大腿骨頚部骨折の医療ケア標準化における費用対効果(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200066A
報告書区分
総括
研究課題名
大腿骨頚部骨折の医療ケア標準化における費用対効果(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
川渕 孝一(東京医科歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部俊子(東京医科歯科大学)
  • 今田光一(黒部市民病院)
  • 佐手達男(公立昭和病院)
  • 米村憲輔(済生会熊本病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
6,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療の介入がアウトカム(在院日数、歩行能力、合併症)にどんな影響を及ぼしているかを、医療の適切性と効率性の両面から検討する。より具体的には当該病院における大腿骨頸部骨折の医療ケアの費用対効果を検討し、望ましい機能連携のあり方を模索する。
研究方法
対象施設は全国の急性期病院9施設。対象患者は平成14年6月から平成15年1月までに、大腿骨頚部骨折で観血的修復術を施行した患者321例とした。より具体的には参加9病院を①特定の退院先をもたない自己完結型病院、②回復期リハビリ病院および療養病棟をもつ多機能複合型病院、③病病連携型病院の3つに分けてプロスペクティブ調査を行った。(倫理面への配慮)データ管理は研究便宜上、患者番号で管理し、個人名のもれがないよう十分配慮した。
結果と考察
結果は次の3点に要約される。まず第一は患者の歩行能力をエンドポイントとしてそれに要した在院日数の中央値を調べたところ、自己完結型が42.5日であるのに対して、病病連携型は94.5日と2倍以上の差があることがわかった。第二は、当該在院日数に影響する因子を調べたところ、①褥瘡、②合併症、③受傷前の歩行レベル、④受傷前の居住場所(施設でないこと)、⑤リハビリの開始時期の4つが統計的に有意だった。第三は、平成13年度から継続して調査している4病院について(受傷前外出歩行可能な群にて)アウトカムの比較を行った所、在院日数の中央値は45.5日から39.5日と6日短縮した(p<0.05)。特に在院日数は長かった病院ほど短縮化傾向が著しく、19日の短縮が見られた病院もあった。しかし診療報酬の中央値は619点減少したものの有意差はなかった。またリハビリ時間は増加したが、自宅退院率は63.2%から54.4%へ低下、外出歩行可能者も68.2%から44.0%に低下した。わが国の診療報酬政策は、在院日数短縮やそれに伴うクリニカルパスの導入などを勧奨しているが、本研究では病病連携型よりも自己完結型、すなわち患者を後方病院に転院させない方が経済効率は高いということが明らかになった。これは形骸化した病病連携は医療の適切性と効率性から見て、必ずしも望ましくないことを示唆するものである。当局は早急に従来からの機能連携のあり方を見直すべきであろう。
結論
大腿骨頚部骨折の患者の早期回復には、合併症のないことや、受傷前の歩行レベルが高いことに加えて、受傷前の居住場所や、リハビリの早期開始が重要なことが明らかになった。病病連携型が自己完結型病院に比べて、コストパフォーマンスは必ずしも高くないことがわかった。

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