急性期入院医療試行診断群分類を活用した調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100053A
報告書区分
総括
研究課題名
急性期入院医療試行診断群分類を活用した調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 五島雄一郎(東海大学)
  • 井上通敏(国立大阪病院)
  • 遠藤久夫(学習院大学)
  • 信友浩一(九州大学)
  • 今中雄一(京都大学)
  • 伏見清秀(東京医科歯科大学)
  • 橋本英樹(帝京大学)
  • 阿南誠(国立病院九州医療センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
300,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の医療水準は、医療技術の著しい進歩などにより、国際的にみても高い水準に達してきており、また全国的にみても同水準の医療を国民が享受できるようになっている。しかし、国民の医療に対するニーズの多様化と高度化に応えるためには、今後、さらに質の高い入院医療の確保に関する対策を講じていく必要がある。本研究では、急性期疾患について、診断群分類を活用しつつ入院期間や診療内容等を把握・分析するとともに、こうした分析が、診療内容の質の向上や効率化に有効か、病院経営の合理化に役立つか、病院機能を評価する際の枠組みとしてどのように活用できるかなどについて分析を行うことを目的とした。
研究方法
平成13年度は研究の初年度であり、データ収集体制及び分析体制の確立を主たる目標として研究班を組織した。研究班の構成としては、まず「診断群分類を活用した調査研究班」を置き、その下に「分野別研究班」を8班置いた。8班の名称と研究内容については「結果と考察」に示した。調査対象施設は国立病院、民間病院等の66病院である。平成13年4月1日以降入院した患者について、データ収集を実施した。収集するデータは、各病院において構築されている「診療情報データ(主傷病、合併症、転帰、入・退院経路等)」(様式1)及び「診療報酬請求データ(総点数、投薬・注射点数等)」(様式2)から本調査の実施に必要な診療情報、診療報酬情報を磁気媒体により収集したものとした。各施設から厚生労働省に提出されたデータを診断群分類に割り付けるプログラム(グルーパーソフト)にかけ、診断群分類のデータベースを作成し、それをもとに平均在院日数を変数として検討を行った。
結果と考察
13年度研究で得られた研究結果の概要は次の通りである。まず、「診断群分類を活用した調査研究班」では情報システムの開発と基本データの作成・分析を行った。本研究においては、診断群分類に必要なデータを各施設からいかに効率的かつ正確に収集するかが、最も重要な点である.そのためには、現在、各施設で運用している診療情報管理システム及び医事会計システムを活用したデータ収集システムを開発することが必要となる.そこで、収集するデータの精度の向上を図るために、様式1(月次診療情報)に関しては標準入力画面、様式2(診療明細情報、行為明細情報)に関しては医事会計システムからデータを直接収集するレセプトデータダウンロード方式の開発を試みた。また、各施設の診療情報管理担当者の業務を支援するために、インターネットを活用したQ&Aサイトの設置や情報の提供システムを開発した。さらに、研究者間の検討を容易にするために電子掲示板システムを導入した。その上で、「診断群分類を活用した調査研究班」では他の分担研究班、特に「診断群分類調査研究班」、「診断群分類の妥当性検証の方法論に関する研究班」の2班で分析に利用する基礎データの作成と分析を行った。分析としてはICD10コーディングの正確性・妥当性の検証、現行532分類の妥当性の検証と精緻化、諸外国における診断群分類の現状に関する実態調査を行った。次に「診断群分類調査研究班・診断群分類の妥当性検証の方法論に関する研究班」では急性期入院医療の適切な評価に向けて診断群分類の精緻化を試みた。分類単位は臨床状態および医療資源消費に基づくものとし、傷病名、処置・手術等による分類構造の基本ロジックを設定した上で、急性期入院医療にほぼ完全に対応できるように診断群分類を拡張、精緻化した。
併せてデータ収集法、疾患コード、分類コード体系等を検討した。「医療情報データベース構築に関する研究班」では診断群分類を単位とするデータの収集を可能にする電子カルテの開発やネットワーク環境の整備について基礎的検討を行った。「ICDコーディング手法の標準化に関する研究班」では、研究初期に集めたデータを分析し、ICDコーディングの正確性の検討と誤りがある場合はその原因について分析を行った。そして、誤りを類型化するとともに、それを教材化し、コーディングマニュアル、疑義解釈集、及びネット上でのQ&Aサイトを整備した。「医療経済学的分析に関する研究班」では、これまでの国内外における関連研究を整理し、医療技術の経済的評価に関する問題点を整理した。これに関連して「医療技術の経済的評価手法に関する研究班」では、わが国の医療機関における会計方式の現状に合ったコスト分析の方法について検討を行い、コスティングマニュアルの基本的枠組みについて整理を行った。「病院管理学的分析に関する研究班」では診断群分類の理念・分類目的/基準・利用目的/限界などの共通の理解がされているかを先ず調査し、次に、「診断群分類」の本質的影響力を医療の質・効率性・公平性の点から最大化するための検討を行った。最後に「診断群分類を用いた医療の質管理手法に関する研究班」では、近年、米国病院界で経営管理ツールとして注目されているバランスド・スコアカード法について文献的考察を行い、同法が診断群分類の枠組みと併せて医療の質の管理・向上に果たしうる役割と、同法を導入する場合の課題などについて整理した。
結論
わが国の急性期入院医療における診断群分類の適用可能性を検討する目的で、全国の66病院から収集した患者情報を基に分析を行った。平成13年度研究では8つの分担研究班を組織し、診断群分類の精緻化、病院情報システムの確立の2つを重点項目とし、平成14年度以降の調査に資するために、コスト分析の手法の検討、技術料に関する経済学的分析、病院管理学的分析の手法の検討、さらには海外の実態調査を行った。一連の研究の成果として、情報システムにおいては情報入力支援システム、データダウンロード方式という標準的病院情報システムを確立し、また関係者間の情報交換及び討議の場としての電子会議システムを確立した。分類の精緻化についても、関連臨床系学会の協力を得て、カバー率95%以上の分類の確立をほぼ達成することができた。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-