痴呆性高齢者にふさわしい生活環境に関する研究

文献情報

文献番号
200200561A
報告書区分
総括
研究課題名
痴呆性高齢者にふさわしい生活環境に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 桂子(日本社会事業大学社会福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 足立啓(和歌山大学)
  • 児玉昌久(早稲田大学)
  • 舟橋國男(大阪大学大学院)
  • 松永公隆(長崎純心大学)
  • 後藤隆(日本社会事業大学)
  • 下垣光(日本社会事業大学)
  • 石川弥栄子(高齢者住宅財団)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 効果的医療技術の確立推進臨床研究(痴呆・骨折分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
26,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ゴールドプラン21において、痴呆性高齢者支援対策の推進は重点課題と位置づけられている。北欧等での実践から、痴呆性高齢者に適した環境は、痴呆症状の緩和や介護負担の軽減をもたらすことが認識されつつある。しかしわが国では、車いすなど移動障害への環境整備は取り組まれているが、痴呆性高齢者の在宅生活継続を容易にする住環境整備マニュアルや、施設環境適応を円滑にする施設環境整備マニュアルなど体系的な住環境整備プログラムはたいへん遅れている。3年間の本研究から以下の成果が期待できる。①痴呆性高齢者と介護者を取り巻く在宅・施設の生活環境全体を対象とした本研究は、痴呆性高齢者の在宅継続と介護負担の軽減に寄与し、痴呆性高齢者と家族の地域での生活継続を容易にする。②ユニットケア施設の環境整備に関する研究結果は、緊急整備課題であるグループホームやユニットケア施設の充実に寄与する。③痴呆ケアにおいて環境支援は不可欠であり、本研究成果は介護職員の痴呆ケア研修プログラムに有用であり、痴呆ケアの質的向上に貢献する。④環境整備によりマンパワーによる介護サービスの軽減が期待でき、介護費用の抑制が期待できる。以上のように、本研究はゴールドプラン21の重点課題である痴呆性高齢者支援対策に多大な寄与を目的とした研究である。
研究方法
研究の方法と結果=痴呆性高齢者と介護者を取り巻く生活環境(住宅、施設)について、痴呆症状の緩和や生活の安定、高齢者の自立、介護負担の軽減を図るための環境整備方法およびそれらを明らかにする研究手法について以下の成果を得た。3年目には住宅、ケアユニット等の環境整備指針やその普及のための教育・研修プログラムの開発及び普及活動を行う。①痴呆性高齢者の類型化を図り、それぞれに対応した在宅環境整備の次元と詳細な内容を明確化した。②昨年度作成した「家族介護者向け在宅環境整備ハンドブック」の評価を実施して、高い評価が得ら れるとともに、次年度の「専門家向けハンドブック」に取り入れるべき項目等が明確化した。③住み込み型と通勤型を比較し、シルバーハウジングにおける痴呆性高齢者への支援方法を検討した。④ユニットケア施設の機能を発揮するためには、建築計画と職員配置の対応が重要なことを実証した。⑤「痴呆性高齢者への環境支援のための指針」を用いて、既存特別養護老人ホームの環境改善の介入研究を行い、本年度はキャプション評価法による施設環境評価を実施し、環境改善の課題を明確化した。⑥研究成果に基づき、ケアユニットの、照明、家具、材質、音響、リネン等総合的インテリアモデルプランの作成を行い、平成16年開設施設における実施に向けた検討をした。⑦「痴呆性高齢者のための治療的環境評価尺度(TESS-NH日本版)」を作成して、特別養護老人ホームに適用し、わが国における有効性と課題の検討を行った。⑧グループホームに居住する痴呆性高齢者の唾液中の免疫抗体分析を行い、日常の出来事と介護者のストレスが痴呆性高齢者の唾液中の免疫抗体に及ぼす影響を世界で初めて実証した。
結果と考察
結論
本研究の成果は、すでに具体的に以下の成果を生んでいる①在宅環境の関する調査結果は、ガイドブック「痴呆のための住まいの工夫」として、自治体等を通じ全国の在宅ケア現場に10万部配布され、普及に寄与している。②「痴呆性高齢者への環境支援のための指針」を用いた施設環境改善の研究は、第3回日本痴呆ケア学会において優
秀論文賞を受賞した。都内の施設で施設環境改善の取り組みが進み、それに続く施設も出てくるなど大きな影響を与えている。③ユニットケア施設の環境整備に関する研究結果は、緊急整備課題であるグループホームやユニットケア施設の充実に寄与している。④これら研究成果は、高齢者痴呆介護研究研修センター等の研修に取り入れられ、痴呆ケアの向上に寄与している。 中・長期的成果として、⑤環境整備によりマンパワーによる介護サービスの軽減が期待でき、介護費用の抑制が可能である。⑥本研究では痴呆性高齢者の生活と環境の質に関わる、各種尺度の開発に取り組み、それらは今後の痴呆研究の推進に寄与する。以上のように、本研究はゴールドプラン21の重点課題である痴呆性高齢者支援対策と高齢者の自立に多大な寄与が期待できる。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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