喘息治療のガイドラインの作成

文献情報

文献番号
200001112A
報告書区分
総括
研究課題名
喘息治療のガイドラインの作成
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 昭正(日本臨床アレルギー研究所所長、東京大学名誉教授)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤幸治(同愛記念病院顧問)
  • 可部順三郎(湯河原厚生年金病院院長)
  • 中島重徳(近畿大学医学部奈良病院副院長)
  • 古庄巻史(市立岸和田市民病院院長)
  • 牧野荘平(東京アレルギー疾患研究所、獨協医科大学名誉教授)
  • 真野健次(帝京大学名誉教授)
  • 三河春樹(関西電力病院院長)
  • 秋山一男(国立相模原病院臨床研究部部長)
  • 足立 満(昭和大学医学部第一内科教授)
  • 飯倉洋治(昭和大学医学部小児科教授)
  • 山本一彦(東京大学医学部アレルギー・リウマチ科教授)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
EBM(Evidence Based Medicine)に基づいた喘息治療のガイドラインを作成することを目的とする。なお、一般臨床医にも役立つコンサイスにまとめた小冊、ならびに患者家族にも役立つものも合わせてまとめ、利用に供する。
研究方法
上記に列挙した如く、我が国における喘息の専門家(内科及び小児科)を動員し、表1に示したようなテーマと一応の担当者を決め、それぞれのテーマについて国内外の論文の検索を依頼した。特に一流雑誌に重点を置き、それぞれ表2のような評価の基準に応じて評価し、また代表的な文献についてはEvidenceを表3の如く抄録することにした。なお、全体の整合性をはかるため、全員で内容を検討した。この業務に当っては何回か会合を重ね、それぞれの立場から原稿を修正し、さらにまた非専門家の医師にも目を通してもらった。
表1.ガイドライン作成担当表
(1)喘息の管理・治療の目標,足立・西間・牧野,(2)喘息の危険因子・予防,高橋・松井・三河,(3)患者教育、医師と患者のパートナーシップ,秋山・冨岡・三河,(4)薬物によるコントロール,4-1成人喘息の長期管理における薬物療法プラン,福田・奥平・石原・佐野・伊藤・牧野,4-2成人喘息の急性増悪(発作)に対する対応,大田・宮城・真野・中島,4-3小児喘息の管理と治療,西間・松井・古庄,4-4乳幼児喘息の管理と治療,真弓・森川・三河,(5)QOL,田村・中川・可部・鳥居,(6)種々の側面,6-1アスピリン喘息,森田・冨岡・伊藤,6-2運動誘発性喘息,飯倉・佐野・古庄,6-3思春期及び20代早期の喘息, 秋山・西間・三河,6-4高齢者(老年者)喘息, 高橋・秋山・可部,6-5喘息と妊娠,福田・森田・中島,6-6職業性喘息,足立・奥平・山本・中澤,6-7外科手術と喘息,宮城・森田・牧野,6-8喘息死,足立・松井・真野・中澤6-9気象と喘息,山本・森川・伊藤,6-10喘息管理上の種々の側面,中川・真弓・中島,6-11咳喘息,田村・向山・真野
表2<評価の基準>
エビデンスの質
Ⅰシステマティックレビュー/メタアナリシス,Ⅱ1つ以上のランダム化比較試験による,Ⅲ 非ランダム化比較試験による,Ⅳ分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究による),Ⅴ 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)による,Ⅵ 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見
推奨の強さ
A: 行うことを強く推奨 B:行うことを推奨 C:推奨する根拠がはっきりしない
D:行わないよう勧められる
表3.論文のevidennce の抄録
文献,対象:1)例数,2)年齢,3)対象,試験デザイン:1)方法,2)観察期間(導入+試験),3)その他(効果判定など),結果・考察・副作用,評価
結果と考察
約50名からなる研究組織を構成。班会議を招集し、その場で今回のガイドライン作成にあたって特にEvidence Based Medicine(EBM)を重視し、それに基づいて作成することを申し合わせた。また、同時にEBMに基づいて作成されたCardiac rehabilitationのClinical practice guidelineの要約本も参考までに全員に配布した。なお、平成12年初め、糖尿病のガイドラインに関する研究会に出席し、そのときの雰囲気を班員並びに研究協力者各位に伝えた。また、平成12年末、厚生労働省医政局医療技術情報推進室長よりの通達ならびに診療ガイドラインの作成手順を全員に配布し、ガイドラインの作成の統一化をはかった。それにもとづき、班員ならびに研究協力者は、それぞれ鋭意、文献を検索し、通読し、評価しそれを纏め、報告書を作成した。それぞれの項目については数人の協力者が相協力して作成に関与した。この医師を対象にしたガイドラインは大変な労作であり、235頁のものとなったが、専門家には大変有用であると思われる。しかし、やや煩雑なであり、臨床への実用化という点では一般医にとってはやや利用し難いという難点があるのではないかと考えられる。なお、今回その報告書の他に二つのガイドラインを作成した。一つは患者向けのガイドラインであるが、これは主任研究者である宮本が作成し、10名の医師ならびに2名の患者代表に目を通してもらい、その意見を尊重して最終的に     5頁のものとした。一般医用は厚生労働省の研究班で作成した1998年のものとの整合性をはかりながら、EBMにもとづき14名の医師の関与によって作成した。このものは表や図を多くして20頁の小冊とし、利用しやすいものとした。したがって、本研究では3部のガイドラインを作成したわけである。
結論
喘息の治療の効率化、医療費の削減及び患者のQOL向上を指向し、国内外の論文を抄録し、評価し、推奨するEvidence Based Medicineにもとづく、喘息治療のガイドラインならびに一般医及び患者・家族向けでガイドライン計3部を作成した。喘息の発症率は増加しているが、この傾向は今後とも続くと考えられる。現在、喘息の90%は一般医によって治療されているという現実があり、一般医にも受け入れ易いもの、また患者、家族にも役立つ平易なガイドラインの作成は極めて有用であると考える。これらのガイドラインの普及により喘息の治療がより効率的に行われるようになると考える。なお、患者やその家族に及ぼす好影響は大なるものがあると考えられる。より適切な治療により喘息症状の改善がはかられ、通院回数、さらには入院患者数が減ずることにより患者のQOLが高まり、医療経済に大きく寄与することは確実であると考える。

公開日・更新日

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