法改正に伴う身体障害者更生相談所及び知的障害者更生相談所の判定のあり方に関する研究(研究報告書)

文献情報

文献番号
200100329A
報告書区分
総括
研究課題名
法改正に伴う身体障害者更生相談所及び知的障害者更生相談所の判定のあり方に関する研究(研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
飯田 勝(埼玉県総合リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木鐵人(北海道立心身障害者総合相談所)
  • 佐藤徳太郎(国立身体障害者リハビリテーションセンター)
  • 金子元久(福島県精神保健福祉センター・知的障害者更生相談所)
  • 岡田喜篤(川崎医療福祉大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会福祉基礎構造改革として、平成15年度から措置費に代わる支援費制度の導入が予定されている。この支援費には、支援の程度に応じて区分が設けられることになっている。本研究は、身体障害程度区分と知的障害程度区分のあり方を科学的に検証し、市町村が行う障害程度区分の決定に対する専門的技術的支援とその判定の考え方を整理することを目的としている。具体的には、以下の2つについて提言を行うために調査研究を実施したものである。
① 支援費制度における障害程度区分のあり方
② 支援費制度における障害程度区分に係る更生相談所の判定のあり方
研究方法
(1).障害程度区分の基本的な考え方 障害程度区分の基本的考え方として、機能障害に着目するのではなく、施設支援を受ける際の、障害の状況に基づいて生じる支援の種類とその必要性と困難性を考慮して区分する必要があると考え、さらに市町村がその障害程度区分を決定することを考慮し、簡素で合理的なものにすべきと考えた。
(2).調査 障害程度区分を設定するには、施設の現状に合った障害程度区分を設定するため、実際、各種施設で行われている支援サービス(89項目)の状況を調査分析した。調査は、施設調査、個人特性及び支援項目調査の3つについての調査表を作成し、統計学的に有意な意味を持たせるため、全施設の3割にあたる身体障害者関係937施設中の311施設、知的障害者関係2,773施設中の992施設、合計1,303施設を調査対象として実施した。その結果、調査表回収施設数は490施設、有効回答率は37.6%であった。
結果と考察
調査表を集計し、施設種別ごとに調査各項目(89項目)について、統計学的に処理し、援助の必要性と困難性の程度から、障害程度区分に反映させる項目と項目数とを最終的に決定した。その結果、施設の種類によって、障害程度区分に反映させるべき項目と項目数は異なっており、身体障害者更生施設(肢体不自由者更生施設、視覚障害者更生施設、聴覚・言語障害者更生施設、内部障害者更生施設、重度身体障害者更生援護施設)では、訓練・作業等の領域の項目が多く、43項目、身体障害者療護施設では、身体介助の領域の項目が多く、48項目、身体障害者授産施設では、身体介助及び生活援助の領域が多く、52項目、身体障害者通所授産施設では、身体介助と生活援助の領域を除くと、身体障害者授産施設と類似した項目が多く、41項目、知的障害者入所更生施設は、知的障害者通所更生施設と比較して、身体介助及び生活援助の領域で抽出される項目が多く、41項目、知的障害者通所更生施設は、知的障害者入所更生施設における身体介助及び生活援助の領域を除くと類似した項目が多く、27項目、知的障害者入所授産施設は、知的障害者通所授産施設と比較して、医療・保健、生活援助、コミュニケーションの領域が多く、30項目、知的障害者通所授産施設では、知的障害者入所授産施設と比較して、医療・保健、生活援助、コミュニケーションの領域での項目が少なく、18項目、通勤寮は、身体介助の領域が全く抽出されず、医療・保健の領域が多く、21項目であった。これら該当項目数を基に、各項目の分散状況を考慮し、身体障害者更生施設は2区分、授産施設2区分、療護施設は3区分に、通勤寮、知的障害者通所施設(授産、更生)2区分、知的障害者入所施設(授産、更生)を3区分に分類することが適当であると考え、中間とりまとめとして報告したものである。しかし、知的障害者施設の障害程度区分の設定にあたっては、この調査の母集団には、強度行動障害やコミュニケーション障害者の絶対数が少なく、統計学的に有意の差が認められる支援項目を抽出することが出来なかった可能性も高いことから、このことを考慮した支援の項目を加える必要があると考えられ、中間とりまとめにはその旨付記したところである。
結論
更生相談所の障害程度区分に係る意見書作成のあり方
更生相談所の障害程度区分に係る意見書作成のための判定は、市町村が、施設訓練等支援費における勘案事項の「障害の種類及び程度」の記載において、専門的な見地からの意見が必要なときに実施されることになる。更生相談所に対する判定の依頼は、市町村で障害程度区分の決定ができない等、専門的知識を要する次のような場合が考えられる。①障害程度区分の聞き取り調査における項目の選択肢がどの区分に該当するか判断できない場合、②各種の医療・福祉専門職の診断が必要な重度(認知・記憶・注意障害、強度行動障害、コミニュケーション障害等)、重複障害、合併症(医療処置、精神疾患等)等がある場合、③市町村で障害程度区分の決定はできたが、その程度区分の決定と申請者の障害実態に著しい差違がある場合等、が想定される。判定の手順は、原則として申請者に来所を求め(来所不可能の場合、巡回、訪問で行う)、各専門職が分担して、医学的・心理学的・職能的判定及び社会的診断を行い、各専門領域ごとの評価に従い、それぞれの評価結果(評価表)を更生相談所長に提出し、総合判定会議を開催する。その際、会議のメンバーは、医師(各専門分野)、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理判定員、身体障害者福祉司、看護師、職能判定員、義肢装具士、知的障害者福祉司、ケースワーカー等であり、ケースの障害状況に応じて、関係職種を参加させることも必要である。また、オブザーバーとして、当該市町村のケースワーカーの参加も必要であれば求める場合も考えられる。会議は、各専門職がそれぞれの評価に基づき、その専門的意見を述べ、その意見も基にして、申請者の自立と社会経済活動への参加を促進する観点から、総合的に障害程度区分を判定する。その際、本人の障害状況、本人の希望する支援の内容、集団生活の適性、施設種類別の支援項目、支援費加算の必要性等を斟酌し、さらに在宅生活の可能性、施設支援の必要性も、参考として考慮する必要がある。
判定会議録・意見書の作成は、身体障害者福祉司又は知的障害者福祉司が、会議で述べられた各専門職の意見をまとめ、判定会議録を調製し、その総合判定の意見書を作成する。市町村への意見書の送付は、市町村が定める標準処理期間を勘案し、できるだけすみやかに(2週間以内)市町村へ送付することが求められる。
なお、市町村の担当者から事前相談の段階で、更生相談所に助言を求めてくる例も多いと思われる。更生相談所は、積極的に相談に応じ、適切な助言を行うことで、正式な判定依頼に至らず問題を解決させることが可能となる。この意味からも事前相談に対する積極的な更生相談所の専門的支援が期待される。また、更生相談所は、専門的相談体制の強化と市町村職員に対する研修に務めることが重要である。 

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