児童福祉施設における自立支援のためのアセスメント作成の研究(概要)

文献情報

文献番号
200200396A
報告書区分
総括
研究課題名
児童福祉施設における自立支援のためのアセスメント作成の研究(概要)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
福山 清蔵(立教大学)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部恵一郎(千葉刑務所)
  • 奥山真紀子(国立療育センター)
  • 西澤哲(大阪大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究の目的:児童福祉施設における自立支援のための新しいシステム作りの必要性を踏まえ、情報の整理と共有化の過程に貢献する為にアセスメントツールを作成する。
研究方法
研究の方法 :全国65施設(児童養護施設、児童自立施設、情緒障害短期治療施設)においてアンケート調査を実施して原案を作成する。原案を統計処理し確定版を用意して実際に各施設において汎用性を確認する。さらに実地に面接調査を行なうことを通して利便性を確保する。
結果と考察
結果:65施設2470名分のアンケート調査を行い回収は1159名であった。(回収率46.9%)事前調査は、施設入所以前の環境・家庭状況、施設内における行動観察、施設入所以前の被虐待経験3つの部分からなる。それらすべての項目を因子分析した結果、施設内における行動観察項目の確定、被虐待経験項目の確定の二つの構造から考察することとなった。被虐待経験は施設内における重要な指標となっていることが明らかとなっている。また、施設内の行動観察項目は次のような要素として想定できることが指摘された。原案では被虐待項目を含んで321項目想定していたが因子分析の結果全体で144項目に精選された。健康度21項目、②対人関係の問題28項目、③認知・学習の問題15項目、④問題行動16項目、⑤遊び7項目、⑥抑うつ感5項目、⑦自立神経関連の問題5項目、⑧睡眠の問題5項目、⑨多動・衝動・不注意5項目、⑩自傷行為3項目などが施設内での観察項目として確定している。完成版としてのアセスメント用紙としてはこれら項目に被虐待項目34項目が加えられている。また、精選された調査用紙に基づいて実際に施設に赴きケーススタディを行い実際的な妥当性を確認している。さらに、全体の問題行動は被虐待経験とどのような関連があるか、各因子間にどのような関連があるかなどについて解析しており、最終的には全体をプロフィールとして一瞥し、各施設において取り組むべき問題点を的確に指摘することができるように工夫している。職員からの情報収集を行い、使用上留意すべき点を検討した。因子分析:昨年のアセスメント用紙にあった「施設内での生活について」観察項目の265項目について、「主因子法、バリマック回転操作を行い20因子まで指定した。その結果、以下のように組み替え、
合計110項目とした。昨年度の項目と比較すると、「自己像」「総合性」「行動観察から見た家族関係の変化」に該当する項目の多くが因子分析の結果削除されることになった。これは職員にとって子ども自身の自己像がどのようなものであるかが、日常生活をともにする者からは見えにくいと言うことであろう。また「総合性」の項目は対人関係やコミュニケーションと区別がつきにくかったかもしれない。「家族との関係」については、変化が見えるには相当長い入所期間が必要なのであろう。行動観察項目および児童虐待評価の点数化A.健康度21項目B.遊び7項目C.対人関係の問題28項目 D.認知・学習の問題15項目 E.問題行動16項目 F.抑うつ感5項目 G.自律神経系関連の問題5項目 H.睡眠の問題5項目 I.多動・衝動・不注意5項目J.自傷行為3項目①行動観察項目上記の新しいチェック項目ごとにZ値間のクロス集計を行い、Z値の標準偏差2を「問題群」、標準偏差1を「準問題群」とし、それぞれの項目0~3点を合計することで点数化した。各カテゴリーごとの得点と問題群および準問題群の点数は以下のようになる。その際、A.健康度とB.遊びは、肯定的なポイント計算になるので定められた点数以下の場合が問題であり、その他のものは点数が高いほど問題が深刻であることを示す。A.健康度:21項目×(0~3点)得点0~63点、平均は29.54点6点以下が問題群、18点以下が準問題群B.遊び:7項目×(0~3点)得点0~21点、平均13.43点2点以が
問題群、8点以下が準問題群C.対人関係の問題:28項目×(0~3点)得点0~84点、平均31.53点69点以上が問題群、51点以上が準問題群D.認知・学習の問題:15項目×(0~3点)得点0~45点、平均16.57点39点以上が問題群、28点以上が準問題群E.問題行動:16項目×(0~3点)得点0~48点、平均3.74点16点以上が問題群、10点以上が準問題群F.抑うつ感:5項目×(0~3点)得点0~15点、平均3.82点11点以上が問題群、7点以上が準問題群G.自律神経系関連の問題:5項目×(0~3点)得点0~15点 平均0.76点 5点以上が問題群、3点以上が準問題群H.睡眠の問題:5項目×(0~3点)得点0~15点、平均2.16点9点以上が問題群、6点以上が準問題群I.多動・衝動・不注意:5項目×(0~3点) 得点0~15点、平均4.78点13点以上が問題群、9点以上が準問題群J.自傷行為:3項目×(0~3点)得点0~9点、平均1.29点6点以上が問題群、4点以上が準問題群②児童虐待項目昨年度のアセスメント用紙からいくつかの項目に関して有効な回答が得られなかったものを削除した。その上で、それぞれのカテゴリーごとに合計点を出し、一定の点数(カットオフ・ポイント)を定めた。これはその点数以上であれば生活行動観察の項目で、問題群または準問題群になっていることを示している。それと同時にこのような点数化を行うことで、どのような種類の虐待を受けてきたかを評価する際にも役立つと思われる。被虐待児童と言われても実際にどのようなカテゴリーの虐待かが評価されないことが多い。心理的虐待は他の虐待と重複することが多いのが実状である。身体的虐待:7項目×(0~3点)得点0~21点、カットオフ・ポイント6点ネグレクト:7項目×(0~3点)得点0~21点、カットオフ・ポイント10点心理的虐待:7項目×(0~3点)得点0~21点、カットオフ・ポイント7点性的虐待:9項目×(0~3点)得点0~27点、カットオフ・ポイント6点ドメスティック・ヴァイロレンス:4項目×(0~3点)得点0~12点、カットオフ・ポイント5点(完成版)アセスメント用紙アセスメント用紙は「児童福祉施設における自立支援のためのアセスメント(最終モデル版)」として、本報告書に掲載した。昨年度考案したアセスメント用紙で集計、分析を行いチェック項目数はおよそ1/3になり、全体として昨年度のものよりも簡便なものになった。以上が2年間にわたる研究の概要であるが、最後に児童福祉施設を横断的に調査対照として進められた本研究の成果が、施設職員にとってはプロフィールとして簡便にチェックできかつ利用しやすいものができることにより、各施設で児童の自立支援計画が立てやすくなると共にフォローしやすいものとなるであろうことを確信している。我々の研究の成果が一日も早く活用段階となるように願うものである。
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結論

公開日・更新日

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