文献情報
文献番号
200101235A
報告書区分
総括
研究課題名
Mass Gatheringにおける集団災害のガイドライン作成とその評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
山本 保博(日本医科大学救急医学)
研究分担者(所属機関)
- 藤井千穂(大阪府立千里救命救急センター)
- 浅井康文(札幌医科大学附属病院救急集中治療部)
- 辺見弘(国立病院東京災害医療センター救命救急センター)
- 杉山貢(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター救命救急センター)
- 石井昇(神戸大学医学部救急部)
- 石原哲(医療法人社団誠和会白鬚橋病院)
- 杉本勝彦(昭和大学横浜市北部病院救急センター)
- 小井土雄一(日本医科大学救急医学)
- 勝見敦(武蔵野赤十字病院救命救急センター)
- 森村尚登(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター救命救急センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Mass Gatheringとは、1,000人以上の集まりと定義され、安全面から集団の行動は管理される必要があると考えられている。近年においては、イベントの規模が大きくなる傾向があり、それに伴いMass Gatheringにおける集団災害の発生の可能性は、テロ、暴動、環境因子、パニック、倒壊、予期せぬ事故を考えると今後ますます増加してくると考えられる。Mass Gatheringにおける災害は、一旦起これば人々が密集しているためパニック状態も加わりインパクト以上に死傷者を出すことになり、集団災害の中でも特殊な災害として捉えることが必要である。よって、このようなMass Gatheringにおける集団災害に対しては、事前の周到な災害医療計画に基づく準備が必須である。世界的に見るとオリンピックゲーム、ワールドカップの様なMass Gatheringにおいては、必ず集団災害に対する対応策が準備されてきた。しかしながら、本邦ではMass Gatheringにおける集団災害対応は経験がなく欧米に比較すると著しく不十分であると考えられる。また、本邦では2002年にはワールドカップ開催を控えており、ワールドカップ大会における集団災害医療体制の計画作成は急務であると考える。そこで今回、欧米で行われた実際のMass Gathering(ワールドカップ等)における集団災害ガイドラインのプラン発動の成果を調査し、その評価を行う。また本邦の2002年FIFAワールドカップ大会における集団災害医療体制計画作成のためのとガイドラインと比較し、本邦の利点・欠点について検討する。最終的には本邦の状況に見合ったMass Gatheringにおける集団災害医療体制のガイドラインを作成し全国的なネットワークの確立をはかる。
Mass gatheringに於ける集団災害は、上述したように、災害の中でも特殊な災害と位置付けられる。本邦では、このMass gatheringに於ける集団災害に対する、Incidental command systemの概念に基づいた災害対策は未だ構築されてない。各地域などで準備される災害対策には地域の特性などを除外しても、種々の救援機関・医療team・病医院などの間の共通性に欠く。その為に、集団災害時に協同した救援医療活動では混乱が生じ、かつ、効率を低下させる要因ともなりうる。本研究では、国内のどのような地域でも共通した概念に基づいた医療活動が可能なMass gatheringにおける集団災害医療体制に対するguidelineの作成を行う。このguidelineが作成されることにより、様々な規模やタイプなど異なったあるいは各地域におけるmass gatheringでの集団災害に対する適切な対応・準備が行えることが期待される。
Mass gatheringに於ける集団災害は、上述したように、災害の中でも特殊な災害と位置付けられる。本邦では、このMass gatheringに於ける集団災害に対する、Incidental command systemの概念に基づいた災害対策は未だ構築されてない。各地域などで準備される災害対策には地域の特性などを除外しても、種々の救援機関・医療team・病医院などの間の共通性に欠く。その為に、集団災害時に協同した救援医療活動では混乱が生じ、かつ、効率を低下させる要因ともなりうる。本研究では、国内のどのような地域でも共通した概念に基づいた医療活動が可能なMass gatheringにおける集団災害医療体制に対するguidelineの作成を行う。このguidelineが作成されることにより、様々な規模やタイプなど異なったあるいは各地域におけるmass gatheringでの集団災害に対する適切な対応・準備が行えることが期待される。
研究方法
2002年ワールドカップ大会を対象に下記の研究を行う。
1.開催地域の現状調査
1)地域の集団災害医療体制
・競技場内外の体制
・関連機関との連携体制
2)地域間集団災害医療体制
3)repatriation
4)韓国の体制調査
2.サッカー国際大会期間中の傷病者の疫学的調査
1) 前回フランスワールドカップ大会等の調査結果の検討
2)2002年ワールドカップ大会の疫学的調査方法の検討
3.各地域における集団災害医療体制の比較検討会議の実施
以上より本邦独自のMass gatheringに於ける集団災害医療体制のガイドラインを作成する。
1.開催地域の現状調査
1)地域の集団災害医療体制
・競技場内外の体制
・関連機関との連携体制
2)地域間集団災害医療体制
3)repatriation
4)韓国の体制調査
2.サッカー国際大会期間中の傷病者の疫学的調査
1) 前回フランスワールドカップ大会等の調査結果の検討
2)2002年ワールドカップ大会の疫学的調査方法の検討
3.各地域における集団災害医療体制の比較検討会議の実施
以上より本邦独自のMass gatheringに於ける集団災害医療体制のガイドラインを作成する。
結果と考察
初年度は2002年FIFAワールドカップ大会(以下WC大会)の集団災害対応の準備をテーマに取りあげ研究を行い下記の成果をあげた。
1)「2002年FIFAワールドカップ大会における集団災害医療計画作成のためのガイドライン」を完成(資料参照)
我々は、1998年フランスWC大会、1994年アメリカWC大会、FIFAの災害対策医療マニュアルの資料を中心に、欧米における国際サッカー大会での救急医療体制等の調査研究を行い、2001年3月「2002年FIFAワールドカップ大会における集団災害医療計画作成のためのガイドライン」を完成させた。
2)[Mass gatheringにおける集団災害医療体制作成のためのマニュアル-2002年FIFAワールドカップ大会における集団災害医療体制モデル-]を完成(資料参照)
マニュアルの作成のために、研究者2名をパリのSAMU(フランス院外救急医療組織)へ短期留学(平成13年11月17日~12月14日)させ、前回フランス大会の医療対応を充分に研究(資料参照)し今回のマニュアルへ反映させた。マニュアルは200人の死傷者が発生する規模の災害(NBC災害を含む)を想定して作られた。集団災害発生時の対応に必要な組織構成として、集団災害医療対策本部、通信情報センター、医療救護班、後方病院をあげ、医療救護班としては、スタジアム内医療救護班、集団災害対応医療救護班、ヘリ搬送医療救護班をあげた。マニュアルの中で、それぞれの役割を明確にし、連携の重要性を述べた。また、準備すべき医療資機材のリストを記載した。
3)「2002年FIFAワールドカップ大会における救急医療・集団災害医療体制のためのセミナー」開催(資料参照)
平成14年2月7日ム9日には開催10都市の行政・医療・消防・警察等の関係者を集め、講師としてSAMUパリ本部長Prof.Carliを含め3名を招聘しセミナーを行った。
4)日韓合同カンファレンス
今回はWC大会初の二カ国開催のため、集団災害対応に関して二国間で連携が必要と考え、平成13年11月14日(ソウル)平成14年1月21日(東京)で合同カンファレンスを行った(資料参照)。
5)ビデオ作成[集団災害時における一般医の役割~Mass-gathering medicine~]
Mass-gatheringの集団災害時に開業医を始めとする一般医は何をなすべきかを解説したビデオを作成した。
6)集団災害医療体制の比較検討会議の実施
10ケ所の開催地に対して、集団災害対応の準備がどこまで進んでいるかアンケート調査を行った。
アンケート調査の目的は、2001年度12月31日現在においての2002年FIFAワールドカップ大会のおける各開催地域の集団災害・救急医療体制の準備状況を把握し、体制構築における問題点を抽出することである。アンケート回答は6地域であった。選手やVIPを中心とした救急医療体制、特にスタジアム内においては6地域すべてにおいて体制作りは進んでいることは判明した。集団災害医療体制においては認識はされていることが確認されたが、具体的な項目については検討中の回答が多かった。
1)「2002年FIFAワールドカップ大会における集団災害医療計画作成のためのガイドライン」を完成(資料参照)
我々は、1998年フランスWC大会、1994年アメリカWC大会、FIFAの災害対策医療マニュアルの資料を中心に、欧米における国際サッカー大会での救急医療体制等の調査研究を行い、2001年3月「2002年FIFAワールドカップ大会における集団災害医療計画作成のためのガイドライン」を完成させた。
2)[Mass gatheringにおける集団災害医療体制作成のためのマニュアル-2002年FIFAワールドカップ大会における集団災害医療体制モデル-]を完成(資料参照)
マニュアルの作成のために、研究者2名をパリのSAMU(フランス院外救急医療組織)へ短期留学(平成13年11月17日~12月14日)させ、前回フランス大会の医療対応を充分に研究(資料参照)し今回のマニュアルへ反映させた。マニュアルは200人の死傷者が発生する規模の災害(NBC災害を含む)を想定して作られた。集団災害発生時の対応に必要な組織構成として、集団災害医療対策本部、通信情報センター、医療救護班、後方病院をあげ、医療救護班としては、スタジアム内医療救護班、集団災害対応医療救護班、ヘリ搬送医療救護班をあげた。マニュアルの中で、それぞれの役割を明確にし、連携の重要性を述べた。また、準備すべき医療資機材のリストを記載した。
3)「2002年FIFAワールドカップ大会における救急医療・集団災害医療体制のためのセミナー」開催(資料参照)
平成14年2月7日ム9日には開催10都市の行政・医療・消防・警察等の関係者を集め、講師としてSAMUパリ本部長Prof.Carliを含め3名を招聘しセミナーを行った。
4)日韓合同カンファレンス
今回はWC大会初の二カ国開催のため、集団災害対応に関して二国間で連携が必要と考え、平成13年11月14日(ソウル)平成14年1月21日(東京)で合同カンファレンスを行った(資料参照)。
5)ビデオ作成[集団災害時における一般医の役割~Mass-gathering medicine~]
Mass-gatheringの集団災害時に開業医を始めとする一般医は何をなすべきかを解説したビデオを作成した。
6)集団災害医療体制の比較検討会議の実施
10ケ所の開催地に対して、集団災害対応の準備がどこまで進んでいるかアンケート調査を行った。
アンケート調査の目的は、2001年度12月31日現在においての2002年FIFAワールドカップ大会のおける各開催地域の集団災害・救急医療体制の準備状況を把握し、体制構築における問題点を抽出することである。アンケート回答は6地域であった。選手やVIPを中心とした救急医療体制、特にスタジアム内においては6地域すべてにおいて体制作りは進んでいることは判明した。集団災害医療体制においては認識はされていることが確認されたが、具体的な項目については検討中の回答が多かった。
結論
当初は2002年ワールドカップ日本組織委員会および各開催地地方自治体とも集団災害対応という見地に乏しかったが、初年度の研究成果であるWC大会における集団災害対応マニュアルの提示とセミナー開催により、各開催地における集団災害対応に対する意識は充分に啓発できた。その結果、現段階で10カ所の競技場に、程度の差はあれ何かしらの集団災害医療体制が敷かれることになった。このことが初年度研究の最も大きな成果であると考える。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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