文献情報
文献番号
200200336A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児から思春期まで一貫した子どもの健康管理のための母子健康手帳の活用に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
小林 正子(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
- 矢野亨(財団法人日本学校保健会)
- 加藤則子(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
子どもの発育発達や予防接種歴、健康状態を記録する手帳は、就学時を境に母子健康手帳と学校健康手帳(あるいは健康カード)に分かれているのが現状であるが、本研究は、これらの健康手帳を見直し、今後の望ましい活用法を検討することで、子どもの一貫した健康管理や生涯にわたる主体的な健康づくりに貢献することを目的とする。また同時に、健康手帳を検討していく過程において子どもを巡る様々な課題が取り上げられ、地域保健と学校保健の連携が強化されることも意図している。
研究方法
母子健康手帳とそれに関連した学校健康手帳については、小林班が「健康手帳研究会」を設けて検討し、茨城県の小学生、中学生、高校生、および小中高生の保護者、さらに大阪府各地の小学生、中学生、高校生を対象に、母子健康手帳の使用状況の把握と母子健康手帳および学校健康手帳に関する意見収集を目的にアンケート調査を行った。また、母子健康手帳の活用実践例を収集した。矢野班は、学校健康手帳の全国における使用実態の把握と養護教諭の意見収集を行い、「学校健康手帳活用調査委員会」を設置して検討を行った。また、乳幼児の身体発育値を育児支援に役立てるために、加藤班が発育基準曲線上にプロットする方法を検討した。
結果と考察
茨城地区は、小学校10校(577名)、中学校3校(902名)、高校2校(586名)の計2065名から回答を得た。また、これらの小中高の児童生徒の保護者827名から回答が得られた。大阪地区では小学校3校(670名)、中学校3校(812名)、高校3校(349名)の計1831名から回答が得られた。 養護教諭に対する全国調査では、アンケートを送った2254校(小学校1080校、中学校1080校、高等学校94校)のうち回答が得られたのは計1221校(小学校626校、中学校537校、高等学校58校)で全体の回収率は54.2%であった。概要は、母子健康手帳の保管状況は98.8%と高く、子育てに役に立ったとの回答が70%以上で、子どもが学校に入学後も予防接種の記録を見たり発育発達を確認するため母子健康手帳が必要になったことがある(95.5%)として、よく利用されている現状が把握された。そしえ、さらなる活用のため、子どもの発育や健康状態が出生から成人まで記録できるような手帳を望む声が多くきかれた(85.6%)。しかし、母子健康手帳の使用期間の延長については多くの保護者が賛成しているものの、学校健康手帳に直接繋ぐことには抵抗がみられ、少なくとも子どもが成人するまでは自分が持っていたいとする保護者が多かった(60.5%)。さらに、母子健康手帳においては子どもの発育発達段階に沿った心身の健康に関する情報や、自由に記載できるスペースを拡げることなどが要望として挙げられており、子育て支援や子どもの健康づくりに役立つような内容とすることが求められていた。一方、学校健康手帳は小・中学校では80%以上の学校で手帳あるいはカードが使われているものの高校では35%程度と少なく、健康の記録が次第に家庭に返還されなくなっている状況がみられた。また、健康手帳は学校によって様式が異なり、活用状況にも大きな違いがみられた。児童生徒は、母子健康手帳にも関心はあるが、自分の健康手帳を持ちたいという希望もあり、とくに小学生で半数以上が関心を示していた。そして手帳には単に発育や予防接種、病気などの記録ばかりでなく、知識を得るために「身長・体重」「罹りやすい病気」「ストレス」「運動の仕方」「事故防止や応急手当」「肥満や痩せ」などの健康情報を盛り込むことが期待されていた。保管や記入については、保管は児童生徒あるいは家庭が責任を持ち、
記入も児童生徒本人が行うべきとする養護教諭が多数であったが、これらは養護教諭の事務量を増やさないことと個人情報保護の両面から、今後検討すべき課題である。大きさについても、児童生徒は小さめのB6を希望しているのに対して養護教諭はA5が良いとする意見が多いなど違いがみられる。本調査によって、母子健康手帳と学校健康手帳は、互いの役割りと関連を考慮しながら内容や活用法などを具体的に検討していくべきという方向性が示された。愛知県小牧市では子どもが中学生まで使用できる母子健康手帳が使われており、育児支援にも効果を上げていた。また、身体発育値を現場で簡単にグラフ化するための方法も検討され、研究者レベルで可能になった。
記入も児童生徒本人が行うべきとする養護教諭が多数であったが、これらは養護教諭の事務量を増やさないことと個人情報保護の両面から、今後検討すべき課題である。大きさについても、児童生徒は小さめのB6を希望しているのに対して養護教諭はA5が良いとする意見が多いなど違いがみられる。本調査によって、母子健康手帳と学校健康手帳は、互いの役割りと関連を考慮しながら内容や活用法などを具体的に検討していくべきという方向性が示された。愛知県小牧市では子どもが中学生まで使用できる母子健康手帳が使われており、育児支援にも効果を上げていた。また、身体発育値を現場で簡単にグラフ化するための方法も検討され、研究者レベルで可能になった。
結論
現在、母子健康手帳と学校健康手帳は就学時を境に分断された状態にあるが、子どもは一貫した存在であり、保護者と子どもの双方が発育発達の経過や予防接種歴、健康診断の結果等を出生時から把握していることが望ましい。そのためには、母子健康手帳と学校健康手帳の双方について、記載可能な期間の見直しを含め、時代に即した健康手帳を作成する必要がある。今後は小牧市の実践例等を参考にして具体的に健康手帳の内容を検討していくが、この過程において地域保健と学校保健の連携が強化され、子どもを巡るさまざまな課題の検討が進められるよう配慮したい。
公開日・更新日
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