新たな歯科治療技法等による治療技術開発に関する総合研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101181A
報告書区分
総括
研究課題名
新たな歯科治療技法等による治療技術開発に関する総合研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
岩久 正明(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉英夫(日本歯科大学新潟歯学部)
  • 小口春久(北海道大学大学院歯学研究科)
  • 中村正明(大阪歯科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、研究開発が進められている新たな歯科治療材料技法等を総合的に検討・評価することにより、新しい治療体系の構築及び歯科治療の質の向上を図ることを目的として行うものである。
本研究では、すでにかなりの基礎的研究が進められてきた材料、技法について、その臨床応用の有用性を明らかにすることにより、現在おこなわれている治療内容を一層進歩させ、優れた歯科医療を国民へ提供することを可能とするために行われる。
・研究分担課題:「ウ蝕の感染組織の削除法について」従来の回転切削法での振動や騒音による患者の不快感が大きいため、その解決のために新しいアプローチが求められている。レーザーあるいはカリソルブといった、回転切削によらないう蝕除去法を検討する。
「新しい修復材及び修復技法について」CAD/CAM装置の機構ならびに材料について考究する。近年開発され研究の進んできた鋳造,重合あるいは焼成などの従来の歯科修復物作製方法における気泡や収縮などの問題点を改善するために,また,歯科材料の選択肢を多くして現在の修復用材料に替わる材料を適用可能とするために本研究が必要である。歯科修復物がCAD/CAMによって良好な再現性をもって容易に作製されるようになれば,従来の修復物作製法において見られた問題点が解決され,より良質な歯科修復物による治療が可能となる。「環境様ホルモン物質を含まない等、安全性が高い歯科材料の開発」高強度で生体親和性に優れるガラス繊維粒子を利用した新材料を開発する。これによって・汎用性があり、簡便な操作で長期にわたる生物学的安定性と機械的強度を有する材料が開発され、ウ蝕治療の充填材、シーラント材、合着材などの応用に期待される。「現在、臨床で使用されている材料及び研究途上の材料についての生体適合性のデータベースの構築と,新しく開発された材料の相対的評価」動物実験を大幅に削減できるばかりか、臨床試験の実施に対しても有力な情報を提供できると考えられる。「各種処置法の生体への安全性を調べるための病理組織学的研究」生体適合性の評価法の確立を期待する。「診断、治療における電子情報の臨床応用,普及の研究」歯科診療におけるデーターベースの構築や、情報の伝達システムをなどへの応用を検討する。「従来の各種修復材料の生体安全性についての検証」従来より用いられてきた修復材料の生体安全性についての検証が必要とされている。
研究方法
上記の研究課題を完成するために各研究者はそれぞれつぎのような具体的研究を行う。
[岩久、岡本]:レーザーを用いた削除法について、その削除効果(初年度)、硬組織及び軟組織への影響、殺菌効果(2年目)、疼痛や不快感の発生などについて明らかにしてその臨床応用(3年目)を計る。[黒崎]:ウ蝕患部溶解・削除法についてその効果(初年度)、患者への影響など(2年目)を検討し、臨床応用のためのシステムの確立(3年目)を計る。[小倉・宮崎]:種々のCAD/CAM装置について調査を行い,計測システムや切削加工システムの性能を比較するとともに,これらの装置を用いて各種修復物を作製し,各装置の切削加工効率や加工精度を評価・検討する〔初年度〕。さらに,各種CAD/CAM用材料の性質を評価するとともに,これらの材料を用いてCAD/CAMにより修復物を作製し,各材料のCAD/CAM加工における性能を評価,検討する〔2年目〕。以上の結果に基づき,実用に適するCAD/CAMの機構ならびにCAD/CAM用材料について考究し、臨床応用のためのシステムの開発を行う。[小口]:ガラス繊維強化型グラスアイオノマーセメントが口腔内で耐久性のある強度を有するかを検討する〔初年度〕。さらに、本材料の生体に'及ぼす影響を分子生物学的レベルで検索する〔2年目〕。安全性を確認した後、歯質との接省構造を解析し、臨床応用をはかる〔3年目〕。[中村]:咬合咀嚼機能の維持回復について各種修復材料の生体適合性をin vitroの環境で評価する技術を研究開発し、口腔内環境をシミュレートした動的環境下で抽出し,種々な細胞への影響を調べ,溶出挙動との関係を明らかにする.また,材料上での細胞の挙動を生化学的手法により解析する(初年度),生体適合性に関するデータベースを構築し(2年目)、その臨床応用のシステムを確立する〔3年目〕。[井上]:各種処置法の生体への安全性を調べるための病理組織学的研究を行う。[栗田]:診断、治療における電子情報の臨床応用,普及の研究を行う。[岡本]:従来より用いられてきた修復材料の生体安全性についての検証について、二年目より新たに追加する。
結果と考察
[岩久・黒崎]:レーザーを用いた削除法については、岩久は現在最先端の研究手法である細胞生物学的方法、免疫組織学的方法で生体への影響についての研究を行っており、切削効率並びに削除量の定量的分析についても発表を行った。さらに、新しい患部除去法についての意義は前項で述べたが、カリソルブはわが国のように高齢化が進み、高齢者の根面ウ蝕の増加した国情では臨床的にかなり有効な方法と考えられ、現在黒崎により臨床システム確立の研究が進められている。[小倉、宮崎]:種々のCAD/CAM装置の概要についての調査中を行い、CAD/CAM用材料としてチタン材料を用いた際の効率、コスト面の評価を行い、本年度のチタン学会において発表した。[小口]:ガラス繊維強化グラスアイオノマーセメントの長期耐久性に関して調べた。劣化および疲労特性は従来のグラスアイオノマーセメントと比較して有意に向上し、得に曲げ特性における劣化および疲労強度は、ガラス繊維を添加することにより、2倍以上になっていることが明らかになった。本結果は、昨年の歯科理工学会にて発表した。また、一昨年の結果は小児歯科学雑誌(39(5):1088~1094、2001)に掲載されている。[中村]:口腔内の動的環境を考慮した条件下で歯科用合金の生体適合性をin vitro環境において評価し、そのような状況を考慮した細胞毒性試験法の必要性を明らかにした。さらに,口腔粘膜などとの接触をも加味した条件下での生体適合性を評価するため、細胞培養環境下における貴金属系合金の溶出と細胞毒性の評価について実験を進めた。その結果、タンパク質や細胞の存在が歯科用合金の溶出に関係し,最終的に細胞にも影響を及ぼすことを明らかにした。さらに溶出に伴って生じた摩耗粉の細胞毒性評価の必要性も明らかになった。[井上]:関連する研究を行っており、すでに内外の学会誌において発表している。[栗田]:関連する研究を行っており、平成13年7月14日(土)~15日(日)、第42回日本歯科医療管理学会学術大会(大阪歯科大学楠葉学舎)において発表を行った。[岡本]:従来より用いられてきた修復材料の生体安全性についての検証を行うため、内
外の資料を収集中である。
結論
二年目の本年は、国民に時代の進歩にそった良質な医療を提供し、現代の多様化するニーズに答えることを目的として、近年開発されてきた新たな歯科治療技法並びに材料等による治療技術法、安全性等を検討再評価することにより、新しい治療体系の構築及び歯科治療技術の質の向上を図るとともに、これらの効果的な臨床応用に際して電子情報の普及・活用を計るためのシステムを確立する研究を引き続き行った。

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