マネジドケアにおける医療システムの経営管理技法の導入効果に関する研究

文献情報

文献番号
200001095A
報告書区分
総括
研究課題名
マネジドケアにおける医療システムの経営管理技法の導入効果に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
小山 秀夫(国立医療・病院管理研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 みち子(国立健康・栄養研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
5,346,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
欧米で注目を集めているマネジドケアは、最近もその動向が各方面で注目されており、論文も数多く発表されている。本研究は、マネジドケアという観点から、医療システムにとって最適な経営管理手法を構築することを目的として実施した。
研究方法
今年度は昨年度の研究結果を踏まえ、以下の研究を行った。第一に、バランス・スコアカードの医療への適用の可能性の模索である。第二に、平成11・12年の国立医療・病院管理研究所管理者研修会の受講生を対象にわが国の医療機関における経営管理技法に関する意識調査を行った。分担研究としては、「栄養ケア業務管理項目」を用いた栄養士業務調査手法の開発・実用性の検証を行った。国内外の先行研究から「栄養業務管理項目」を用いた栄養士業務調査手法を開発した。
結果と考察
バランス・スコアカードは、1992年にハーバード・ビジネスレビューにRobert KaplanとDavid Nortonが論文を掲載したことから始まると言われている。バランス・スコアカードとは、組織のビジョンと戦略を「財務的視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」という4つの視点を業務評価指標とした業務尺度であると同時に、マネジメント・システムでもある。米国でも医療機関においてバランス・スコアカードを医療機関に適用する試みは始まったばかりであり、多くの医療機関は未だ従来の財務的・非財務的業績評価指標で業務評価を行っている場合が多いことが明らかとなった。本研究では、バランス・スコアカードの医療機関における萌芽的研究、Duke大学附属小児病院、Montefiore 病院、May Instituteの事例を紹介し、米国の状況を分析し、医療機関におけるバランス・スコアカードの適用について論じた。その結果、マネジメント・ツールとして有用であるだけではなく、業績情報の開示と病院間の業績比較を可能にし、業績改善に役立てることが可能であることを示した。第二に、その結果、医療機関の管理者は、経営管理に関する関心は高いという結果が得られた。また米国のマネジドケア、DRGs/PPS等に対する意見では、DRGs/PPSについての反対意見が医師に多いという特徴があった。また経営姿勢に関する要因を因子分析した結果では、①教育、②目標・動機づけ、③経営管理体制、④意識改革について、の4つのファクターにわけることができた。わが国においては、医療機関管理者への経営技法等の意識調査はほとんど行われていなかった。ゆえに、本調査によりわが国の医療機関管理者の経営意識、米国の医療政策等に対する考え方等が明確となり、貴重な知見を得ることができた。本調査は、今後のわが国の医療制度改革にも大きく寄与する調査であり、より詳細な分析を行い、次年度以降の研究につなげる必要があると考える。分担研究は、その実用性を確認することができた。
結論
今年度の研究により、以下の成果が得られた。
1)バランス・スコアカードの医療機関における適応が確認できた。バランス・スコアカードは、マネジメント・ツールとして有用であり、「顧客の視点」と顧客(標的集団)の特定が重要であることを示している。バランス・スコアカードにより、業績情報の開示と病院間の業績比較が可能となり、わが国の医療機関の業績改善に役立つだけではなく、わが国の医療費抑制政策にも効果を発揮するものと考える。
2)病院幹部職員に対するアンケート調査では、病院幹部職員の経営管理技法や米国の医療政策への意見等の調査により、今後のわが国の医療経営に対する方向性を示唆することができた。調査結果は詳細な分析を行い、来年度は、今年度の調査結果からさらなる調査を実施し、医療経営の最適化に資する研究を実施できるものと考える。
3)分担研究により、栄養士業務調査手法の開発と、現場におけるその実用性を確認することができた。 以上の結果から、病院管理者への医療経営関連研修を行うことにより、医療費適正政策の一翼が担えるものと考える。今年度のバランス・スコアカードの研究並びに病院幹部職員へのアンケート調査は、来年度さらなる分析・検討を重ね、今後の医療費抑制政策に寄与する政策提言が行うことが示唆できた。また、分担研究においても栄養部門のみの「栄養ケア業務管理項目」による調査であるが、今後は栄養士だけではなく、他分野の専門職においても、同様の業務管理項目指標の作成が可能であり、病院管理全体に寄与できるものと考える。また、栄養ケア業務の重要性を示唆することにより、今後の効率的な病院給食のあり方を提言することが可能となる。 わが国の医療政策を鑑みると、病院経営のあり方が大きく医療費に反映しているという実態があり、これらの実態を早急に是正しない限り、医療制度の抜本改革は困難であろう。第4次医療法の改正において、医師の研修が義務づけられたが、先に述べた背景から、今後は医師としての技術の研修のみならず、病院管理者への医療経営関連研修を行うことにより、医療費適正化政策の一翼が担えるものと考える。今年度のバランス・スコアカードの研究並びに病院幹部職員へのアンケート調査は、来年度さらなる分析・検討を重ね、今後の医療費抑制政策に寄与する政策提言が行うことが示唆できた。また、分担研究においても栄養部門のみの「栄養ケア業務管理項目」による調査であるが、今後は栄養士だけではなく、他分野の専門職においても、同様の業務管理項目指標の作成が可能であり、病院管理全体に寄与できるものと考える。また、栄養ケア業務の重要性を示唆することにより、今後の効率的な病院給食のあり方を提言することが可能となろう。

公開日・更新日

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