看護ケアの質評価・改善の管理体制づくりに関する研究

文献情報

文献番号
200101205A
報告書区分
総括
研究課題名
看護ケアの質評価・改善の管理体制づくりに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
上泉 和子(青森県立保健大学)
研究分担者(所属機関)
  • 内布敦子(兵庫県立看護大学)
  • 粟屋典子(大分県立看護科学大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は看護ケアの質を評価するプログラムを開発・洗練し、質評価を普及することと、看護ケアの質を改善していくための、管理的組織体制づくりを検討すすることを目的に開始した。1年目は第三者評価型プログラム(看護QIプログラム・第三者評価)の洗練および質評価の普及をめざし自己評価型プログラム(看護QIプログラム・自己評価)開発を行った。今年度は自己評価票「看護QIプログラム・過程評価票、構造評価票」の洗練と、看護ケアの質評価・改善のための管理体制のモデル開発と啓蒙活動を行った。
研究方法
「看護QIプログラム・自己評価」、「看護QIプログラム・構造評価」を用いて自己評価を行い、その評価結果およびフォーカスグループインタビュー結果をもとに、質評価票の修正を行う。
質改善のための管理体制モデルを開発するために、これまで質評価を依頼した施設、質改善への取り組みをしていると紹介のあった施設、文献に報告されている施設から対象を選定し、また病院の設置主体別にそれぞれ1~2施設を選定した。調査を依頼し了解が得られた施設に対して、施設に出向いて聞き取り調査を行い、質評価・改善モデルの開発を行う。
結果と考察
自己評価を実施した施設は5施設21病棟で、その中から了解の得られた2施設29名の看護職を対象にフォーカスグループインタビューを行い、評価手順、設問、評価尺度、判定手順等について検討した。自己評価プログラムの改善の課題は、過程自己評価票では、①患者のいつの時点のことを答えるのか明確にすること、②選択肢の修正、等であった。構造自己評価票では、①得点の重み付けの再考、②評価尺度の設定の再考、などが改善点であることがわかった。
次に質改善への管理体制についての聞き取り調査を行った。これまでに本研究において看護ケアの質評価サーベイを実施した施設、質改善への取り組みをしていると紹介のあった施設から対象を選定し、病院の設置主体別にそれぞれ1~2施設となるよう選定した。各施設ごとに質評価活動をとの方法、ならびに質評価の結果を生かした改善への取り組みについて聞き取り調査し、その特徴を検討した。聞き取り調査のデータを分類した結果、次の6つの特徴に分類された。(1)「研修」への参加を通した人材の育成、(2)委員会活動を通して質改善の取り組み、(3)組織上のラインを活用した質改善の取り組み、(4)認定看護士など看護のスペシャリストを活用した質改善への取り組み、(5)病院間での相互質評価・改善、(6)質評価ツールを用いた事例分析を活用した質改善への取り組み。病院間での相互質評価・改善は、自己評価だけでなく、評価票を用いた第三者評価に近い形態で評価を行い、指摘された改善点を用いて改善の活動に活用していた。多くの施設で認定看護師などのスペシャリストを活用した質改善への取り組みが行われ、優れた成果をあげていた。特に感染管理、事故防止活動などの領域での活躍が顕著だった。事例分析を活用した取り組みでは、本研究で開発した過程自己評価表をもとにして独自の事例分析用評価表を開発し、それを用いて「ずれカンファレンス」という名称の事例分析会を行っている施設があった。質評価表のスタンダードと実践の間の「ずれ」を確認し修正、強化することで実践レベルでの質改善に成功したとの述べている。
質評価の結果を改善に活用するための管理体制については、今回の結果では改善テーマごとにプロジェクトチームを活用するプロジェクト型が確認されなかった。プロジェクト型の活動が機能するためには、組織を構成するメンバーの自律度が高いことが求められる。わが国における病院組織では、プロジェジェクト型よりむしろラインを活用した委員会型や研修型の質改善型が定着しやすいためではないかと思われる。質改善のための管理体制はまだ充分整備されているとはいえない状況と思われ、本聞き取り調査の結果を用いて今後質改善のための管理体制モデルを提案していきたい。
結論
今年度は自己評価表の洗練と、質改善のための管理体制モデルの探求について調査を行った。1.看護ケアの質自己評価表の改善点を明らかにした。2.看護ケアの質評価・改善のための管理体制の特徴は下記の6つが確認された。(1)「研修」への参加を通した人材育成、(2)委員会活動を通した質改善への取り組み、(3)組織上のラインを活用した質改善への取り組み、(4)認定看護師等の看護のスペシャリストを活用した質改善への取り組み、(5)病院間での相互質評価・改善活動、(6)事例分析を活用した実践レベルでの質改善への取り組みであった。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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