HIV感染症の治療に関する研究(治療ガイドラインを含む)

文献情報

文献番号
200100732A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の治療に関する研究(治療ガイドラインを含む)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一(国立国際医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 満屋裕明(熊本大学第2内科)
  • 松岡雅雄(京大ウイルス研感染免疫)
  • 滝口雅文(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 桑原健(国立大阪病院薬剤科)
  • 下山孝(兵庫医大第4内科)
  • 中村哲也(東大医科研感染免疫内科)
  • 安岡彰(国立国際医療センター)
  • 松下修三(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 西村浩一(京都桂病院呼吸器センター)
  • 太田康男(東京大学感染症内科)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 エイズ対策研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
87,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染症に対する治療は進歩したとはいえ、完成されたといえる段階ではない。本研究の目的は、現在の治療法をさらに改善し、よりよい治療法を確立していくことにある。
研究方法
この目的の達成のため、本研究は4部門(in vitro, ex vivo, in vivo, evaluation)よりなる。昨年同様in vitroでは新薬の開発、ex vivoでは血中濃度測定、CTL判定法の開発と臨床応用、in vivoでは種々の新しい治療の試みがなされ、evalutionでは治療効果の評価系を確立し、治療により患者のQoLが改善されたことを確認する。そして最終的には本研究で確認されたそれらの成果を、従来からの治療ガイドラインに付記し実際の臨床現場において具体的に必要な情報を盛り込んだ包括的なものとしていく。ガイドラインは、昨年度までのものを基本とし、母子感染、小児と薬剤情報を書き加えていく。
結果と考察
1)in vitro(満屋、松岡):昨年度は、満屋がCCR5 antagonist, 松岡が4'-RTIの治療薬としての可能性について検討してきた。今年度は、満屋らはさらにMIP-1aのantagonistの中から抗HIV-1作用の強いものを見いだした。現在ケモカインとしての活性を示さず抗ウイルス作用の強いものにつき検討を進めている。また、多剤耐性ウイルスにも抗ウイルス活性を示す新規PIを開発した。松岡は、昨年開発した4'-RTIの開発を更に進めたが、毒性の問題が残った。このため今年度は、この系列の薬剤の将来の可能性を考え、この系列の薬剤の作用機序及び耐性機序に関する検討を行った。新しい抗ウイルス薬としては、GP41結合ペプチドによるfusion inhibitorを見いだした。このペプチドは、既存のT20に対する耐性を示すウイルスに対しても抗HIV活性を示した。
2)ex vivo(桑原、滝口): 桑原は、日本人における種々の投与法における種々の薬剤血中濃度の検討を行った。また、全国のどの施設からでも血中濃度が測定できるように血中濃度依頼に関するHomePageを立ち上げた。斑の総括として岡は、PI6剤とEFVを同時に測定できる7剤同時測定計を完成させ、HPLCの使用できる施設に於いては自施設で血中濃度が測定できるようにした。滝口は、日本人に多いHLAに関するペプチドテトラマーを作成し、日本人の90%以上をカバーするライブラリーを作成した。この手法を用い、IL-2による免疫療法の患者におけるCTLを解析したが、IL-2投与によりわずかに増加したウイルスにCTLは鋭敏に反応していることを見いだした。
3)in ivov(岡、安岡、松下): Apheresis療法は、明確な有効性が見いだせず昨年度で中止した。IL-2療法に関しても、患者数の関係から分担研究者を中村から岡に変更した。間欠的IL-2投与は、予想以上のCD4の上昇と維持を見せた。最も先行している例では、予定の3クール終了後9ヶ月を経過した現在もCD4>1200を維持している。安岡は、初感染患者に対するSTI療法を開始したが、1年で19例の症例を登録した。先行する例では既に5回の計画的中断を終了し観察期間に入っている。現在までウイルスのリバウンドは見られていない。その他、いくつかの治療法に関するretrospective studyを行った。LPV/rを用いたsalvage療法中に新しい副作用として2例の重篤な不整脈を見い出し、健康被害情報として報告した。松下は、全国の患者数が少ない施設におけるsalvage療法をスムーズに行うために治療法相談のためのHomePageを立ち上げた。班の総括として岡は、salvage療法に入る患者の治療薬選択に有用な情報を与える新しいphenotypic resistance assayを開発した。また、松下は、HAART療法治療経過中のprovirus量に関する綿密な解析を行った。
4)evaluation(西村、太田、中村): 西村は、HAART療法により延命のみならず患者のQoLがどの程度改善したのかを継続調査している。今年度は、新たにFAHIの翻訳許可を得て全国の患者465人に対し本調査の妥当性の検討を行った。結果は、昨年行ったMQoL-HIVをほぼ同等の結果を得た。太田は昨年単独で、ガイドラインの作成を行ったが、量的に膨大であるため、発行に遅れを生じた。このため本年度は、中村も加わり、今年の改訂項目のうち、STIと母子感染を中村が、小児と薬剤情報を太田が分担し行なった。
結論
HAART療法が可能になり5年目にはいるが、耐性ウイルスの出現や長期投与に伴う副作用など新たな問題点も生まれつつある。これらの問題点を解決しよりよいHIV感染症治療法確立を共通の目的としてin vitro, ex vivo, in vivo, evaluationの4つの柱からなる、班員相互の綿密な共同研究にて班研究を行った。本年度は、新しい機序の新薬の開発や新たな免疫療法として計画的治療中断療法も始まった。また、薬剤血中濃度測定やsalgave therapyに関し全国からの相談が受けられるようにHome Pageも開設した。QoLの大規模全国調査も行われ、ガイドラインも迅速に改訂ができた。

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