看護ケアの質評価・改善の管理体制づくりに関する研究

文献情報

文献番号
200001134A
報告書区分
総括
研究課題名
看護ケアの質評価・改善の管理体制づくりに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
上泉 和子(青森県立保健大学)
研究分担者(所属機関)
  • 内布敦子(兵庫県立看護大学)
  • 粟屋典子(大分県立看護科学大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は看護ケアの質を評価するプログラムを開発・洗練し、質評価を普及することと、看護ケアの質を改善していくための、管理的組織体制づくりを検討すすることを目的に開始した。1年目である今年度は、すでに開発している第三者評価型プログラム(看護QIプログラム・第三者評価)を洗練すること、および質評価の普及をめざし自己評価型プログラム(看護QIプログラム・自己評価)を開発することの2つを行った。
研究方法
5病院に対して、「看護QIプログラム・第三者評価」、「看護QIプログラム・自己評価」、「医療の質研究会・看護サービス評価 JSQua Standard & Scoring Guideline Ver.5.5サーベイ」を依頼し、データを収集した。看護QIプログラムは、平成5年度から平成9年度の看護対策総合研究事業で開発されたもので、構造評価、過程評価、アウトカム評価の3つから構成されている。評価の領域は「患者への接近」、「内なる力を強める」、「家族の絆を強める」、「直接ケア」、「場を作る」、「インシデントを防ぐ」の6領域である。アウトカム評価は、患者・家族の満足度、および転落、転倒、褥創の発生率について3ヶ月分のデータを用いた。「看護QIプログラム・第三者評価」を洗練するための方法として、①サーベイ実施後の研究者による検討、②他の質評価(医療の質研究会・看護サービス評価 JSQua Standard & Scoring Guideline Ver.5.5)との併用による比較、③評価サーベイを受けた施設へのアンケート調査、の3つの方法を用いた。自己評価型プログラムの開発は、看護QIプログラム第三者評価ツールをそのまま用いて自己評価をしてもらい、回答をデータとして、①ツールの作成者の意図している内容が回答されているか、②質問の意味が理解されているか、③回答の傾向からみて評価尺度に合致しているか、④異なる質問でも同じような内容が回答されていないか、重複回答がないか、⑤無回答がないか、⑥回答への所要時間、の6点を検討した。
結果と考察
調査対象施設は、医療法人が2施設、公立自治体病院が2施設、公益法人が1施設であった。対象施設の選択は医療の質研究会に協力を求め、医療の質研究会にサーベイを申し込んだ施設に対して研究の説明を行い、了解の得られた施設を選択した。対象病棟は1病棟から2病棟で、選択は施設に依頼した。看護QIプログラム・第三者評価のツールを洗練するために、これまでの質評価ツールを用いてサーベイを行い、各サーベイ終了後、研究者によってサーベイ方法、評価者訓練、判定尺度について見当を加えた。サーベイの際の患者選定の条件が4項目あったが、すべての条件に該当する患者がいないことがあり、患者選定の条件を再検討する必要があった。対象者の選定手順として、まず最初に対象となる患者を選定し、その患者をサーベイ当日に最もよく知っている看護職を選定してもらうことになっていたが、これらの手順がよく理解されていなかった。条件と手順の周知をはかる必要がある。評価表の使いやすさを向上させるためには、過程評価のインタビュー用質問紙に評価尺度を併記することで、評価の意図をより理解させるよう工夫する。評価者を訓練する方法として、評価概要の説明後、評価経験者とともに1回のサーベイを見学した後に、経験者とともにサーベイを行い、評価結果を相互に検討しながら評価者の評価内的基準の向上を目指すこととした。他の質評価との併用調査は3つの施設で行った。二つの評価プログラムにおいて、同様の評価領域で評価結果が類似していたことから、妥当な評価プログラムであることが伺える。しかし今回は1件のデータを事例として分析しただけであるため、こ
の点については今後さらに分析を積み重ねる必要がある。自己評価型プログラムは、第三者評価プログラムを基盤に研究者が試作し、「看護QIプログラム・自己評価」とした。評価の方法は、施設の看護職が評価判定尺度をもとに自己評価した結果と、看護職が記載した記述部分をもとに研究者が評価判定を行い、両者の結果から総合的に判定する方法を採用した。5施設の25名の看護職に対してプレテストを行った。一部の看護職にはその後フォーカスグループインタビューを行い、評価手順、設問、評価尺度、判定手順等を検討した。自己評価プログラムの改善の課題は、①患者のいつの時点のことを答えるのか不明であること、②質問の意図、すなわち看護ケアのどの領域を評価するための項目かを示す必要について、③記載の所要時間の短縮、④一つの文章に複数の問いが含まれる箇所があり、質問文の修正が必要であること、⑤複数回答が多くみられ、選択肢の設定に工夫が必要、などであった。5施設において、第三者評価と自己評価プログラムを用いて、構造評価と過程評価を行い、その結果を比較した。構造評価は評価項目が50項目であるが、第三者評価と自己評価の評価が一致していた割合は、施設により異なるが、92%から80%であった。一方過程評価は、26項目の評価項目のうち、評価が一致したのは、33,3%から76%と、ばらつきがあった。評価の一致が少なかった項目は改訂を検討する。
結論
第三者評価プログラムの評価手順は従来のままとし、対象者(患者、看護職)の選定方法を徹底させる。評価判定尺度の配点は継続して検討する。他の基準となる質評価方法の併用による評価を継続して行う。自己評価プログラムについては、評価尺度をもとに自己評価者した結果と、記述部分をもとに研究者が総合的に判定する方法はこのまま採用することができる。

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