文献情報
文献番号
200100597A
報告書区分
総括
研究課題名
痴呆性高齢者を対象とした新規在宅支援サービスの開発
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
今井 幸充(日本社会事業大学大学院)
研究分担者(所属機関)
- 池上直己(慶応大学医学部医療政策管理学教室)
- 外山義(京都大学大学院工学研究科)
- 長島紀一(日本大学文理学部心理学科)
- 永田久美子(高齢者痴呆介護研究・研修東京センター)
- 新名理恵(東京都老人総合研究所精神医学部門)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 21世紀型医療開拓推進研究(痴呆・骨折研究分野)
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国の人口高齢化は、高齢者医療・福祉・保健分野の処遇に大きな変革をもたらした。特に痴呆性高齢者は、その疾患の特異性から、在宅介護の支援が病初期から不可欠であり、中でも訪問介護・看護サービス、デイサービス、ショートスティは現在最も多く利用されているサービスである。しかし、これらのサービスが利用者のニーズを満たした介護保険制度の理念を目指すサービスであるかは疑わしい。そこで、本研究は痴呆性高齢者とその家族へ新たな在宅支援サービスを展開することを目的に、現状における在宅支援サービスの有効性評価と同時に、サービスの担い手と受け手の双方から出された新たな在宅支援サービスの要望を検証し、実証的に評価する。本研究の遂行に伴い、現在の痴呆性高齢者に対するサービスの主観的評価や、家庭介護者の負担、経済効果、環境評価などが包括的に明らかにされると同時に、新規サービス展開を具体的に提言できる。また新規サービスが提供されることにより、痴呆性高齢者のQOLの維持・向上、家族介護者の負担軽減が達成されるばかりか、在宅介護の継続を支援し、結果的に施設入所を遅らせる経済効果も期待できる。
研究方法
平成13年度は、新規居宅介護サービスの開発に必要なデータを収集するために、①介護者のQOL、②介護サービスの経済効果、③介護教育、④介護負担軽減効果、⑤介護環境、⑥既存サービスの満足度、の6つの側面から基礎研究を行った。
介護者のQOLに関する研究では、家族介護者が被介護者を痴呆と認識することで彼らのQOLに関与するか否かを青森県の4か所111名、神奈川県内の3か所144名を対象に調した。新規介護サービスの経済効果予測に関する研究では、介護の社会的費用と被介護者の状態による介護負担感・充実感の違いやサービス利用現状の特徴を明らかにするため、アルツハイマー型痴呆患者78名の介護時間を介護のみに費やす時間(専念時間)とそれ以外のことも同時におこっている時間(非専念時間)に分けて調査した。家族介護者のケア教育に関する研究では、新規在宅支援サービスに求められるサービス内容および人材育成のあり方を探るために、家族介護者と在宅介護支援者各々10名を対象に半構造面接調査を実施した。家族介護者の介護負担軽減効果の研究では、町田市の在宅主介護者294人を対象に介護保険施行前調査(2000年3月~5月)と施行後調査(2001年2月~3月)の2回調査した。在宅と施設における痴呆性高齢者の生活環境の研究では、痴呆性高齢者の生活の質を在宅と施設で比較する為、同一地域の在宅痴呆性高齢者19人とADLが同程度の養護老人ホーム入居者8人の生活調査を行った。痴呆性高齢者の新規在宅支援サービス開発のための在宅サービス実態調査では、要支援・要介護と認定された在宅痴呆性高齢者の主介護者を対象に、サービスの満足感、問題点、および要望に関して訪問面接調査を実施した。
介護者のQOLに関する研究では、家族介護者が被介護者を痴呆と認識することで彼らのQOLに関与するか否かを青森県の4か所111名、神奈川県内の3か所144名を対象に調した。新規介護サービスの経済効果予測に関する研究では、介護の社会的費用と被介護者の状態による介護負担感・充実感の違いやサービス利用現状の特徴を明らかにするため、アルツハイマー型痴呆患者78名の介護時間を介護のみに費やす時間(専念時間)とそれ以外のことも同時におこっている時間(非専念時間)に分けて調査した。家族介護者のケア教育に関する研究では、新規在宅支援サービスに求められるサービス内容および人材育成のあり方を探るために、家族介護者と在宅介護支援者各々10名を対象に半構造面接調査を実施した。家族介護者の介護負担軽減効果の研究では、町田市の在宅主介護者294人を対象に介護保険施行前調査(2000年3月~5月)と施行後調査(2001年2月~3月)の2回調査した。在宅と施設における痴呆性高齢者の生活環境の研究では、痴呆性高齢者の生活の質を在宅と施設で比較する為、同一地域の在宅痴呆性高齢者19人とADLが同程度の養護老人ホーム入居者8人の生活調査を行った。痴呆性高齢者の新規在宅支援サービス開発のための在宅サービス実態調査では、要支援・要介護と認定された在宅痴呆性高齢者の主介護者を対象に、サービスの満足感、問題点、および要望に関して訪問面接調査を実施した。
結果と考察
本研究は、わが国の生活習慣や家族観などに適した日本型在宅介護支援サービスを新規構築することを目的とするが、13年度はこれまでの展開されてきた在宅介護支援が痴呆性高齢者やその家族介護者のニーズを十分に満たしているか否かを多角的に検証した。まずは、痴呆性高齢者の在宅介護の現状を調査し、家族介護者のQOLを構成する要因を明らかにすると同時に、介護にかかわる経済的負担やその他の負担感の研究、そして介護者への適切な教育のあり方について検証した。結果から、家族が被介護者の痴呆を自覚することで、被介護者の状態がどのような状態であろうと、QOLを構成する要素の一つである「現在の満足感」が有意に劣ることがわかった。また、在宅痴呆性高齢者の社会的費用は平均32.7万円(最小27.0万円、最大40.3万円)で、痴呆が重症になるに従って高額となった。痴呆性高齢者の家族介護者は、非痴呆の介護者に比較して介護負担感が大きにもかかわらずサービス利用額・利用率が低いことから家族介護者へ効果的な介入が必要であることが明らかとなった。このように、痴呆性高齢者の介護は、家族に心身面あるいは経済面に大きな負担をもたらすことから、家族への十分な支援は欠かせない。そのためにも専門介護職員が適切な介護支援を提供し、家族の介護負担の軽減に寄与することが求められている。そこで専門介護者が求められる痴呆ケアの理念とは「受けとめケア」「共感ケア」そして「合理的ケア」であり、その遂行にあたっては、均一なサービス内容と質の高い教材を確保すること、同時に家族および関係職種との介護協働チームによるネットワークづくりが求められている。
家族介護者の介護支援に通所サービス、訪問介護サービスそして短期入所サービスなど、さまざまなサービスが展開されているが、2001年度版図解高齢者白書は介護保険制度が施行されてから特別養護老人ホーム入所待機者数が急増し、利用者の施設志向の動向が目立つことを指摘している(宮武剛)。その要因について明らかにすることは重要であるが利用者にとって満足な在宅サービスが展開されていない可能性も推測できる。そこで平成13年度の本研究では、介護サービスの実態を、介護環境、家族介護者負担感軽減効果、在宅サービス利用状況の3つの側面からから明らかにすることを試みた。
結果から、施設は、在宅に比較すると生活維持時間が極端に短く、これらの時間は入所者の主体性に欠ける休息型余暇時間に置き換わっていることがわかった。つまり、施設では、例えば食事を作る能力を持つ入居者でも「食事準備」行為がほとんど生じないことで生活維持行為時間を減少させているが、この時間を積極的余暇や交流・交際などでなく、ただベッドに横たわって過ごす時間に換わってしまう。それゆえ、いかなる環境でも痴呆性高齢者主体の生活様式を組み立てることが重要といえる。
介護保険下での在宅サービスが利用者のニーズに適した必要かつ十分なものであるかを検証するために、介護保険制度施行前後に町田市で、また東京都とその近郊の「ぼけ老人を抱える家族の会」介護者を中心に在宅サービスの満足度さらには新しいサービスへの要望についての面接調査を行った。前者では、家族介護者のストレスは介護保険制度が施行されても軽減されず、その理由として現行の制度やサービスは在宅介護の実態に合わず、自由度が少なく利用しにくい、などの問題点が挙がり、また痴呆性高齢者に不利益などことも指摘された。後者の面接調査では、現状の在宅サービスに加えて、いつでも必要に応じ対応してくれる共感的サポートに主眼を置いた、個別対応と柔軟性のある質の高いサービスが必要であることが明らかになった。
家族介護者の介護支援に通所サービス、訪問介護サービスそして短期入所サービスなど、さまざまなサービスが展開されているが、2001年度版図解高齢者白書は介護保険制度が施行されてから特別養護老人ホーム入所待機者数が急増し、利用者の施設志向の動向が目立つことを指摘している(宮武剛)。その要因について明らかにすることは重要であるが利用者にとって満足な在宅サービスが展開されていない可能性も推測できる。そこで平成13年度の本研究では、介護サービスの実態を、介護環境、家族介護者負担感軽減効果、在宅サービス利用状況の3つの側面からから明らかにすることを試みた。
結果から、施設は、在宅に比較すると生活維持時間が極端に短く、これらの時間は入所者の主体性に欠ける休息型余暇時間に置き換わっていることがわかった。つまり、施設では、例えば食事を作る能力を持つ入居者でも「食事準備」行為がほとんど生じないことで生活維持行為時間を減少させているが、この時間を積極的余暇や交流・交際などでなく、ただベッドに横たわって過ごす時間に換わってしまう。それゆえ、いかなる環境でも痴呆性高齢者主体の生活様式を組み立てることが重要といえる。
介護保険下での在宅サービスが利用者のニーズに適した必要かつ十分なものであるかを検証するために、介護保険制度施行前後に町田市で、また東京都とその近郊の「ぼけ老人を抱える家族の会」介護者を中心に在宅サービスの満足度さらには新しいサービスへの要望についての面接調査を行った。前者では、家族介護者のストレスは介護保険制度が施行されても軽減されず、その理由として現行の制度やサービスは在宅介護の実態に合わず、自由度が少なく利用しにくい、などの問題点が挙がり、また痴呆性高齢者に不利益などことも指摘された。後者の面接調査では、現状の在宅サービスに加えて、いつでも必要に応じ対応してくれる共感的サポートに主眼を置いた、個別対応と柔軟性のある質の高いサービスが必要であることが明らかになった。
結論
痴呆性高齢者のための新規居宅サービスを開発するために、平成13年度は、介護者のQOL、経済的負担、教育、介護負担、環境、および既存サービスへの満足度に関する5つの研究を実施し、どのような新規居宅サービスが望まれるか、その内容を検討した。
結果から、介護者および被介護者が現状の生活に満足でき、経済的負担が少なく、専門職員による質の高い介護技術が提供されるサービスが望まれている。サービス内容は、家庭的な雰囲気であること、痴呆に冒されても常日頃の生活を営むことができること、均質で柔軟性があること、介護者に心的サポートを提供できることが望まれる。このようなことから、新規サービスを提供する場合、その理念として「充分な心理的サポートによって介護者・被介護者の満足感を高め、その結果彼らがエンパワメントされるような個別的サービス」でなければならない。
結果から、介護者および被介護者が現状の生活に満足でき、経済的負担が少なく、専門職員による質の高い介護技術が提供されるサービスが望まれている。サービス内容は、家庭的な雰囲気であること、痴呆に冒されても常日頃の生活を営むことができること、均質で柔軟性があること、介護者に心的サポートを提供できることが望まれる。このようなことから、新規サービスを提供する場合、その理念として「充分な心理的サポートによって介護者・被介護者の満足感を高め、その結果彼らがエンパワメントされるような個別的サービス」でなければならない。
公開日・更新日
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