ひとり親(母子)家庭・再婚家庭の実態とその支援方法に関する研究

文献情報

文献番号
200200353A
報告書区分
総括
研究課題名
ひとり親(母子)家庭・再婚家庭の実態とその支援方法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 美貴子(明治学院大学)
研究分担者(所属機関)
  • 北川清一(明治学院大学)
  • 野沢慎司(明治学院大学)
  • 茨木尚子(明治学院大学)
  • 笠井裕子(ステップファミリー・アソシエーション・ジャパン)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、離婚、再婚というライフイベントの増加により、わが国ではひとり親家庭、再婚家庭(ステップファミリー)の増加が顕著である。ひとり親家庭では、親の心身の障害、DV体験等により、長期にわたり子育てを中心とする生活支援が必要となる家庭も少なくない。一方増加が予測される再婚家族については、わが国ではその実態や生活二一ズに関する研究がほとんどなされておらず、十分な社会的認知も得られていない段階にある。本研究は、ひとり親家庭の中でもとりわけ濃密な支援を必要とする「自立困難」事例に焦点をあて、その実態と要因分析から、彼らを支援するための具体的な援助方法について明らかにすることを目的とする。また、ひとり親から再婚家族への変化に着目し、わが国の再婚家族の実態から、その生活問題や二一ズを明らかにし、再婚家族支援のあり方について検討する。以上の目的から、本研究は、①自立困難なひとり親家庭への支援のあり方研究、②再婚家族の実態とその支援のあり方研究という二つの分担研究から構成されている。両分担研究とも、実態を明らかにし、それぞれの家庭について類型化を試み、その類型ごとの特徴を把握し、ひとり親家庭および再婚家庭の諸問題について、具体的な支援のあり方を示し、家庭支援の実践現場での援助者の資質向上に寄与することを目的としている。
研究方法
2年計画の初年度にあたる今年度は、以下のような研究方法を計画した。
①自立困難なひとり親(母子)家庭への支援のあり方研究
1)英国における緊急一時保護事業の現地調査の実施
英国におけるひとり親家庭の当事者組織団体および全英ひとり親家庭連盟、ウエールズ州カーディフ市におけるDV被害者のシェルターを訪問し、資料収集および聞き取り調査を行った。近年の諸外国におけるひとり親家庭への支援のあり方について、その情報収集、および文献レビューを行うとともに、その支援方法を中心に情報・意見交換を行う。
2)母子生活支援施設の実態調査の実施及び分析
全国の母子生活支援施設の実態調査を実施し、緊急一時保護、就労支援、子育て支援などの支援の実態を把握することに努めた。実態調査から「処遇困難事例」の収集を図り、事例分析をし、課題や特徴等の抽出から、類型化を試みる。なお、これらの作業は、次年度に実施予定(計画中)の、市区町村の母子および父子福祉サービス担当者にアンケート調査を実施し、調査結果をもとに共同討議を行い、支援方法に関するマニュアルを作成し、支援方法についての具体案を提示する予備的調査として位置づけ、実施する。
②再婚家族の実態とその支援のあり方研究
1)再婚家族(ステップファミリー)に関するインタビュー調査研究
継父母および実父母を対象としたインタビュー調査をおこなう。日本では前例のない未開拓領域であるため、半構造化インタビューによって家族生活の多様な領域について情報収集し、探索的な質的データ分析を行うことを主目的にしている。
2)再婚家族セルフヘルプグループにおける教育プログラム活動の実施およびその評価
教育プログラム開発と実施のために、米国再婚家族当事者組織の実践活動のヒヤリング調査を実施する。それに基づき、再婚家族教育プログラムを翻訳、日本向けに検討し改訂する。このプログラムを使用したセルフヘルプ活動を関東エリア、および関西エリアで実施し、その評価検討を行う。
結果と考察
①自立困難なひとり親(母子)家庭への支援のあり方研究
全国母子生活支援施設協議会に加盟する全ての施設=286施設に対して郵送調査を行い、回答数240施設(回答率83.92%)、有効回答数209(73.08)であった。調査項目は、施設の現世帯数、職員配置状況、施設の提供するサービス内容(「住居提供支援」「施設内子育て支援(保育)」「就労支援」「広域利用」「緊急利用関連」)等について、その実態や問題点などである。現在、調査結果を分析中であるが、施設利用者で、知的障害のある方は、209施設中97ヶ所(46.41%)、精神障害のある母親は、209施設中93ヶ所(44.50%)、外国籍の方は、209施設中83ヶ所(39.71%)に入所していることが判明した。また子の父から養育費の支払いを受けている方は、209施設中121ヶ所(57.89%)に入所していることが判明した。これらの調査結果をさらに分析し、自立を困難にしている要因を明らかにしていくことが課題となった。また英国調査研究では、政府機関、当事者組織、民間団体などへの訪問調査により、養育費問題へのサポート状況、父子世帯への支援問題など今後わが国への参考となりうる知見が得られた。
② 再婚家族の実態とその支援のあり方研究
再婚家族インタビュー調査は、2月7日現在で37ケースを終了し、さらに調査を継
続している。質問項目は、①離別・死別経験と再婚家族形成までの過程、②家族内外の問題や悩み、③(継)親子関係と子育て役割(アイデンティティ)の形成と変容、など。暫定的な分析からは、再婚家族特有の家族状況・家族構造が、他者に理解してもらいにくい心理的ストレスを生み出すことなど、一定の知見が導き出されつつある。海外調査として、全米ステップファミリー支援組織SAAの活動について踏査し、情報収集を行った。それに基づき、SAAの再婚家族教育プログラムを翻訳、日本向けに改訂した。事前にファシリテーター研修を実施したうえで、2002年4月から関東と関西の2地区において「LEAVES」と名付けたセルフヘルプ活動を各5回実施し、そのプログラムを使った。また、各回の参加者への評価アンケートを実施し、その成果を検討した。これまでのところ、ファシリテーター、グループメンバーのいずれも参加満足度が高く、再婚家族の悩みや不安の解消に一定の効果が見られた。
結論
今年度は、2年度計画の初年度であり、ひとり親家庭への支援のあり方研究では、次年度計画の目的である具体的な支援プログラム作成にむけて、母子支援施設の果たしている機能や問題点の解明をアンケート調査をもとに明らかにしてきた。今後は施設で生活する様々な自立困難課題を抱える一人親家庭に焦点を充てつつ、その支援プログラム、支援計画について検討していく。再婚家族の実態とその支援のあり方研究では、初年度は、個別家族の詳細なインタビュー調査による多様なデータの蓄積してきたが、今後はこれらの質的データを分析し、再婚家族の類型化、問題の特徴などについての実態の明確化を図る。さらに、次年度は、再婚家族の相談にあたる教育、福祉保健領域の専門職員に対して、離婚、ひとり親、再婚などの家庭状況に対する意識や相談の実績などについてインタビュー調査を実施し、当事者による教育支援プログラムと合わせて、支援のあり方について検討する予定である。

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