崎県班、広島県班以外で診定対象者は15名、福岡県班でも診定対象者は24名(昨年度は3名)であり、大幅に増加した。
6.油症患者血液、尿検査、神経学的検査、および腹部超音波検査からの健康影響調査
油症患者の甲状腺機能検査を行い、油症原因物質の甲状腺機能に対する慢性的影響について検討した。血中PCB濃度とT3値、T4値およびTSH値の間に相関は認められず、血中PCB低濃度群と高濃度群の間の、異常出現率には差が認められなかった。原因物質による酸化ストレスの影響を評価するために油症患者と正常健常人の尿を用いて酸化ストレスの指標である8-Isoprostane濃度をEIA法で測定した。対照群と比較すると油症患者尿中8-Isoprostane濃度は有意に高く、油症患者が慢性の酸化ストレスにさらされていることが示唆された。油症患者中の約15%に血清CKの上昇が認められ、約32%に血清アルドラーゼの低下が認められる。筋力低下や筋痛などの臨床症状はないものの、動物実験からは筋壊死の可能性も示唆され、今度とも検討を続ける必要性が示された。原因物質の免疫系への影響を評価するために油症患者と正常健常人のNatural killer細胞活性を測定した。患者群と健常人群との間に有意差は認められなかった。1986年から2000年までの15年間に検診を受診した患者について啓示的に繰り返し測定された血清脂質濃度データを統計学的に(Generalized Estimating Equation)解析した。総コレステロールと中性脂肪の血清濃度は男女ともに血中PCBレベルと統計学的に有意な正の関連がみられた。女性では血中PCBレベルと血清HDLコレステロール濃度の間に統計学的に有意な負の関連がみられたが、男性では両者に統計学的に有意な関連はみられなかった。油症患者に合併する末梢神経障害の疫学的検討を行った。対照群のデータベースを作成し、患者群との比較検討を行った。油症患者ではニューロパチーの頻度が高い可能性が示唆された。身体所見、臨床検査値、腹部超音波検査所見より、脂質代謝異常と肥満、脂肪肝の関連を検討した。腹部超音波検査では、bright liver群では、そうでない群と比較するとBMI,中性脂肪、βリポ蛋白、コリンエステラーゼ、尿酸が有意に高かったが、総コレステロール、HDLコレステロールに有意差は認められなかった。
7.健康調査の疫学的解析、内分泌攪乱物質の文献検索
油症認定患者の追跡調査については、倫理的問題の解決に時間がかかり、追跡調査実施の具体的計画が作成できない状況にある。この問題についていかに対処するかを検討した。また、台湾における油症調査の現状について調査し、日本の現状と比較した。内分泌攪乱物質と停留精巣に関する疫学研究の現状について、文献的考察を行った。有機塩素系化合物などの内分泌攪乱物質と停留精巣に関する研究は極めて乏しく、今後、信頼性の高い研究デザインを用いた研究の必要性が示唆された。
8.油症患者体内のPCBおよびダイオキシン類の分析と測定
油症患者の血液の総PCB濃度およびパターン判定について従来法であるパックドカラム-電子捕獲型検出器(付きガスクロマトグラフ(GC)とキャピラリーカラム-GC/高分解能質量分析計(HRGC/HRMS)による異性体別分析法との同等性について検証した。この背景として、PCBには209の異性体があり、その毒性は各々によって異なり、異性体別の分析が一般的になりつつあるためである。パターン判定では高い一致率で同等性が認められ、毒性評価が正確にできる異性体別分析法への以降が可能であることが示された。油症患者および一般福岡住民の血液中PCBの分析を行った。油症患者の血液中にはPCB#118,#138は一般人と同程度の濃度であったが、PCB#153, #156, #180, #179およびDDEは一般人の4~17倍の高濃度で残留していた。
9.油症患者血中ダイオキシン類濃度と検査値、所見との相関
平成13年度の福岡県で血液中ダイオキシン類濃度検査を受けた78名と平成8年に福岡県で行われた一般住民52名とのダイオキシン類測定値を比較した。さらに油症患者78名の内部比較によりPCDF値と臨床データの関連に関しても検討した。一般住民との比較では、ある種のダイオキシン類が油症患者に高値を示すことが明らかになった。その代表として、PCDFを選び、PCDFとこれまで油症の診断に用いられるPCBパターンと、CB%比で予測すると感度、特異度ともに76%~80%の精度であった。また、PCDFと臨床症状との関連については最近の粉瘤の再発傾向、ビリルビン・LDH・HDLの低値傾向、コリンエステラーゼ・中性脂肪・βリポタンパク高値傾向がPCDF高値群に認められた。PCDF値と臨床症状との関連については不安定な結果も多く、今後さらに解析対象者を増やし、検討を行う必要がある。
10.油症原因物質等の体外排泄促進に関する研究
動物実験では、食物繊維と葉緑素にダイオキシン類の体外排泄促進作用が示されている。そこで、食物繊維と葉緑素を多量に含む栄養補助食品である玄米発酵食品ハイ・ゲンキ葉緑素入り(FBRA)がダイオキシン類の体外排泄促進作用があるか9組の夫婦の協力により検討した。摂取群と非摂取群を比較すると、2年間の摂取により、油症の主要な原因物質である2,3,4,7,8-PeCDFの体外排泄が約2.2倍高まることが認められ、患者の健康障害改善に有効と考えられた。
11.油症発症機構に関する基礎的検討
1)PCBsによる細胞死に関する研究
PCBsが気道上皮に与える影響について分子生物学的に検討した。PCBs曝露により、リンパ球、肺癌細胞株、気道上皮細胞(BEAS-2B)は細胞死をきたした。PCBs曝露により小胞体ストレスが惹起されている可能性が示唆された。
2)コプラナーPCBによる細胞接着因子への影響-lamininと___integrinの量的変化とその臓器特異性-
細胞接着因子で、lamininの細胞表面上の受容体の一つであるintegrinについて、PCB126による影響を検討した。雄性ラットとヒト肝臓癌細胞HepG2 cellを用いた。雄性ラットにPCB126を腹腔内に単回投与した結果、肝laminin-1が数カ所の部位で切断されることが示唆された。また、肝臓、胸腺および肺において、臓器特異的な___integrinの発現量の減少が観察された。HepG2 cellではPCB126により___integrinの発現量が変動することが示唆された。PCB126は、細胞の接着能やintegrinの細胞内へのシグナル伝達に影響を与える可能性が示唆された。
3)Aromatase欠損マウスでの生殖毒性を指標としたTCDDの抗エストロゲン作用の解析
ダイオキシン類の生殖毒性の機構を解析するための一環として、Aromataseノックアウト(ArKO)マウスを用いて、2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)による抗エストロゲン作用について検討した。その結果ArKO雄マウスにおける性行動不全についてはエストラジオール依存的な一定の回復が起こり、これはTCDDによって阻害されなかった。一方で、ArKO雌マウスにおける子宮萎縮は、エストラジオール処置により回復したが、TCDDの前処理により回復が阻害されることが明らかになった。さらにTCDD処置をした野生型マウスの子宮は萎縮傾向にあることが認められた。これらのことより、性別による程度の差は認められるものの、TCDDがエストラジオールの作用に拮抗することが示唆された。
4)4-メチルチオ-2,5,2',4',5', -五塩素化ビフェニル(CB101)の肝におけるS-酸化反応の動物種差に関する研究
PCBの主要な代謝物であるメチルスルフォン体の毒作用について検討した。4-MeS-2,5,2',4',5'-五塩素化ビフェニル(CB101)からメチルスルフォン体に変化する際の酸化活性につき、ラット、ハムスター、およびモルモット肝ミクロゾームを用いて比較した。性差についても検討した。4-MeS-CB70の場合と同様に、モルモット、ハムスター、ラットの順で高い活性を示した。フェノバルビタールで顕著に増加した。性差に関してはモルモット、ハムスターでは全く認められなかったが、ラットにおいては雄が雌の5倍高い活性を示した。これらのことより4-MeSO2体の生成にはフェノバルビタール誘導性P450が関与していることが示唆され、さらにラットではフェノバルビタール誘導性P450に加え、CYP2C11が関与していることが示唆された。
結論
引き続き、油症患者検診を通して患者の状態を抽出し、原因物質との相関を検討した。昨年度より血中ダイオキシン類の測定が始まり、今年度はその結果と様々な検査値、検診所見との相関を検討した。この検討は今後何年間か繰り返し行う必要がある。
年々減少する検診受診者数が今年度は大幅に増加し、また、未認定の検診受診者数も大幅に増加した。油症に対する社会的関心の高まりを反映したものと考えられるが、同時に研究班としての社会的役割、責任も高まりつつある。このことを十分理解した上で、検診や検査データの解析、基礎的研究を通して、患者の健康障害の改善、健康管理の確立をすすめる必要がある。
また、今後台湾油症との情報交換を行い、相補的に知識を高めることで、より患者に利益をもたらすようつとめる必要もある。

公開日・更新日

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