看護職員需給予測と民間中小病院における看護職員確保に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200001132A
報告書区分
総括
研究課題名
看護職員需給予測と民間中小病院における看護職員確保に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
菊池 令子(日本看護協会)
研究分担者(所属機関)
  • 奥村元子(日本看護協会)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化社会を迎え、医療提供体制の改革、介護保険制度の創設など、保健医療福祉のサービス提供システムが大きく変化することが予測される。その中で保健医療福祉サービスにおける看護職員の役割はますます重要になってきている。質の高い医療を効率的に提供するには、病院が機能分化し、各機能の病院がそれぞれの機能を十分に発揮することが必要である。そのためには、中小民間病院も含めて各病院における適切な看護職員の確保が必須である。しかし、地域医療の第一線を担っている中小民間病院では、看護職員確保が困難といわれており、平成12年12月の厚生省「看護職員の需給に関する検討会」報告書においても看護職員確保の地域格差、施設間格差が問題とされている。
そこで、中小民間病院における看護職員確保の実態と確保方策を明らかにすることを目的に本研究を企画した。平成12年度は、看護職員の需給予測を概観した上で、中小民間病院の看護職員確保に関する実態と施設間格差の要因を明らかにするために、まず中小民間病院で看護職員を確保する立場の看護管理者や労務管理者を対象に聞き取り調査とアンケート調査を実施した。平成13年度は、就職する側の看護職員を対象に、中小民間病院を退職した理由や、職場選択の際に重視する条件、中小民間病院についてもっている情報やイメージを把握し、民間中小病院への就労促進を阻害する要因を明らかにする計画である。平成14年度は、平成12年度と平成13年度の研究成果をもとに、中小民間病院について求人側と求職者側とのミスマッチを改善するためにナースセンターが果たすべき役割を検討し、その上で、例えば中小民間病院の看護職員確保推進者に対する相談調整など有効と考えられる事業をモデル的に実施し、評価する予定である。
研究方法
中小民間病院の看護職員の需給動向と今後の需給予測については、厚生省や日本看護協会等の既存データの集計・分析により実施した。中小民間病院における看護職員確保状況の実態把握と施設間格差に影響を与える要因分析は、中小民間病院の聞き取り調査とアンケート調査により実施した。聞き取り調査は、200床未満の「医療法人」「個人」の病院の8病院に出向いて実施し、看護管理者等にインタビューした。調査内容は、看護職員確保に関する実態、課題、看護管理者自身の展望等である。中小民間病院対象のアンケート調査は、自記式アンケート調査(郵送)により実施した。調査対象は「平成11年版病院要覧」(医学書院発行)に掲載された全国の200床未満の民間病院5260(「医療法人」「個人」の病院)の中から、3分の1に当たる1800病院を無作為に抽出した。調査期間は平成13年1月22日~2月2日。調査項目は①病院の属性・機能②看護管理体制(看護部門の位置づけ、職員配置の意向、看護実践能力の評価、業務基準等③看護職員の研修(看護管理者研修、院内・院外研修、教育企画担当者)④看護職員の労働条件(労働時間、夜勤体制、給与、休暇等⑤看護職員確保状況(職種、人数、採用方針と状況、定着状況、採用・定着対策等である。調査票回収状況は、1800票の送付に対し、有効回収数564(有効回収率31.3%)であった。倫理面への配慮については、アンケート調査は、回答者無記名で行い、また、調査結果は研究目的以外には使用しない旨を調査票送付時の調査協力依頼文書に明記した。
結果と考察
中小民間病院の看護職員の需給動向と今後の需給予測については、厚生省や日本看護協会等の既存データの集計・分析により実施した結果、これまで中小民間病院では看護婦・看護士確保が困難であり准看護婦・准看護士雇用に依存せざるを得ない状況があったが、近年徐々に看護婦・看護士確保が進んでおり、今後は看護婦・看護士を採用する意向の病院が多いことが明らかになった。
また、中小民間病院の聞き取り調査やアンケート調査による研究の結果、中小民間病院の看護職員確保状況には施設間格差があり、その格差には、病院の立地条件・機能、看護管理体制、教育・研修体制、労働条件等が大きく影響していることがわかった。
結論
中小民間病院の看護職員確保については、病院自身の課題として、病院機能の明確化など病院経営上の課題と共に、優秀な看護管理者の確保と、その看護管理者への適切な権限付与、看護職員の教育研修体制や労働条件の改善を図る必要があることが示唆された。また、特に需要の多い看護婦・看護士確保については、公的病院の看護婦・看護士採用状況の影響を大きく受けているため、政策的な課題があるものと考えられた。

公開日・更新日

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