介護サービス供給システムの再編成の成果に関する評価研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100016A
報告書区分
総括
研究課題名
介護サービス供給システムの再編成の成果に関する評価研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
平岡 公一(お茶の水女子大学)
研究分担者(所属機関)
  • 武川正吾(東京大学)
  • 武智秀之(中央大学)
  • 鎮目真人(北星学園大学)
  • 塚原康博(明治大学短期大学)
  • 駒村康平(東洋大学)
  • 和気康太(明治学院大学)
  • 高橋万由美(宇都宮大学大学)
  • 山井理恵(山野美容芸術短期大学)
  • 中根真(関西福祉大学社会福祉学部)
  • 森川美絵(東京都立大学人文学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、介護保険制度の実施に伴う介護サービス供給システムの再編成がもたらす成果と問題点を、英米で実施されているプログラム評価(program evaluation)の手法の適用を含む学際的・多面的な研究方法を用いて実証的に解明することを目的として実施するものである。本研究では、この目的を達成するために、三カ年の間に、次の三つの個別研究を実施することとしている。まず第一に、自治体における介護保険の実施体制や介護サービスの利用状況等に関するデータを収集するために、市区町村全数を対象に質問紙調査を実施し、そのデータをマクロ統計データとリンクさせて分析する。第二に、自治体における介護保険の実施体制、介護サービス市場の状況、ケアマネジメントやサービスの調整・連携の実施状況等について、自治体の個別の状況に即した分析・評価を行うために、十団体程度の基礎自治体の事例分析を行い、そのうち四ないし五団体については、公私の機関・団体の訪問調査、専門職・サービス利用者への質的方法による調査、サービス利用データの分析などを併用して、より集中的な分析を行う。第三に、介護サービスの利用による効果を、費用との関連で分析するために、要介護高齢者を対象として、パネル調査法により二回にわたる質問紙調査を実施し、そのデータを多変量解析の手法を用いて分析する。本研究はまた、このような一連の調査研究の実施を通して、介護サービスに関わる政策評価の手法の開発と改善を図ることも目指している。
研究方法
第二年度目である平成13年度は、研究協力者11名の協力を得て、以下の通り研究を実施した。第一に、平成12年度に実施した自治体質問紙調査データと既存のマクロ統計データをリンクさせてデータベースを作成し、それに対して、多変量解析の手法を適用して、データ分析を行った。第二に、自治体の事例調査を、10団体について実施し、そのうち介護サービス供給体制に関して異なった特徴をもつ五団体について集中的な調査を実施した。第三に、要介護・要支援の認定を受けている要介護高齢者を対象とするパネル調査の第一回調査を、東京都墨田区において訪問面接法により実施した。調査対象は、要介護・要支援の認定を受けている高齢者から無作為に抽出した。有効回収数は911であった。平成14年度においては、これらの研究を継続するとともに、要介護高齢者パネル調査の第二回調査を実施し、介護サービスの効果測定と費用効果分析を行う。
結果と考察
研究方法の第一の地方自治体単位の統計データの分析に関しては、介護保険のサービス供給パタンとその決定要因、老人保健福祉計画と介護保険事業計画による介護サービスの整備状況、地方自治体の介護保険実施体制、ケアマネジメントの実施状況等といったテーマに即して分析を行った。得られた知見は、多岐にわたっているが、特に注目すべきものとしては、介護サービス供給パタンとして、福祉主導型と医療主導型、あるいは福祉施設中心型と在宅サービス中心型と医療施設中心型という類型が抽出され、それぞれの類型への所属を決定する要因としては、介護保険実施前のサービス水準等の制度的要因の影響が強いことが明らかになったことがあげられる。また、要介護認定への取り組み、ケアマネジメントの支援、サービスの質のモニタリング等について積極的な姿勢がみられない自治体が少なくなく、自治体の役割の再
検討が求められることも明らかにされている。研究方法の第二の自治体の事例調査については、平成13年度においては、前年度の調査事項に加えて、在宅介護支援センターの機能や、医療との関わりにも着目して調査を行った。集中的な調査の対象とした五団体は、それぞれサービス供給システムの特徴が異なるものであるため、この事例分析により、サービス供給・利用量の伸び、福祉ミックスの状況の変化、ケアマネジメントへの介護支援センターの関わり方、サービスの質の確保やサービス調整に関する自治体の関わり方などの点に関するそれぞれの自治体の独自性を浮き彫りにすることができた。特に、要介護別の利用割合のパタンの相違が、介護保険実施前のサービス供給体制の特徴の違いによって説明できること、及び、自治体によって介護サービス供給システムのなかでの介護支援センターの位置づけ、そしてその機能にかなりの違いがみられることなどの点が重要な知見であった。この事例調査は、平成14年度も継続する。研究方法の第三のパネル調査法を用いた評価調査については、第一回の調査が完了し、基礎集計が終わった段階である。
結論
以上の分析結果には、中間報告的な性格のものが多く、研究全体としての結論をここで示すことはできないが、介護保険制度が全国的に統一的な基準で実施されている中でも、介護サービスの水準や、介護サービス供給システムの特性には、自治体間での相違が大きく、その要因や、それがもたらす結果については、事例調査法と統計解析を併用して、きめ細かな分析を行っていく必要があることが明らかになったといえる。パネル調査法を用いた評価調査については、集中的に先行研究と調査設計の検討を行った結果、わが国では、ほとんど前例がない介護サービスの費用-効果分析を、適切な方法で平成14年度に実施できる見通しが立っている。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-