安全なワクチン確保とその接種方法に関する総合的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100990A
報告書区分
総括
研究課題名
安全なワクチン確保とその接種方法に関する総合的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
竹中 浩治(財団法人・予防接種リサーチセンター理事長)
研究分担者(所属機関)
  • 平山宗宏(日本子ども家庭総合研究所)
  • 倉田毅(国立感染症研究所)
  • 岡部信彦(国立感染症研究所)
  • 神谷齊(国立療養所三重病院)
  • 富樫武弘(市立札幌病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は安全なワクチンの確保とその接種方法に関する研究を総合的に行い、感染症の予防によって国民の健康を守り、世界の感染症対策に貢献することを目的とする。
研究方法
全国のワクチン・予防接種に関する、基礎医学、臨床医学、疫学、ワクチン製造の研究者、各地域における予防接種事業の指導的立場の臨床医の協力を得て、ワクチン研究と臨床研究をコーディネートした形で実施した。初年度の本年は、まず書類によって研究協力者との情報交換を行い、研究及び調査結果の報告を得た上で年度末に全員の出席を求めて総会を開催した。すなわち、全国各地域の臨床的・疫学的情報を収集し、ワクチン関連の基礎研究者を含む専門学者による検討を行い、またワクチンや予防接種に関する最新の知見を全国の各地域の臨床・疫学研究者に伝え、現在直面している諸問題を解決に導くための検討を行った。
本研究では、ワクチン開発のための治療研究は行わず、調査等の臨床面は十分なインフォームドコンセントのもとに行う。動物実験は通常の安全性検査等の検定と同等な範囲で、小動物を用いて行う。したがって臨床上も実験上も倫理面での問題は生じない。
結果と考察
ワクチン副反応要因とその除去に関する研究では、ゼラチンアレルギー患児のHLAの解析からその特性が示され、BCGとDPTワクチンの同時接種によるDPTワクチンの局所アレルギー反応の軽減の可能性が示された。変異コレラ菌毒素をアジュバントとしたインフルエンザ不活化ワクチンの経鼻噴霧の有効性が示され、実用化が期待できる。現行麻疹ワクチンは流行株に対しても有効であるが、必要があれば流行株ウイルスのH蛋白領域をワクチンウイルスに組み込むことにより流行株に対応できることが示された。また、血中抗体測定法について検討され、正確性向上のための提言がなされた。
ワクチン改良の必要性に関する臨床疫学的研究では、麻疹流行の被害を防ぐために麻疹ワクチンの接種率を上げ、かつ1歳に達したら早い時期に接種を受けるよう勧奨することが要望された。予防接種全体の接種率向上も図るために、母子健康手帳の改訂に反映させた。中学生年代での風疹予防接種率がきわめて低く、妊娠期待年齢の風疹抗体保有率の低いことから、風疹ワクチン接種の推進が要望され、予防接種法の一部改訂に際して中学卒業生でも受けられるように経過措置がとられた。ポリオは、生ワクチンを不活化ワクチンに切り替えるべき時期にきており、このための措置を早急に検討すべきことが提議された。
ワクチンの接種対象と接種方法のあり方に関する研究では、ハイリスク児に対する予防接種の注意として、熱性痙攣児への接種基準が取りまとめられ、ワクチン接種後の発熱に際しては早期にdiazepam 座剤を用いることが勧告された。インフルエンザワクチンの1回接種の効果については、80歳以上や糖尿病、経口ステロイド長期服用患者の中に抗体上昇が不十分な症例が認められたが、学童、成人、高齢者別では抗体レスポンスに明らかな差を認めなかった。成人の百日咳が感染源となる危険性があることから、年長児、成人へのDPTワクチン接種が試みられ、安全性と効果が確認された。不活化ポリオワクチンの経鼻接種の動物実験も試みられた。インフルエンザb菌(Hib)については、わが国でもワクチン採用が検討された。また、バイオテロ対策から痘瘡ワクチンの再生産と接種時の反応について報告された。接種方法の検討では、針付きプラスティック容器の「ユニジェクト」の試製(ポリオ不活化ワクチン)と、「pre-filled型注射器」(DPT、日本脳炎、破傷風トキソイド)の検討について報告された。これらは針刺し事故の予防、薬剤取り違えの予防、再利用防止などの安全性や能率のよさ、医療用器具廃棄物の減量化等に役立つ。
ワクチンの意義と品質への理解を高めるための健康教育に関する研究では、接種率を高めるための工夫が論議された。北海道では道庁から各市町村へ接種率の確認と接種勧奨が出されたが、全国的に親子への健康教育とマスコミの理解が求められる。また、県内を通じての予防接種広域化(相互乗り入れ方式)を可能にした山口県方式の経緯が報告された。
結論
不活化インフルエンザワクチンの経鼻噴霧方式実用化と、DPTとBCGの同時接種によるアレルギー性局所反応軽減の可能性が示され、麻疹と風疹ワクチン接種率の向上、ポリオ予防方策の転換の必要性が指摘された。熱性痙攣児へのワクチン接種基準、インフルエンザワクチンの1回接種による有効性が報告され、Hibワクチン導入の意義が議論された。住民、児童生徒、マスコミへの健康教育の普及は接種率向上のために重要であり、全国での取り組みが報告された。有効な方式を検討していく。

公開日・更新日

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