DRG導入検討モデルとしての冠動脈インターベンション(PTCA)全国コストデータベースに関する調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100001A
報告書区分
総括
研究課題名
DRG導入検討モデルとしての冠動脈インターベンション(PTCA)全国コストデータベースに関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
茅野 眞男(国立病院東京医療センター循環器科)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 徹(東邦大学医学部付属大橋病院第3内科教授)
  • 一色 高明(帝京大学医学部付属病院内科教授)
  • 橋本 英樹(帝京大学医学部衛生学・公衆衛生学教室講師)
  • 佐々木 豊志(国立高崎病院循環器科医長)
  • 池田 俊也(慶應義塾大学医療政策・管理学教室専任講師)
  • 尾藤 誠司(国立病院東京医療センター総合診療科医員)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、DRG(疾患別包括定額払い方式)施行の問題点を早急に検討しえるモデルとして、PTCAに限定した全国データベース(DB)を作製することにあった。初年度で全国の様々な経営主体から38病院が参加し、2000例の登録が完了。第二年度には統計解析による重要項目の決定、最終年度には二つの目標があった。第1部;追跡調査の完成と解析、第2部;今後継続してコストのモニターが行えるシステムの確立である。追跡調査は医療政策的にも必要である。なぜならDRG下に於いては、高額PTCA例に於いて入院を分けてしまうことがおこりえる。しかし追跡調査は従来から困難な分野で、現実には不十分な追跡に終わることが多く、追跡調査の実績があるDBは本邦ではほとんどなかった。
本来DBは研究者に開放する必要もある。多くの研究者にも利用できることにより、時代の要求に即対応できる発想と対策が生まれうる。
研究方法
第1部;追跡調査の完成と解析。追跡調査は参加38病院中28病院にて早期に完成し、その成績を使い、追跡費用を含めた多変量モデルの解析を行った。追跡対象は28病院の初回入院の時点で過去にPTCA,CABGの履歴のない初回PTCA957例。追跡期間中の死亡、AMI(acute myocardial infarction)、PTCA、CABGのいずれかの発生をイベント発生とした。Coxハザードモデルを用いて、初回PTCA時の患者年齢、罹患枝数、病変難度Type Cの有無,POBA本数、Stent本数、IABP本数、最終balloon sizeの7因子の影響を検討した。
第2部;今後継続してコストのモニター 将来のレセプト電算化をにらんで、レセプトコンピュータからのデータ収集を実験的に計画した。
結果と考察
第1部;追跡調査の完成と解析。追跡file解析ではまず、イベントと費用を別にした。理由は無症状で追跡造影をすると、再インターベンションが増えるとされているからである。追跡連続変数の欠損値補充はEMアルゴリズムでおこなった。イベントに関する有意な変数は、イベント発生p値でみると多枝病変.002、POBA本数が.007、難治病変が.037であった。ステントの評価は分かれる。初回入院と追跡の累積費用は一枝疾患246万、二枝疾患297万、三枝疾患352万円であった。CABGの本邦費用は、野田(9施設合計180例)西田(単独施設)で三枝448万であり、費用面からも、従来から言われている三枝へのPTCAは慎重であるべきとの見解を支持する。
第2部;今後継続してコストのモニター 計画を国立病院東京医療センター倫理委員会に提出した。倫理委員会に於いて、 4月から半年間の3回の審査が行われ、10月に承認された。患者同意をとらなくてよい根拠、匿名化手段、データ提出病院のレセコン・オーダシステムへの影響の三つが大きな問題となった。患者同意必要なしと考える根拠として、神戸大学大学院法学研究科;丸山英二先生の平成12年度厚生科学特別研究費「疫学的手法を用いた研究等における個人情報保護の在り方に関する調査研究」疫学の研究等に関する倫理指針の人体資料を使わない条項に適合すると認定された。匿名化のための暗号化;患者IDについては暗号化(RSA等)を行うと同時に管理番号の付与を行う。病院レセコン・オーダシステムへの影響の懸念には、該当病院の通常業務に絶対影響を与えないように配慮する。すなわち匿名化のもとに必要なデータを媒体に移した後、別な施設であるデータセンターにてデータの解析にはいる。この作業については、病院の責任者による監督のもとで実施する。
10月に許可が下りてから、三菱総研と済生会中央病院で開始された。
結論
イベントの発生調査は半年の追跡では不充分で最低1年が望まれる。DRGに関しては罹患枝数が大きな費用要因とされ、三枝疾患では手術との比較が重要である。本データベースの使用契約書が完成し、他の複数の研究者と日本心血管インターベンション学会理事長が契約を締結した。
電算レセプトから情報を得る研究が具体性を持って可能となったので、更に大きな研究申請を行っている。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-