介護サービスと世帯・地域との関係に関する実証研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200028A
報告書区分
総括
研究課題名
介護サービスと世帯・地域との関係に関する実証研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
白波瀬 佐和子(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 泉田信行(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
5,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、介護を広く高齢期における生活実態の側面から明らかにし、同居のみならず別居の親族とのつながりや地域とのつながりを考慮にいれて実証的に考察することにある。介護者と主介護者という個人対個人の視点が優勢であった経済学的アプローチに加えて、本研究では世帯やネットワークの概念を投入して介護を高齢期の生活保障の観点から明らかにする。
研究方法
本研究は大きく2つの研究方法から構成されている。第1に、平成10年と平成13年に厚生労働省が実施した「国民生活基礎調査」や平成10年に国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第2回全国家庭動向調査」の個票データを用いて、全世帯における介護・介助を必要とする者がいる世帯の位置づけや、要介護者と主介護者との関係について全体社会の中で明らかにすることを目指す。第2に、次年度以降の実施を予定している社会サービス供給主体の自治体をベースとした実態調査の集計結果を利用する。同調査は65歳以上高齢者を対象として、個人属性、健康状態、同居世帯員や別居親族との関係、地域との関係について設問する。同調査は5つの東京近郊地域で実施が予定されている。(倫理面への配慮)マイクロデータを使用の際には、個人が特定されないように十分留意するとともに、個人情報の流出のないように細心の注意を払う。
結果と考察
今年度は国民生活基礎調査や第2回全国家庭動向調査の分析結果を論文としてまとめた。介護サービスの提供者と受給者の間にジェンダー性が内包されており、介護に関する意識の上にもそのジェンダー性は反映されていた。就労パターンにおいては、介護を開始する時点まで就業を継続していた者は、仕事を続けるものが過半数であるが、仕事の中断を余儀なくされたものらは、職場に関連した施策の充実を強く求めていた。介護は体力的のみならず精神的な負担を課すが、高い負担感、ストレスとなるのは介護負担の集中、介護サービス提供者の孤立によるところが大きいようだ。介護サービスの授受をみると、そこにはジェンダー間の非対称性が明らかになった。妻よりも年齢が高く、平均寿命が短い男性は妻によって介護される確率が高いが、女性の場合は、下世代から介護を受ける傾向にある。介護を社会化するためには、この強固に絡まったジェンダー性をどう紐解いていくかが重要な鍵となるのではなかろうか。また、介護に関連した就業行動を説明するにあたっては、本人の属性に加えて職場における支援策が重要で、介護も子育ての場合と同様に、充実した雇用政策が改善の鍵を握っている。仕事を続けるうえに親族は重要な支援策であるが、職場の理解を制度として組み込みファミリーフレンドリーな政策を展開することが重要であろう。
結論
大規模な全国調査を再分析した結果、介護に関連する役割構造に強いジェンダー関係が世帯内外で存在し、意識にも反映されていることが認められた。介護を受ける者、介護サービスを提供する者との関係は、その他の世帯員や別居親族、また社会サービスを提供する自治体と連動しながら、形成されているようだ。

公開日・更新日

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