要介護状態予防が必要な対象把握に対する研究

文献情報

文献番号
200200187A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護状態予防が必要な対象把握に対する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
鳩野 洋子(国立公衆衛生院公衆衛生看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 島田美喜(国立保健医療科学院)
  • 岡本玲子(神戸大学)
  • 守田孝恵(国立保健医療科学院)
  • 松野朝之(沖縄県宮古保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
2,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、地域で実施されている介護予防事業のより効果的な推進に寄与するために、地域高齢者自らが記入することによって、要介護状態予防のリスクの有無の鑑別に役立つ尺度を開発することを目的とした。
研究方法
介護予防が必要な対象の状態像の項目を収集するため、以下の3つの方法をとった。第一に寝たきり予防や介護予防活動に関わる実践者、および住民に対する個別インタビュー、グループインタビューである。それぞれのインタビューは大都市部、中都市部、農山村部の各々において実施した。第二の方法として記述調査を実施した。国レベルの研修を受講した全国各地の参加者に対して、寝たきりにつながるリスクが高いと思われる状態像を自由に記述してもらった。第三が文献検討である。介護状態や寝たきりにつながる状態像を検討した文献の結果をデータに加えた。インタビューは逐語録を作成したのち、項目を抽出した。また記述調査も同様の作業を行った。収集したデータを内容分析の方法に基づいて意味単位ごとに分類した。続いて語句を整理しつつ、意味内容について抽象度を上げることで類似した項目を整理していった。次に本尺度開発の立場に基づいて、該当しない項目を削除した。本尺度開発の立場とは以下の通りである。1.要介護状態予防が必要な対象者を把握できることが第一義的な目的であること。2.本人の現在の生活像の観点から、要介護状態にいたるリスクを把握すること。3.前述1.以外の高齢者に対し、広く活用が可能であるものを目指すこと。4.高齢者自身が自ら記入することで活用できるものであること、である。この作業ののち、残った項目に関して再度語句を整え類似性を考慮しカテゴリをたてるとともに、それを質問文として活用できる形式に語句を整えていった。また要因の抽出、およびカテゴリ化の一連の作業に対しては分担研究者、および修士以上の学位を有するものとともに、分析の妥当性の検討を繰り返し行った。質問文試案が完成したのち、この質問項目の表面妥当性を検討し、また項目の優先順位づけを行う目的でアンケート調査を実施した。対象は過去5年のうちに全国レベルの学会、ないしは雑誌で要介護状態予防に関わる内容を発表した現場実践者に対して行った。
結果と考察
収集された項目は775項目で、そのうち、本尺度開発の立場に該当しない病気等の項目やライフイベント等の146項目を除外し、残った629項目を整理した結果、9の大項目、84の細項目に分類された。大項目は「家族機能」「環境」「活力」「精神・心理状態」「自己像の持ち方」「健康管理への姿勢と行動」「社会的活動性」「身体状態」「日常生活活動」である。このうち「環境」は「家族以外の人的環境」「制度的な環境」「物理的環境」の中項目に分類された。84の細項目に対して質問票を作成し、重要度を聞いた。この結果は現在まだ回収中であるが、ごく一部の分析の結果では「自分が必要とされていると感じる」「自分の姿を人目にふれさせたくないと思う」「生きがいがある」「家庭内あるいは外で役割がある」「自分でできることは、自分でするようにしている」「おなかの底から笑うことがある」等の項目が重要度が高く選択されていた。一方、重要度が低いとされた項目は「主に過ごす部屋の居心地は快適である」「健康に関する情報は積極的に集める方だ」「腰が曲がってきた」「大きな声で話す機会がある」「人に遠慮しながら暮らしている」の項目であった。本研究のアイテムプールの収集、分析のプロセスは、さまざまな地域からの対象選定や複数のデータソースを用いたこ
と、その分析に関して複数の研究者との合議を行いつつ実施したことで、一定水準の妥当性が保たれたものとなったと考えられる。項目の重要度に関しては、まだ回収途中ではあるものの、すでに重要度の高いものとそうでないものが明らかになりつつあり、これをもとに次年度の本調査に向けて項目の精選を実施してゆきたい。なお、本項目は専門職のアセスメント項目としても活用できると思われるため、専門職用アセスメント票も試案として本年度作成した。このアセスメント票に関しても、あわせて開発を実施してゆくたいと考えている。
結論
高齢者保健に関わる専門職に対するインタビュー調査と記述調査、住民に対するインタビュー調査、文献検討の結果により、要介護状態につながると考えられる状態像を整理した。今後は現在実施中の項目の削減の結果にもとづき50項目程度の項目数による尺度を作成し、2年次の住民に対しての調査の実施をすることにより、最終的には30項目程度の尺度の完成を目指したい。

公開日・更新日

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