地域における「健やか親子21」の推進に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200399A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における「健やか親子21」の推進に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
藤内 修二(大分県日田玖珠保健所)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 米厚(鳥取大学社会医学講座環境予防医学分野)
  • 福永 一郎(香川医科大学衛生・公衆衛生学)
  • 岩室 紳也(神奈川県厚木保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成9年度の母子保健法改正を前に全国の市町村で策定された母子保健計画がどう機能したのかを検証するとともに,その機能に影響を及ぼした要因を明らかにすることにより「健やか親子21」推進に資する知見を提供する。 
研究方法
1.母子保健計画の策定から推進までのリンケージ分析
平成9,10,13年度に収集された下記の3つのデータを市町村コードでリンクさせ,市町村母子保健計画の策定プロセス,記載内容,計画書の活用,策定後の変化,進行管理,「健やか親子21」への取り組み状況との関連について分析を行った。
①全国2,873自治体の母子保健計画の記載内容(平成9年度)
②全国2,362自治体の母子保健計画の策定プロセスと母子保健事業の変化(平成10年度)
③全2,159自治体の母子保健計画の進行管理と「健やか親子21」への取り組み(平成13年度)
2.県型保健所の健やか親子21の推進に果たす役割に関する分析
上記のリンケージ分析から県型保健所の関わりに焦点を当てて分析し,地域における「健やか親子21」の推進における県型保健所の役割について検討した。
3.母子保健計画の評価プロセスに関する分析
保健計画の見直しに直結する評価プロセスについては,優れた事例を分析することにより,そのポイントを明らかにした。
4.思春期保健への取り組みの分析
「健やか親子21」の4課題の一つである思春期保健の取り組みについて,全国の先進的な8事例を分析し,普遍化に向けて,その展開プロセスについて検討した
結果と考察
1.母子保健計画の策定から推進までのリンケージ分析
2,702自治体について,複数年度のデータが得られ,以下のような分析結果が得られた。
①策定組織の設置,策定組織への庁内他部局や関係機関,住民組織,親代表の参画,住民や関係機関へのヒアリングやアンケートは,母子保健事業の改善や「健やか親子21」関連事業の実施と有意な関連を認めた。
②目標と事業の関連図やアウトカム数値目標の記載は母子保健事業の変化と有意な関連を認めたが,事業量の目標値の記載は事業の変化と関連を認めなかった。
③年次計画の記載は進行管理と有意な関連を認めたが,進行管理や評価についての記載は実際の進行管理とは関連を認めなかった。
④新規事業の開始など母子保健計画策定後に事業の変化があった自治体でも,健診結果の年次推移を見るなど,ルーチンワークでの評価を行っている自治体は少なかった。
⑤策定委員会や作業部会に庁内他部局や関係機関,住民組織,母親代表が参画した自治体では,連携が促進され,住民のエンパワメントの指標とした事象が多く認められた。
⑥策定への保健所の支援は計画策定への関係機関や住民の参画,住民ニーズの把握,策定後の住民への周知と有意な関連を認めた。
⑦保健所職員の策定組織メンバーとしての参画やニーズ分析への支援は,目標と事業の関連図,評価や進行管理についての記載と有意な関連を認めた。
⑧策定への保健所の支援は庁内他部局や関係機関との連携を促進し,市町村母子保健事業の評価への保健所の関わりと有意な関連を認めたが,市町村母子保健事業の企画や実施への保健所の関わりとは関連を認めなかった。
⑨策定への保健所の支援は,進行管理組織の設置と有意な関連を認めたが,母子保健事業の評価や,健診結果や問診内容の集計結果の年次推移を見るなど,ルーチンワークでの進行管理とは関連を認めなかった。
2.県型保健所の健やか親子21の推進に果たす役割に関する分析
計画策定における関係資料の提供や策定委員としての参画,計画策定に関する研修会の開催,首長や幹部職員への説明,策定組織の運営への支援,ニーズ分析への支援といった県型保健所の支援は,いずれも有効であったが,首長や幹部職員への説明,策定組織の運営への支援,ニーズ分析への支援は提供可能な保健所が4割と少なかった。また,策定後の進行管理,特に,乳幼児健康診査等で得られる情報に基づく評価への支援が,必要と考えられた。
3.母子保健計画の評価プロセスに関する分析
保健計画の評価が効果的に行われるためには,評価指標が明確になっていること,そのための情報収集を毎年行い,進行管理のための会議を年に複数回開催することが重要と考えられた。評価指標を明確にするためには母親などからヒアリングを行うこと,評価指標づくりを保健所が支援することがポイントと思われた。
4.思春期保健への取り組みの分析
思春期保健への取り組みにおける学校保健との連携には,学校現場,地域保健サイドの現状の把握,人材育成,関係機関との連携のための具体的方法論,具体的な事業と優先順位の検討,事業継続のための工夫が必要であり,連携を進める上での段階を一歩ずつ達成できるように意識して展開することが重要である。
結論
計画策定への庁内他部局や関係機関,住民組織,親代表の参画,ニーズ調査の実施は,既存の母子保健事業の変化や「健やか親子21」関連事業の実施,関係機関との連携の推進,住民のエンパワメントと有意な関連を認めた。これらの策定プロセスにおける保健所支援は有効であったが,策定後の進行管理,特に,ルーチンワークで得られる情報に基づく評価への支援が今後必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-