「疫学研究に関する倫理指針」に関する情報を幅広く適切に普及するための有効なインターネット配信に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200102A
報告書区分
総括
研究課題名
「疫学研究に関する倫理指針」に関する情報を幅広く適切に普及するための有効なインターネット配信に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
土井 徹(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 裕(順天堂大学)
  • 丸山英二(神戸大学大学院)
  • 玉腰暁子(名古屋大学大学院)
  • 岡本悦司(国立保健医療科学院)
  • 緒方裕光(国立保健医療科学院)
  • 望月友美子(国立保健医療科学院)
  • 大久保千代次(国立保健医療科学院)
  • 藤田利治(国立保健医療科学院)
  • 磯野 威(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
-
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第1の目的は、「疫学研究に関する倫理指針」を英訳することである。これは日本に居住する研究者が外国雑誌に投稿する際に、その外国雑誌の編集委員会が投稿論文の研究倫理を知る根拠となるものである。また、これは日本の雑誌に投稿を計画している外国人にも遵守を求めることになり、さらに外国との共同研究を行う際に、相手国の研究者、研究対象者の理解を得る根拠となる。第2の目的はこの倫理指針の周知度について研究機関を対象に全国調査をし、現状と課題を検討することである。第3の目的はこの倫理指針の普及に役立つQ&Aを研究者自身が使いやすいようにデータベース化するためのプログラムを開発することである。
研究方法
本研究の目的の1つである「疫学研究に関する倫理指針」の英訳に関しては、主任・分担研究者に研究協力者(米国人含む)を交え、会議を数回開き議論した。次にもう1つの目的であるこの倫理指針の周知度を知る全国調査では、全保健所、全地方衛生研究所、大学(医学部、歯学部、薬学部、看護系学部の学部ごと)、全国立病院、事業所・健診機関(産業保健研究者を標本抽出)を対象に15項目から成る質問表を郵送・無記名回収した。第3の目的である「疫学研究に関する倫理指針」Q&Aの項目立てデータベース作成のためのプログラム開発に関しては、必須要件を検討し、業者との話し合いで進めた。
結果と考察
「疫学研究に関する倫理指針」の英訳に関しては、議論の末合意で英訳が完成した。
この指針の周知度全国調査では、回収率は保健所約60%、地方衛生研究所約80%、大学約55%、国立病院約37%、事業所・健診機関(産業保健研究者)約30%であった。保健所では1人で2つの保健所長を兼ねている場合には1つの保健所からしか回答が発送されない可能性があること、複数の学部で1つの倫理審査委員会を設置している大学では回答が1通しか発送されない可能性があることにより、回収率が若干少な目になっている。
記入者は施設長あるいは倫理審査委員長によるものが約60%であった。「疫学研究に関する倫理指針」の存在自体は地方衛生研究所の92%を筆頭に、周知度が高率であった。倫理指針の内容については、存在自体を知っていると回答した者に限定すると高率であったが、この条件をはずすと地方衛生研究所、大学では80%台であるのに対し、保健所では約60%と低かった。すなわち保健所の約40%はこの倫理指針の内容を知らないことになる。疫学研究に関する倫理審査委員会の設置に関しては保健所と地方衛生研究所ではほとんど設置されていなかった。倫理審査委員会が設置されていない施設では、疫学研究の倫理審査をどうしているか問うたところ、「数施設で構成した倫理審査委員会」、「学会等」は少なく、「主任研究者に委ねる」や「関与していない」が多かった。倫理審査を実施する側から見て、その際に困ったことがあったかどうかの問いでは、大学で25%が困ったことがあったと答えていた。一方疫学研究を実施する側から見て、その際困ったことがあったかどうかについては、保健所、地方衛生研究所、大学で1/4が困ったことがあったと答えていた。しかし倫理審査実施上改善した方がよい点の有無の問いでは「ある」という回答は少なかった。保健所での周知度が低いという結果は、保健所の役割(保健事業)と配置人員(専門職配置数が少ない所も多い)によるものでやむを得ないところもある。少人数の施設単独で倫理審査委員会を設置することは無理であるので、積極的に県の主導で他施設合同のものを作るとか、有料であっても国で1つの審査機関を設置する(改善案も提案してくれる)等も検討に値しよう。
第3の目的である「疫学研究に関する倫理指針」Q&Aの項目立てデータベース作成のためのプログラム開発に関しては、プログラムが完成し、利用者の求めに応じて提供する準備ができている。
結論
地域保健法では保健所等に自らの調査、統計情報の収集分析を通して保健需要、健康問題を明らかにすることを勧めている。情報を得るための調査は保健事業としての位置付けにより、「疫学研究に関する倫理指針」の適用外となりうるが、この結果を解析し、学会等で発表することによって、多数の専門家の意見や他の地域からの意見が得られ、科学的根拠と比較され、あるいは科学的根拠の1つとなり行政に活かされるようになる。この点に関しては原則として「疫学研究に関する倫理指針」の適用を受けることになるので保健所でのこの指針の周知度を高めることが必要である。また、普及のためには連結不可能匿名化とインフォームドコンセントに関する技術的方法の開発が必要である。

公開日・更新日

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