骨粗鬆症治療薬に対する反応性決定遺伝子の同定と臨床応用

文献情報

文献番号
200100454A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症治療薬に対する反応性決定遺伝子の同定と臨床応用
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
細井 孝之(東京都老人医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 白木正孝(成人病診療研究所)
  • 堀内敏行(東京都老人医療センター)
  • 井上 聡(東京大学医学部老年病学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究事業(ヒトゲノム分野)
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨粗鬆症、特に加齢に伴う骨量減少が病的に亢進し、高齢者の骨折リスクを増加させる退行期骨粗鬆症に対する対策は、高齢化が進行する現在、医学的のみならず社会的にも大きな課題である。脊椎の圧迫骨折や大腿骨頚部骨折は本症の合併症であり、骨粗鬆症の診療はこれらの予防を最大の目的としている。近年の骨量測定方法の進歩と普及により、骨量を臨床的指標とした骨粗鬆症の診療体系が構築されている。さらに血液・尿中の骨代謝マーカーが臨床応用されている。わが国で骨粗鬆症に対して適応を得ている薬剤は、活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、カルシトニン製剤、女性ホルモン製剤、蛋白質同化ホルモン製剤、ビスホスホネート製剤、イプリフボン、カルシウム製剤と多岐にわたる。これら薬剤の分子レベルでの標的は、未だ不明の部分が多く残されている。しかしながら、治療薬の効果は個人レベルで大きく異なることが観察されている。また、骨代謝における上記の臨床的指標が有意に変動するためには少なくとも6か月、骨折の予防効果を確かめるためには2-3年という長期間を要する。そこで、骨粗鬆症治療薬の有効性を個人レベルであらかじめ予測することができれば、患者の利益になることはもちろん、医療経済学的にも有意義であり、広く社会に貢献することが期待される。
本研究では、骨粗鬆症治療薬に対する反応性決定候補遺伝子の多型性について、臨床的な意義を検討するとともにその分子生物学的な意義を探索する。さらに、heteroduplex HPLCやDNAチップ技術をはじめとする最新の分子生物学的手法も駆使し、新しい骨粗鬆症治療薬反応性決定遺伝子群を同定する。本研究により、骨粗鬆症の薬物療法を最適化する手段が構築されることが期待される。本年度は骨粗鬆症治療の最終目的である骨折予防効果を検証しうるデータベースを作成するとともに、新規脊椎圧迫骨折の判定基準を策定することを目的の一つとした。さらに骨粗鬆症治療薬に対する反応性を決定する遺伝子の候補を選定するためにin vitroの系においてマイクロアレイの手法をもちいて薬剤反応性遺伝子群を抽出した。これらの遺伝子における多型性を検索し、骨折予防効果を指標にした骨粗鬆症治療薬反応性との関連性を探索するシステムを構築する。
研究方法
結果と考察
1.高齢者における骨折予防をエンドポイントとする骨粗鬆症治療の評価を検討するためのデータベース構築:東京都老人医療センター骨粗鬆症外来の受診者(地域連携医師受診者を含む) について少なくとも3年間の前向き調査を行ない、追跡し、診療形態や治療内容によって層別した群間で骨折発生率を比較検討する基盤が作成された。
2.骨粗鬆症治療法の感受性決定要因としての遺伝子多型決定にむけてのコホートの設定:成人病診療研究所を平成5年から13年までに受診した対象から無作為に1713例を登録し、基本属性を検討した。これらの対象のうち、骨粗鬆症と診断された例には無作為で治療法を割り付け、経過を追跡し、一部結果を得た。また、新規骨折発生率をエンドポイントする治療効果の判定基準を作成した。
3.骨粗鬆症治療薬に対する反応決定遺伝子の探索:骨粗鬆症治療薬反応性の分子機序を明らかにするために,初代培養骨芽細胞を用いて細胞周期関連制御因子を中心としたタンパクレベルでの発現制御の分子機構の探索ならびにマイクロアレイ法を用いた老化応答遺伝子、骨粗鬆症治療薬応答遺伝子の探索を行った。
以上の結果を統合し、骨粗鬆症治療薬反応性遺伝子群のパネルを作成し、それらの多型性と臨床データとの関連を解析し、遺伝子情報の臨床応用を目指す。
結論

公開日・更新日

公開日
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更新日
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