文献情報
文献番号
200100060A
報告書区分
総括
研究課題名
採血基準の改定と血液製剤の適正使用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
清水 勝(杏林大学)
研究分担者(所属機関)
- 池田久實(北海道血液センター)
- 笠井正晴(北楡病院)
- 小松文夫(東京医科歯科大医)
- 半田 誠(慶応大医)
- 比留間潔(都立駒込病院)
- 孝道秀樹(都立府中病院)
- 藤井寿一(東京女子医大)
- 高本 滋(愛知医大)
- 神谷 忠(愛知県血液センター)
- 柴田弘俊(大阪府血液センター)
- 前田義章(福岡県血液センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血液の自給を維持していくためには、需要と供給のバランスが必須である。将来の少子高齢化社会における供血量の減少に対処するために、採血基準については若年者の採血年齢問題と赤血球成分採血の安全性を検討し、一方需要量の増加による血液不足には適正使用の推進、特に近年増加の著明な血小板輸血のトリガー値と1回投与量の問題、および自給率未達成の静注用免疫グロブリン(IVIG)の重症感染症への適応の問題を調査した。
研究方法
採血基準については、若年者(高校生)に対する現行の200mL採血と共に400mL採血と成分採血の問題をとりあげ、社会的合意が得られるか否かについて共通のアンケート用紙を用意して、調査を4ケ所の血液センター(札幌、名古屋、大阪、福岡)でおこなった。対象は一般集団(街頭)、献血者、高校の教諭・父兄、高校生自身であるが、街頭については第三者に依託した。赤血球成分採血については、600mL全血に相当する赤血球成分のみを採取することの供血者への影響を検討した。採血後のHb値が11g/dLを下回らないことなどの条件を設定し、副作用調査を含めて共通のプロとコールにより6施設各5人以上実施することにした。
適正使用については、血小板輸血時のトリガー値の実態を共通の調査票を作成して調査することにし、1施設における連続投与した30症例を対象とした。さらに1回投与量を10単位の他に5単位とすることの可能性について検討した。またIVICについては、いわゆる重症感染症に対する適応の実態を共通の調査票を用いて調査し、1施設で3ヶ月間に50症例以内を対象とした。重症感染症としての客観的な指標としって役立つ項目について検討した。
適正使用については、血小板輸血時のトリガー値の実態を共通の調査票を作成して調査することにし、1施設における連続投与した30症例を対象とした。さらに1回投与量を10単位の他に5単位とすることの可能性について検討した。またIVICについては、いわゆる重症感染症に対する適応の実態を共通の調査票を用いて調査し、1施設で3ヶ月間に50症例以内を対象とした。重症感染症としての客観的な指標としって役立つ項目について検討した。
結果と考察
1.採血基準の改定
1) 高校生(16、17歳)献血の問題:近年400mL採血や成分採血が主流となってきたことから、200mL
全血採血の赤血球成分の利用効率が低下してきているが、最も問題となるのは現在の採血基準では高校生(16、17歳)は200mL全血採血しか行い得ないことである。
アンケートの対象は街頭での一般人[一般(街頭)]、献血に来た人[一般(献血)]、高校生の父母と教諭(父母・教諭)[以下、これら3群を(一般群)と総称] 及び高校生(学内献血実施校と非実施校)とした。
高校生献血の学内実施についての、一般群の肯定率は64~70%、高校生では54%であったが、学外実施については各群ともに70%前後の肯定率であった。また高校生献血の条件については、父母・教諭の見解として「採血基準を満たしていればよい」が65%、「本人の自主性に任せる」が57%であり、一方「やらない方がよい」は8.5%、「やるべきではない」は2%弱であった。しかしながら、400mLや成分献血については、一般群では「採血基準を満たしていればよい」が50~70%(200mLでは71~78%)、「分からない」が16~32%(200mLでは8~18%)であったが、そのうちの献血者群では他群に比して肯定的な率が高く、「分からない」との回答率は低かった。以上の結果は、高校生の献血自体は一般的には200mLを含めて肯定的に受け止められているといえるが、400mLと成分献血では「分からない」との回答率が相対的に高かったことは、これらの採血法に関する知識あるいは理解度に問題があることを窺わせる。今後の課題としては、「分からない」との回答者に教育・啓発などの介入試験を行ない、参考にする必要もあるものと思われる。
現行の400mL全血採血・成分採血の基準は循環血液量の12~13%の採血は安全性に行えるとの検討結果により制定された経緯があり、高校生もその例外ではないことから、採血自体は医学的には既に確立している。問題は高校生からの採血が鉄欠乏状態をもたらすことへの考え方にあり、これは高校生に限ったことではないといえるが、若年者における採血による鉄動態への影響に関する文献的考察を行なったところ、採血により女性では鉄欠乏状態への移行が可成り認められること、成分採血でも瀕回になると検査採血や回路内残存赤血球の影響が認められることが報告されているが、現行の採血基準であれば問題はないとの報告もある。若年者における鉄欠乏の問題は個人差が大きいことが予測されることから、採血前の問診と検査により回避することも可能であろう。なお、米国では17歳からの採血が認められている。
2)赤血球成分採血:血液の量的確保、特に採血後の回復に時間を要する赤血球成分の確保対策として、全血600mLに相当する赤血球成分を採取することの安全性を検討した。
採血条件としては、一過性の最大脱血量が循環血液量の20% 未満であること、最終採血量が循環血液量の12~13%以内であること、採取後のHb値が11.0g/dL未満にはならないことに該当する供血者とした。また、採血に伴う自他覚所見(高齢者の採血試行時に検討した項目)を採血中・後1週間、採取後のHb値の低下量として許容できる閾値、さらに採血後6ヶ月間の追跡調査を行なうことにした。さらに、採取赤血球成分の品質についての検討もした。
対象者は、6施設で上記条件に該当する男性37人(トリマ16人、CCS 21人)である。各機種別の平均の年齢は35歳、身長は172cm、体重は68kg、循環血液量は4720mL、Hb15g/dL、血清鉄100μg/dL、TIBC330μg/dL、フェリチン114μg/mL、エリスロポエチン19mU/mL、採取血液量(保存液を含む)は443mL(Ht54%)、採取時間は32分であった。また、平均の最大脱血量は12%、採取量は6.5%であった。採血中の副作用としては、血管迷走神経反応(VVR)1度を1例(2.7%)に認めたが、その他極めて軽度のクエン酸反応を8例(トリマ6例、CCS2例)に認めたが、いずれも問題なく採取を完了しえた。採取後1週間以内の副作用としては、頭重感1例、頭がぼんやり3例、2~3日後に感冒様症状1例であったが、特別な処置は必要としなかった。採取血液については上清中のビリルビンが約40mg/dLであり、CCSでは総白血球数と総血小板数がやや多い傾向を示した。採血後2週間目の回復状況は、Hb92%、血清鉄67%、TIBC101%、フェリチン52%、エリスロポエチン130%であったが、今後さらに追跡して行く必要がある。
2.適正使用の検討
1)血小板輸血:血小板濃厚液(PC)の大半は血液疾患の出血予防に用いられているが、使用量は年々増加しており今後も増加し続けるものと予測される。血小板輸血時のトリガー値については、わが国では一般に2万/μL以下とされているが、最近欧米諸国では1万/μL以下にしても問題のないことが報告されている。一方、1回投与量については内外ともに経験的に日本では10単位となりつつあり、欧米では15単位(日本での単位数に換算)が標準的な投与量として受け止められているが、実証的な研究報告はない。
(1)トリガー値と1回輸血量:任意の3ヶ月間の連続30症例までの血小板輸血例を対象として統一調査票をもちいて調査を行なった。8施設270症例への総輸血回数1,627回、総輸血量21,740単位について解析した。疾患別では血液疾患の化学療法例が63%、化学療法なし例が16%を占めていた。トリガー値については施設間差が大きいが、輸血当日の血小板検査実施例は平均75%で、その累積トリガー値は1万/μL以下が20.5%、1.5万/μL以下が34.1%、2万/μL以下が49.2%であり、前日検査実施例はそれぞれ11.0%、21.7%、32.4%であった。つまり、当日検査実施例では50%、前日検査実施例では70%が2万/μLより高いトリガー値で輸血されていた。欧米諸国ではトリガー値を1万/μL以下としても2万/μL以下の場合と出血について差のなかたことが報告され、徐々に普及しつつある。また曜日別では月、水、金曜日の週3回投与例が多かった。このような傾向は臨床医の方針の他に、医療機関内での検査体制(24時間、土、日の検査不可)の問題や血液センターからの供給体制(受注生産)よる影響をも強く受けている面があり、より適正な輸血のための体制整備が必須であると考える。
(2)5単位血小板輸血の試行:4施設で15例に計56回の5単位PCの投与が行なわれたが、同一症例に10単位PCの投与も38回行なわれ、両者の効果を比較した。5単位PC投与後の平均血小板数の増加は0.6±0.7万/μLで、10単位輸血後の増加数(1.0±0.7万/μL)に比して約60%であったが、CCIには差はなかった。また輸血間隔の平均は5単位と10単位PC投与時でそれぞれ2.3±1.2日、3.5±1.7日と、5単位PC投与例では1.2日短かった。これらの結果は、5単位PC投与により血小板数の増加が明らかに認められ、トリガー値を2万/μL以下であっても2.3日の輸血間隔を維持できることを示しているが、特にトリガー値を1~1.5万/μL以下とすることが許容できれば5単位PC投与でも十分対応できる可能性を示唆するものと考える。現状でもトリガー値が1.5万/μL以下での血小板輸血が54.6%も行なわれていることからして、5単位PCの投与を試みることは妥当ではないかと思われる。
なお、5単位PCを院内で白血球除去すると平均20%の血小板数の減損をみた。
2) 静注用免疫グロブリン
わが国の免疫グロブリン(IVIG)使用量の75%はいわゆる重症感染症に用いられていることから、国内での自給を図るためには重症感染症への使用実態を把握して、適正使用に努める必要がある。
重症感染症への使用実態を統一した調査票を用いて3ヶ月間に連続使用された50例以内の症例を8施設、184症例について調査した。調査票の記載事項を総合して重症、判定保留、軽症に区分し、重症例は臨床的には重篤な臓器障害(敗血症、腹膜炎、髄膜炎、骨髄炎、皮膚以外の膿瘍)を伴う例、2週間以内の死亡例、感染が難治性(CRP≧5が7日間以上持続)と考えられる例とし、発熱、WBC、CRPなどの所見(IVIG投予日前後の1両日のデータも参照)を参考にして判定した。
データ不備を除く138例中一般感染症は109例(59%)、術後投与は56例(30%)、強力な化学療法関連が19例(11%)であり、重症度の判定は138例中重症93例(67%)、中等症11例(8%)、軽症34例(25%)であった。IVIG投与前に抗生剤が3日間使用されていたのは52%に過ぎず、特に術後投与例では40%であった。3日投与前と後の群に重症例の比率に差はみられなかった。発熱が≧38℃で重症感染症の79%が含まれることから一応の目安と考えられるが、軽症例の48%も含まれることから体温単独では重症度の判断基準にはなり難いと考えられる。白血球数については、重症例の80%がWBC<3000あるいは>9000に含まれるが、軽症例も約40%含まれることになる。CRPについては、≧10の高値例を取り上げると重症例の78%、軽症例の17%が含まれる結果となった。このように個々の指標を単独に取り上げるとすれば、CRPを主な指標として取り上げるのが妥当であると考えられた。
次に、CRPを主な指標にして他の指標と組み合わせて重症例の補足率をみると、「CRP≧10 or WBC≧9,000~10,000」では90%であったが、軽症例も30%~40%も混入してくる点が問題であった。その点「CRP≧10~15 or 臓器障害(敗血症、腹膜炎、髄膜炎、膿瘍)」とすると重症例の把握率は83%~90%であるが、軽症例は14%以下に半減し、判定保留例の約半分が重症に分類されたことから、この基準は簡便かつ感度と特異性が可成り高いものと考える。なお、術後2~3日は感染症がなくてもCRPは10~15上昇することがある。
今後は本基準の妥当性を前方視的に臓器別に検証することが望まれる。
1) 高校生(16、17歳)献血の問題:近年400mL採血や成分採血が主流となってきたことから、200mL
全血採血の赤血球成分の利用効率が低下してきているが、最も問題となるのは現在の採血基準では高校生(16、17歳)は200mL全血採血しか行い得ないことである。
アンケートの対象は街頭での一般人[一般(街頭)]、献血に来た人[一般(献血)]、高校生の父母と教諭(父母・教諭)[以下、これら3群を(一般群)と総称] 及び高校生(学内献血実施校と非実施校)とした。
高校生献血の学内実施についての、一般群の肯定率は64~70%、高校生では54%であったが、学外実施については各群ともに70%前後の肯定率であった。また高校生献血の条件については、父母・教諭の見解として「採血基準を満たしていればよい」が65%、「本人の自主性に任せる」が57%であり、一方「やらない方がよい」は8.5%、「やるべきではない」は2%弱であった。しかしながら、400mLや成分献血については、一般群では「採血基準を満たしていればよい」が50~70%(200mLでは71~78%)、「分からない」が16~32%(200mLでは8~18%)であったが、そのうちの献血者群では他群に比して肯定的な率が高く、「分からない」との回答率は低かった。以上の結果は、高校生の献血自体は一般的には200mLを含めて肯定的に受け止められているといえるが、400mLと成分献血では「分からない」との回答率が相対的に高かったことは、これらの採血法に関する知識あるいは理解度に問題があることを窺わせる。今後の課題としては、「分からない」との回答者に教育・啓発などの介入試験を行ない、参考にする必要もあるものと思われる。
現行の400mL全血採血・成分採血の基準は循環血液量の12~13%の採血は安全性に行えるとの検討結果により制定された経緯があり、高校生もその例外ではないことから、採血自体は医学的には既に確立している。問題は高校生からの採血が鉄欠乏状態をもたらすことへの考え方にあり、これは高校生に限ったことではないといえるが、若年者における採血による鉄動態への影響に関する文献的考察を行なったところ、採血により女性では鉄欠乏状態への移行が可成り認められること、成分採血でも瀕回になると検査採血や回路内残存赤血球の影響が認められることが報告されているが、現行の採血基準であれば問題はないとの報告もある。若年者における鉄欠乏の問題は個人差が大きいことが予測されることから、採血前の問診と検査により回避することも可能であろう。なお、米国では17歳からの採血が認められている。
2)赤血球成分採血:血液の量的確保、特に採血後の回復に時間を要する赤血球成分の確保対策として、全血600mLに相当する赤血球成分を採取することの安全性を検討した。
採血条件としては、一過性の最大脱血量が循環血液量の20% 未満であること、最終採血量が循環血液量の12~13%以内であること、採取後のHb値が11.0g/dL未満にはならないことに該当する供血者とした。また、採血に伴う自他覚所見(高齢者の採血試行時に検討した項目)を採血中・後1週間、採取後のHb値の低下量として許容できる閾値、さらに採血後6ヶ月間の追跡調査を行なうことにした。さらに、採取赤血球成分の品質についての検討もした。
対象者は、6施設で上記条件に該当する男性37人(トリマ16人、CCS 21人)である。各機種別の平均の年齢は35歳、身長は172cm、体重は68kg、循環血液量は4720mL、Hb15g/dL、血清鉄100μg/dL、TIBC330μg/dL、フェリチン114μg/mL、エリスロポエチン19mU/mL、採取血液量(保存液を含む)は443mL(Ht54%)、採取時間は32分であった。また、平均の最大脱血量は12%、採取量は6.5%であった。採血中の副作用としては、血管迷走神経反応(VVR)1度を1例(2.7%)に認めたが、その他極めて軽度のクエン酸反応を8例(トリマ6例、CCS2例)に認めたが、いずれも問題なく採取を完了しえた。採取後1週間以内の副作用としては、頭重感1例、頭がぼんやり3例、2~3日後に感冒様症状1例であったが、特別な処置は必要としなかった。採取血液については上清中のビリルビンが約40mg/dLであり、CCSでは総白血球数と総血小板数がやや多い傾向を示した。採血後2週間目の回復状況は、Hb92%、血清鉄67%、TIBC101%、フェリチン52%、エリスロポエチン130%であったが、今後さらに追跡して行く必要がある。
2.適正使用の検討
1)血小板輸血:血小板濃厚液(PC)の大半は血液疾患の出血予防に用いられているが、使用量は年々増加しており今後も増加し続けるものと予測される。血小板輸血時のトリガー値については、わが国では一般に2万/μL以下とされているが、最近欧米諸国では1万/μL以下にしても問題のないことが報告されている。一方、1回投与量については内外ともに経験的に日本では10単位となりつつあり、欧米では15単位(日本での単位数に換算)が標準的な投与量として受け止められているが、実証的な研究報告はない。
(1)トリガー値と1回輸血量:任意の3ヶ月間の連続30症例までの血小板輸血例を対象として統一調査票をもちいて調査を行なった。8施設270症例への総輸血回数1,627回、総輸血量21,740単位について解析した。疾患別では血液疾患の化学療法例が63%、化学療法なし例が16%を占めていた。トリガー値については施設間差が大きいが、輸血当日の血小板検査実施例は平均75%で、その累積トリガー値は1万/μL以下が20.5%、1.5万/μL以下が34.1%、2万/μL以下が49.2%であり、前日検査実施例はそれぞれ11.0%、21.7%、32.4%であった。つまり、当日検査実施例では50%、前日検査実施例では70%が2万/μLより高いトリガー値で輸血されていた。欧米諸国ではトリガー値を1万/μL以下としても2万/μL以下の場合と出血について差のなかたことが報告され、徐々に普及しつつある。また曜日別では月、水、金曜日の週3回投与例が多かった。このような傾向は臨床医の方針の他に、医療機関内での検査体制(24時間、土、日の検査不可)の問題や血液センターからの供給体制(受注生産)よる影響をも強く受けている面があり、より適正な輸血のための体制整備が必須であると考える。
(2)5単位血小板輸血の試行:4施設で15例に計56回の5単位PCの投与が行なわれたが、同一症例に10単位PCの投与も38回行なわれ、両者の効果を比較した。5単位PC投与後の平均血小板数の増加は0.6±0.7万/μLで、10単位輸血後の増加数(1.0±0.7万/μL)に比して約60%であったが、CCIには差はなかった。また輸血間隔の平均は5単位と10単位PC投与時でそれぞれ2.3±1.2日、3.5±1.7日と、5単位PC投与例では1.2日短かった。これらの結果は、5単位PC投与により血小板数の増加が明らかに認められ、トリガー値を2万/μL以下であっても2.3日の輸血間隔を維持できることを示しているが、特にトリガー値を1~1.5万/μL以下とすることが許容できれば5単位PC投与でも十分対応できる可能性を示唆するものと考える。現状でもトリガー値が1.5万/μL以下での血小板輸血が54.6%も行なわれていることからして、5単位PCの投与を試みることは妥当ではないかと思われる。
なお、5単位PCを院内で白血球除去すると平均20%の血小板数の減損をみた。
2) 静注用免疫グロブリン
わが国の免疫グロブリン(IVIG)使用量の75%はいわゆる重症感染症に用いられていることから、国内での自給を図るためには重症感染症への使用実態を把握して、適正使用に努める必要がある。
重症感染症への使用実態を統一した調査票を用いて3ヶ月間に連続使用された50例以内の症例を8施設、184症例について調査した。調査票の記載事項を総合して重症、判定保留、軽症に区分し、重症例は臨床的には重篤な臓器障害(敗血症、腹膜炎、髄膜炎、骨髄炎、皮膚以外の膿瘍)を伴う例、2週間以内の死亡例、感染が難治性(CRP≧5が7日間以上持続)と考えられる例とし、発熱、WBC、CRPなどの所見(IVIG投予日前後の1両日のデータも参照)を参考にして判定した。
データ不備を除く138例中一般感染症は109例(59%)、術後投与は56例(30%)、強力な化学療法関連が19例(11%)であり、重症度の判定は138例中重症93例(67%)、中等症11例(8%)、軽症34例(25%)であった。IVIG投与前に抗生剤が3日間使用されていたのは52%に過ぎず、特に術後投与例では40%であった。3日投与前と後の群に重症例の比率に差はみられなかった。発熱が≧38℃で重症感染症の79%が含まれることから一応の目安と考えられるが、軽症例の48%も含まれることから体温単独では重症度の判断基準にはなり難いと考えられる。白血球数については、重症例の80%がWBC<3000あるいは>9000に含まれるが、軽症例も約40%含まれることになる。CRPについては、≧10の高値例を取り上げると重症例の78%、軽症例の17%が含まれる結果となった。このように個々の指標を単独に取り上げるとすれば、CRPを主な指標として取り上げるのが妥当であると考えられた。
次に、CRPを主な指標にして他の指標と組み合わせて重症例の補足率をみると、「CRP≧10 or WBC≧9,000~10,000」では90%であったが、軽症例も30%~40%も混入してくる点が問題であった。その点「CRP≧10~15 or 臓器障害(敗血症、腹膜炎、髄膜炎、膿瘍)」とすると重症例の把握率は83%~90%であるが、軽症例は14%以下に半減し、判定保留例の約半分が重症に分類されたことから、この基準は簡便かつ感度と特異性が可成り高いものと考える。なお、術後2~3日は感染症がなくてもCRPは10~15上昇することがある。
今後は本基準の妥当性を前方視的に臓器別に検証することが望まれる。
結論
若年者(高校生)の献血について、今回のアンケート調査結果と鉄動態の文献的考察とから、保護者の了解をえることを前提にして、400mL採血は17歳の男子、成分採血は17歳の男女を対象にして試行してもよいのではないかと考える。なお、「分からない」との回答も20~30%あったことから献血についての啓発などの介入試験を試みる価値はあるであろう。
赤血球成分採血については、対象者37人に行った結果、安全に実施できた。しかし、いまだ追跡期間が2週間と短いことを踏まえ、さらに追跡して安全性の確認に努めると共に、採血基準の設定には対象例数をさらに増し、4~6ヶ月後に再度同様の採血を行なって経過を見る必要があると考える
血小板輸血時の1回輸血量については10単位あるいは15単位以上を使用する施設とに2分されたが、1回投与量の多い施設での輸血回数の減少傾向は認められず、症例当たりの総使用量は多かった。血液センターからのPCの供給体制と院内での血小板の検査体制を整備することがより適正な輸血を行う上で必須なことと考える。
5単位血小板輸血については、現状でもトリガー値が1.5万/μL以下での血小板輸血が54.6%も行なわれていることからして、トリガー値を1~1.5万/μL以下とすることも可能と考えられ、5単位PC投与でも血小板の増加は認められた。今後症例を選択して、トリガー値を1万/μL以下あるいは1.5万/μLとして5単位PCの投与を試みることは妥当なことと考える。
IVIGの投与については、重症感染症の判断基準に問題があるものと考えられ、判断基準としてPS、WBC、CRPなどの個々の指標を単独に取り上げるとすれば、CRPを主要な指標として取り上げるのが妥当であると考えられた。このCRPを主な指標にして他の指標と組み合わせて重症例の補足率をみると、「CRP≧10~15 or 臓器障害(敗血症、腹膜炎、髄膜炎、膿瘍)」とすると重症例の把握率は83%~90%で、軽症例は14%以下となり、判定保留例の約半分が重症に分類されたことから、この基準は十分満足できるものではないにしろ、簡便かつ感度と特異性が高いものと考える。今後は本基準の妥当性を前方視的に臓器別に検証することが望まれる。なお、術後2~3日は感染症がなくてもCRPは10~15上昇することがある。
赤血球成分採血については、対象者37人に行った結果、安全に実施できた。しかし、いまだ追跡期間が2週間と短いことを踏まえ、さらに追跡して安全性の確認に努めると共に、採血基準の設定には対象例数をさらに増し、4~6ヶ月後に再度同様の採血を行なって経過を見る必要があると考える
血小板輸血時の1回輸血量については10単位あるいは15単位以上を使用する施設とに2分されたが、1回投与量の多い施設での輸血回数の減少傾向は認められず、症例当たりの総使用量は多かった。血液センターからのPCの供給体制と院内での血小板の検査体制を整備することがより適正な輸血を行う上で必須なことと考える。
5単位血小板輸血については、現状でもトリガー値が1.5万/μL以下での血小板輸血が54.6%も行なわれていることからして、トリガー値を1~1.5万/μL以下とすることも可能と考えられ、5単位PC投与でも血小板の増加は認められた。今後症例を選択して、トリガー値を1万/μL以下あるいは1.5万/μLとして5単位PCの投与を試みることは妥当なことと考える。
IVIGの投与については、重症感染症の判断基準に問題があるものと考えられ、判断基準としてPS、WBC、CRPなどの個々の指標を単独に取り上げるとすれば、CRPを主要な指標として取り上げるのが妥当であると考えられた。このCRPを主な指標にして他の指標と組み合わせて重症例の補足率をみると、「CRP≧10~15 or 臓器障害(敗血症、腹膜炎、髄膜炎、膿瘍)」とすると重症例の把握率は83%~90%で、軽症例は14%以下となり、判定保留例の約半分が重症に分類されたことから、この基準は十分満足できるものではないにしろ、簡便かつ感度と特異性が高いものと考える。今後は本基準の妥当性を前方視的に臓器別に検証することが望まれる。なお、術後2~3日は感染症がなくてもCRPは10~15上昇することがある。
公開日・更新日
公開日
-
更新日
-