情報ネットワークを活用した行政・歯科医療機関・病院等の連携による要介護者口腔保健医療ケアシステムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200200193A
報告書区分
総括
研究課題名
情報ネットワークを活用した行政・歯科医療機関・病院等の連携による要介護者口腔保健医療ケアシステムの開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
河野 正司(新潟大学医歯学総合研究科顎顔面再建学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 石上和男(新潟県新発田健康福祉環境事務所)
  • 河内博((社)新潟県歯科医師会)
  • 野村修一(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
  • 鈴木一郎(新潟大学歯学部附属病院)
  • 江面晃(日本歯科大学新潟歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
12,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
要介護者のみならず、高齢者の最大の生きがいは「食べること」であり、要介護者の摂食嚥下機能を維持・回復することは要介護者のQOLや健康状態を高く保つために必須である。このため、本研究では摂食嚥下に障害を持つ要介護者に対し、その予防・治療・リハビリテーションが効果的に提供されるよう、1)行政、介護保険サービス担当者、かかりつけ医、地域歯科診療所、大学等幅広い関係者による効果的な連携体制を確立するとともに、2)これを効率的に支援するためのITを活用した情報ネットワークを構築し、また、3)連携による実際の総合的口腔ケアの提供・評価を通じて、幅広い関係者が共有できる要介護者の病態に応じた標準工程表(クリニカルパス)を作成することを目的とした。
研究方法
初年度である本年度は、新潟県内にモデル地区を設定し、当該モデル地区内において1)連携体制の構築として、関係者連絡協議会および口腔ケア研修会の開催、口腔ケアへの取組みの現状等に関する関係者アンケートを実施した。また、2)情報ネットワークの構築として、関係者間で共有すべき情報等を明らかとするため、グループインタビューを実施したほか、関係者間の情報共有のための掲示板システム等の構築を試行した。さらに、3)標準工程表の作成として、介護認定申請者372名について口腔実態調査を実施したほか、要介護者の歯科治療に関する病診連携の実態等を把握するために新潟県内の病院歯科を対象にアンケート調査を実施した。
結果と考察
1)連携体制の構築としてモデル地区内の郡市医師会、郡市歯科医師会、市町村保健福祉担当課、介護保険指定事業者等の代表者計24名からなる要介護者口腔ケア関係者連絡協議会を設置した。2回にわたり協議会を開催したが、委員から新たに口腔ケアの取組みが開始されたことが報告されるなど、口腔ケアに関する委員間の認識の共有化、連携促進が図られたと考えられる。また、要介護者の口腔ケアに関する研修会を2回開催し、参加者に対し口腔ケアの基本知識および技術を提供した。研修受講者に対するアンケートからは、口腔ケアに関する研修の経験者は少なく、研修希望内容としては口腔清掃実習、摂食リハビリ実習などのより実践的な内容が望まれていることが明らかになった。こうした関係職種のニーズに応えるで、実際の口腔ケアに繋がるような研修プログラムを開発提供していくことが重要だと考えられる。さらに、関係者アンケートを通じ、口腔ケアの取り組み状況などの基礎資料を得た。口腔に問題を抱えている要介護者が多いと考える者は全体の69%を占めたが、十分な対応が出来ていると考える者は少なかった。また、口腔ケアの実施状況には歯科専門職との日常的な連携の有無が大きな要因であることが明らかになった。2)支援情報ネットワークの構築として実施したグループインタビューの結果から、現状の関係者間の情報共有は十分とはいえず、情報センター機能を担うべきケア・マネージャーの資質の確保・維持が不可欠であること、IT化以前に医療・介護従事者間の情報共有を進めるための最低限の基盤を整備・確保する必要があることが示された。特に保健医療従事者と介護従事者の間の連携は、ケースによってはほとんどなされていない事例もあるとのことで、関係者の円滑な連携のためのシステムづくりが必要であると考えられた。また、本年度は関係者間の情報連携を構
築するシステムとして、掲示板システム、在宅寝たきり者歯科保健推進事業報告書データベース、マニュアルなどのインターネットによる提供システムの雛形を作成した。3)標準工程表の作成として、要介護者の歯科保健医療ニーズの実態等を明らかにするため、無作為抽出による要介護申請者の口腔実態調査を実施した。分析対象となった368名のうち、何らかの歯科治療または専門的な口腔ケアが必要であるものは89.4%であった。一方、実際に歯科を受診した者は26.9%で、歯科治療の必要性と実際の受診状況には大きな隔たりのあることが明らかになった。また、新潟県内の病院歯科を対象としたアンケートの結果では、病院歯科における診療の内容としては一般歯科治療中心が23施設と約半数を占め、また、歯科医師も非常勤のみ、または常勤1人のみの施設が29施設と7割近くを占めているなど、インフラ面でも多くの施設が不十分な状態であることが推察された。一方、2次医療圏を単位としてみた場合、入院下あるいは全身麻酔下での歯科治療が可能な病院歯科が存在しない2次医療圏は13医療圏中1カ所のみであり、ほぼ医療圏毎に受け入れ態勢が整備されているものの、実際の病診連携は未だ不十分であることが明らかになり、病院歯科の機能強化とともに、かかりつけ歯科医と病院歯科の具体的な機能分担の在り方や事例を示すなどして、かかりつけ歯科医にも働きかけていくことが必要だと考えられた。
結論
1.新潟県内にモデル地区を設定し、地区内の関係者24名からなる連絡協議会を開催した。これにより、口腔ケアに関する関係者間の意識共有が促進された。2.口腔ケアに関する研修会を2回開催し、それぞれ、123名、170名の参加者を得、関係者の口腔ケアに対する意識向上が図られた。受講者に対するアンケートから口腔ケアに関する研修経験が少なく、口腔清掃実習、摂食リハビリ実習などのより実践的な内容が望まれていることなどが明らかになった。3.関係者へのアンケート調査では口腔に問題を抱えている要介護者が多いと考える者は全体の69%を占めたが、十分な対応がなされていると考える者は少なかった。また、口腔ケアの実施状況には歯科専門職との連携が取れているかどうかが大きな要因であった。4.関係者間へのグループインタビューの結果から、現状の関係者間の情報共有は十分とはいえず、情報センター機能を担うべきケア・マネージャーの資質の確保・維持が不可欠であること、IT化以前に医療・介護従事者間の情報共有を進めるための最低限の基盤を整備・確保する必要があることなどが示された。5.要介護申請者368名に対して行った口腔実態調査の結果分析では、何らかの歯科治療または専門的な口腔ケアが必要である者は89.4%にのぼる一方、実際に歯科受診を希望し受診した者は26.9%で、歯科治療の必要性と実際の受診状況には大きな隔たりがあった。6.県内の病院歯科を対象にしたアンケートの結果では、診療内容は一般歯科治療中心が23施設と約半数を占め、また、歯科医師も非常勤のみ、又は常勤1人の施設が29施設と7割近くを占めていた。一方、2次医療圏にみると、入院下あるいは全身麻酔下での歯科治療が可能な病院歯科が存在しない2次医療圏は13医療圏中1カ所のみで、ほぼ医療圏毎に受け入れ態勢が整備されているものの、実際の病診連携は未だ不十分であることが明らかになった。

公開日・更新日

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