健康文化のまちづくり推進に関する政策科学的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200101008A
報告書区分
総括
研究課題名
健康文化のまちづくり推進に関する政策科学的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
山根 洋右(島根医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 杉村 巌(旭川厚生病院)
  • 林 雅人(平鹿総合病院)
  • 丸地信弘(やどかり研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
-
研究終了予定年度
-
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域を重視し自主的かつ総合的な自治体行政を掲げる"新地方自治法"(2000・4・1施行)を皮切りに、地方自治権も住民に直接責任を持つ地域自治行政へ大幅に移され、 "自治体国際活動"も活性化し、足下からのグロバリゼーションに対応している。このような激しい国際的国内的行政改革を背景として、健康文化のまちづくりは大きな地方行政の焦点となっている。第3年度の共同研究では、健康文化・健康福祉のまちづくりを展開するため、各研究者(北海道、秋田、長野、島根)のフィールドモデル市町村で集約された課題を中心に、その問題解決の方法を検討し、全国への波及化Disseminationを図るため、「健康文化のまちづくりツールキット2002」を作成することを目的とした。
研究方法
共同研究者の担当市町村は、日本列島を縦断する形で設定し、いずれも30-50年、研究者の支援協力により、成果をあげているフィールドを決定した。また、市町村合併や行政の広域化の動向も配慮して、隣接する小規模町村と大規模市を包括してアプローチした。 対象市町村は、北海道では旭川市および鷹栖町、秋田県では横手市および増田町、長野県では松本市および朝日村、島根県では出雲市および佐田町である。調査法は、市町村スタッフ、住民リーダーなどと討論、参加行動調査研究を行った。調査内容は、健康文化のまちづくりの課題、住民参加とエンパワーメント政策、保健医療福祉の一体化と効果的サービス政策、社会的諸資源やマンパワーの品質管理、支援システムに関する政策の在り方などである。調査結果をもとにワークショップ方式により、モデル市町村の健康文化のまちづくりで効果的であった戦略、方法論、考え方、技法などを集約し、「健康文化のまちづくりツールキット2002」として集約した。また、市町村行政と厚生連病院、あるいは大学について支援協力体制の効果的なあり方、Health Promoting Hospital、Health Promoting University、Community-Academy Collaboration機能を検討した。
結果と考察
I 健康なまちづくりフィールド・モデル調査
1.北海道(杉村 巌、他)、2.秋田県(林 雅人、他)、3.長野県(丸地信弘、他)、4.島根県(山根洋右、他)の健康文化のまちづくりについて、別稿報告書に記述したごとく、成功要因、阻害要因、発展のための戦略戦術、方法論と技法について調査を行った。
II ワークショップ方式による健康文化のまちづくりの課題整理とその集約
住民、行政スタッフ、研究者など関係者の参加のもとに、ワークショップを行い、健康文化のまちづくりの課題整理とその集約を行った。
1)健康なまちプロフィールについて
2)健康なまちづくり活動システムについて
3)健康なまちづくりプログラムについて 
4)健康なまちづくり情報システムについて
5)健康のまちづくり政策作成システムについて
6)健康のまちづくり住民参加システムについて
7)健康のまちづくりエンパワーメントについて
8)健康のまちづくりサービス総合評価について
9)サービスの品質管理について
10)その他、明らかになった改善点について
III モデルコミュニティ調査による健康文化のまちづくり解決課題への対策
住民参加の視点から、モデル市町村における解決課題の対策を次のように整理し、提起した。
・行政部局内部のセクショナリズムの解消と横断的包括的サービス開発
・継続的評価とそのモニタリングシステム
・計画の修正と効果判定と経済比効果分析
・政策立案者及びサービス提供者の力量形成と質の保障
・計画推進の質的量的データベースの構築
・地域計画(健康、医療、福祉、教育、道路、建築、環境、景観、産業など)の政策形成に関する学際的研究とノウハウの蓄積
・計画策定の調査研究および策定委員会への住民の主体的参加(Participatory Action Research)
・教育、マンパワー養成などコミュニティエンパワーメント
・総合発展計画と重層的計画構成、その摺り合わせ、優先性の確定
・サービスへのアクセス、情報と内容の質
・本計画に対する代替え案、修正案、補強案の用意
・効果的施策推進のための予算計画と行政トップ、議会の意思決定プロセス
・財政基盤と社会的資源の正確な評価
・行政、住民、関係スタッフのニーズ対応協働活動計画
・費用ー効果分析評価視点とその方法の確定
・ニーズとアクションの「ずれ」の発見とモニタリング
・コミュニティケア過程の記録の確保
・行政エンジニアリングの手法の導入
IV ワークショップ方式による健康文化のまちづくりのツールキット作成
最終年度にあたり、研究調査活動をワークショップ方式で集約し、健康文化のまちづくりの枠組み、標的、技法、参考となる概念などを、マニュアル化し、ツールキットとして希望者にフロッーピーを希望に応じて提供し、普及化Disseminationを試みた。
V 今後の健康文化のまちづくり研究の課題リスト
変貌する市町村に対応し、今後、住民・行政・研究者の協働作業として、実践活動を進めながら進めるべき健康文化のまちづくり研究の緊要な課題リストを36項目作成した。
結論
日本における地方中核都市及び隣接する町村を対象に、共同研究者が40-50年継続して健康なまちづくりを支援しているモデル町村を対象に、そのシステムづくり、ダイナミズムづくりの共通課題と方法を明らかにした。地方分権の動きを背景として、市町村自治体の健康文化のまちづくりは重要な命題となっており、行政評価の時代と言われるなかで、科学的な計画、事業、活動の評価方法の開発や導入、さらに「コミュニティ・プロフィール」、「政策形成システム」、「活動システム」、「活動プログラム」、「住民参加システム」、「エンパワーメント・システム」、「サービス総合評価」「サービスの品質管理」などを確立することが焦眉の課題と考えられる。

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