容器包装詰低酸性食品のボツリヌス食中毒に対するリスク評価(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200924A
報告書区分
総括
研究課題名
容器包装詰低酸性食品のボツリヌス食中毒に対するリスク評価(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
小熊 惠二(岡山大学大学院医歯学総合研究科 病原細菌学)
研究分担者(所属機関)
  • 牧野 壮一(帯広畜産大学畜案学部家畜微生物学講座)
  • 小崎 俊司(大阪府立大学大学院農学生命科学研究科)
  • 春日 文子(国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部)
  • 武士甲 一(北海道立衛生研究所食品科学部)
  • 田村 正秀(北海道立衛生研究所)
  • 甲斐 明美(東京都立衛生研究所微生物部細菌第一研究科)
  • 林 賢一(滋賀県立衛生環境センター微生物科)
  • 堀川 和美(福岡県保健環境研究所保健科学部病理細菌科)
  • 浅尾 努(大阪府立公衆衛生研究所感染症部細菌課)
  • 石村 勝之(広島市衛生研究所生物科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の食品嗜好の多様化、生活様式の変遷、原材料を含む食品の輸入の拡大などにより、多種・多様の製品が製造・販売されている。その中には、製造技術や容器包装技術の進歩により、常温で長期間保存が可能な食品が増加しているが、気密性を有する容器包装詰形態で、その pH が 4.6 を超え、かつ、水分活性(Aw)が 0.94 を超える、ボツリヌス菌の増殖が可能な食品が多数含まれている。
平成11年には千葉県内でボツリヌス中毒が発生し、その原因食品として気密性を有する容器包装詰めの要冷蔵品が疑われたため、厚生労働省は、関連する当該要冷蔵食品の衛生管理を徹底を通知した(衛食第120号)。このような状況から、市販されている各種の容器包装詰低酸性食品についてボツリヌス食中毒に対するリスク評価を行うことは,我が国の食品衛生の確保、向上の観点から極めて重要な課題となっている。
今回は、容器包装詰食品の製造法として、容器包装内をガス置換後、加熱処理を行い製造された食品を対象に、1)これらの食品の一般細菌やボツリヌス菌あるいはクロストリジウム属の菌による汚染状況と、2)これらの食品中に接種されたボツリヌス菌芽胞が発芽・増殖するかを検討することにより、そのリスクを調査した。
研究方法
市販の26品目を購入し、そのpHとAwおよび熱伝達性を測定した。次いで各品目の細菌による汚染度を調べると伴に、ボツリヌス菌芽胞の添加実験を行い、ボツリヌス菌芽胞が発芽・増殖し、毒素を産生するかを検討した。
結果と考察
26品目全てにおいてそのpHとAwはボツリヌス菌が増殖可能なものであった。2品目(牛舌薫製と馬刺薫製)では、一般細菌(B. cereusやB. subtilisを含む)による汚染が認められた。さらに馬刺薫製の一部のものは、ボツリヌスA型、B型菌に汚染されていた。また、帆立時雨煮の1検体は、ボツリヌスB型菌により汚染されていた。牛舌薫製と馬刺薫製は同一の業者により製造されていたので、その業者を訪問したところ、製造過程での加熱処理が不充分であることが判明した。同製品をさらに追加試験したところ、ボツリヌス菌は分離されなかったが、高率に一般細菌により汚染されていた。ボツリヌス添加実験では、ほとんど全ての品目で菌が増殖し、毒素が産生された。従って、これらの商品はボツリヌス菌が増殖可能なものであることが判明した。
結論
今回調査した26品目は、ボツリヌス菌が増殖可能なものであった。既に一部の商品は一般細菌やボツリヌス菌により汚染されており、非常に危険性の高いものであることが判明した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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