文献情報
文献番号
200100795A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患に係わる胎内・胎外因子の同定に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
森川 昭廣(群馬大学医学部)
研究分担者(所属機関)
- 宮地良樹(京都大学医学研究科)
- 近藤直実(岐阜大学医学部)
- 大田健(帝京大学医学部)
- 古川漸(山口大学医学部)
- 池澤善郎(横浜市立大学医学部)
- 柴崎正修(筑波大学医学部)
- 小田嶋 博(国療南福岡病院)
- 徳山研一(群馬大学医学部)
- 荒川浩一(群馬大学医学部)
- 吉原重美(獨協医科大学)
- 佐々木聖(ささきアレルギー科クリニック)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫アレルギー等研究事業(免疫・アレルギー等研究分野)
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
昨年度において、当研究班では、アレルギー疾患患者増加に鑑み、遺伝的要因を含む胎内における因子と出生後の発症に及ぼす環境因子(胎外因子)を解明することを目的として検討し、一定の成果を上げてきた。本年はさらにそれをおしすすめ、アレルギー的または免疫的側面と、非アレルギー的側面である臓器過敏性について検討した。
研究方法
1)アレルギー的側面の検討:遺伝学的検討(家系による全ゲノム解析。遺伝子多型ならびに変異の検討)。胎内因子と追跡調査(羊水、母体血、臍帯血、母乳中の各種因子測定と、その後のアレルギー疾患発症の追跡調査)。疫学調査による胎内・胎外因子の解明。
2)非アレルギー的側面の検討:気道炎症と気道過敏性に係わる胎内・胎外因子の解明(乳幼児喘息、マウス喘息モデルによる検討)、皮膚バリア障害の病態解明と発症に係わる因子の解明(ブドウ球菌との関連)。
2)非アレルギー的側面の検討:気道炎症と気道過敏性に係わる胎内・胎外因子の解明(乳幼児喘息、マウス喘息モデルによる検討)、皮膚バリア障害の病態解明と発症に係わる因子の解明(ブドウ球菌との関連)。
結果と考察
(1)アレルギー的側面に係わる因子
1)カモガヤ花粉症に連鎖した遺伝子座において新たな特異的な領域は9q34.3で、気管支喘息の遺伝子座と概ね共通するものであった。2)末梢血単核球で、IL-12、IL-18、PHAの刺激によりIFN-gammaが十分に産生されない症例において、IFN-gammaの産生量の低下が遺伝子発現レベルで起こっている可能性が明らかとなった。3)stat6エクソン1におけるGT繰り返し配列の多型は、小児気管支喘息と関連を認めたが、成人喘息ではコントロール群と差はなく、成人喘息では遺伝因子より環境因子が強いことが疑われた。4)アレルギー疾患では、患者血漿中のTARCとMDCは、健常者に比較して有意に高値を示し、アレルギー疾患の新たなマーカーと考えられた。臍帯血ではTARCおよびMDCともに高値を示した。5)アレルギー発症例の母乳中(1ヵ月時)TGF-β1は、平均2.2才時の追跡調査では、非発症例に比し有意に低値であり、母乳中のTGF-β1は乳幼児期早期のアレルギー発症を抑制する可能性を示唆した。6)血清IgE値では、250IU/mlを境として喘息の予後と関連を認めた。子供の喘息の発症率は父親に喘息がある場合より母親に喘息がある場合に高く、母親由来の因子が関与する可能性を示唆している。
(2)非アレルギー的側面に係わる因子
7)乳幼児喘息群では、初回喘鳴群と比較してMMP-9およびECPは高値を示した。また、MMP-9とECPでは有意な相関を認め、乳児期から気道炎症による気道リモデリングが誘導される可能性が示唆された。8)マウス喘息モデルで、特異抗体および気道過敏性は成熟マウス少量投与群>幼若少量投与群≒成熟大量投与群≫幼若大量投与群で、抗原量や年齢により感作、気道反応に違いが生じる可能性を示唆した。9)マウス喘息モデルで、IGF-I中和抗体は気道過敏性亢進を有意に抑制し、ICAM-1の発現も抑制した。IGF-1が接着分子を介して好酸球浸潤を増強し、気道炎症惹起に関与している可能性が考えられた。10)アトピー性皮膚炎患者の皮膚表面から分離されたブドウ球菌の70%以上は黄色ブ菌で、それ以外のブ菌も、各種薬剤に対する感受性の低下や多剤耐性菌の検出頻度が高かった。アトピー性皮膚炎の皮膚症状や皮膚バリア傷害を考える上で、皮膚表在菌の果たす役割を考える必要があることが示唆された。11)アトピー性皮膚炎モデルマウスでは、酸化チタンによる光触媒反応は無処置群と比較して、皮疹の発症が早まるとともにその程度も著しく、黄色ブ菌数の増加を早く認められた。一方、白色ワセリン処置群では皮疹の出現時期が遅く程度も軽度で、治療におけるスキンケアの有用性が示された。
1)カモガヤ花粉症に連鎖した遺伝子座において新たな特異的な領域は9q34.3で、気管支喘息の遺伝子座と概ね共通するものであった。2)末梢血単核球で、IL-12、IL-18、PHAの刺激によりIFN-gammaが十分に産生されない症例において、IFN-gammaの産生量の低下が遺伝子発現レベルで起こっている可能性が明らかとなった。3)stat6エクソン1におけるGT繰り返し配列の多型は、小児気管支喘息と関連を認めたが、成人喘息ではコントロール群と差はなく、成人喘息では遺伝因子より環境因子が強いことが疑われた。4)アレルギー疾患では、患者血漿中のTARCとMDCは、健常者に比較して有意に高値を示し、アレルギー疾患の新たなマーカーと考えられた。臍帯血ではTARCおよびMDCともに高値を示した。5)アレルギー発症例の母乳中(1ヵ月時)TGF-β1は、平均2.2才時の追跡調査では、非発症例に比し有意に低値であり、母乳中のTGF-β1は乳幼児期早期のアレルギー発症を抑制する可能性を示唆した。6)血清IgE値では、250IU/mlを境として喘息の予後と関連を認めた。子供の喘息の発症率は父親に喘息がある場合より母親に喘息がある場合に高く、母親由来の因子が関与する可能性を示唆している。
(2)非アレルギー的側面に係わる因子
7)乳幼児喘息群では、初回喘鳴群と比較してMMP-9およびECPは高値を示した。また、MMP-9とECPでは有意な相関を認め、乳児期から気道炎症による気道リモデリングが誘導される可能性が示唆された。8)マウス喘息モデルで、特異抗体および気道過敏性は成熟マウス少量投与群>幼若少量投与群≒成熟大量投与群≫幼若大量投与群で、抗原量や年齢により感作、気道反応に違いが生じる可能性を示唆した。9)マウス喘息モデルで、IGF-I中和抗体は気道過敏性亢進を有意に抑制し、ICAM-1の発現も抑制した。IGF-1が接着分子を介して好酸球浸潤を増強し、気道炎症惹起に関与している可能性が考えられた。10)アトピー性皮膚炎患者の皮膚表面から分離されたブドウ球菌の70%以上は黄色ブ菌で、それ以外のブ菌も、各種薬剤に対する感受性の低下や多剤耐性菌の検出頻度が高かった。アトピー性皮膚炎の皮膚症状や皮膚バリア傷害を考える上で、皮膚表在菌の果たす役割を考える必要があることが示唆された。11)アトピー性皮膚炎モデルマウスでは、酸化チタンによる光触媒反応は無処置群と比較して、皮疹の発症が早まるとともにその程度も著しく、黄色ブ菌数の増加を早く認められた。一方、白色ワセリン処置群では皮疹の出現時期が遅く程度も軽度で、治療におけるスキンケアの有用性が示された。
結論
アレルギー疾患におけるアレルギー的側面と非アレルギー的側面である臓器過敏性の獲得に分け、最新の知見をもとに、疫学的調査を含め、遺伝学的、免疫学的手法、さらに分子生物学的手法を用い、それに係わる胎内・胎外因子の検討を行った。今年度の研究で、アトピー候補遺伝子がいくつか見出され、また、疫学的調査では気管支喘息に関して母親からの伝播が疑われた。胎児期および母乳を介したサイトカインやケモカインの曝露もアレルギー疾患発症に関与している可能性が示された。非アレルギー的側面としてが、乳児期より気道炎症が存在し、気道過敏性亢進に関与し、また、その進展に増殖因子が関与していることが示唆された。アトピー性皮膚炎では黄色ブドウ球菌が、その発症と増悪に関与し、その対策も重要であることが考えられた。本研究のように、非アレルギー的側面から、アレルギー疾患の発症要因を検討した研究は少なく、アレルギー疾患の原因解明および治療にもつながる意義深いものに発展することが期待される。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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