文献情報
文献番号
200001075A
報告書区分
総括
研究課題名
患者満足度の向上を目指したネットワークによる医療情報提供体制の検討
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
谷水 正人(国立病院四国がんセンター)
研究分担者(所属機関)
- 高嶋 成光(国立病院四国がんセンター)
- 江口 研二(国立病院四国がんセンター)
- 久野梧郎(久野内科院長、松山市医師会)
- 末光 清貞(末光耳鼻咽喉科院長、松山市医師会)
- 松坂 俊光(松山赤十字病院外科部長)
- 秋山 昌範(国際医療センター第5内科医長、情報システム部長)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
患者満足度の向上は、医療者の判断や治療の方針をわかりやすく説明することから始まる。インターネットは医療機関間連携と同時に患者への情報の開示にも有用な手段である。我々は患者満足度の高い病診連携推進のためにインターネット(含イントラネット)を利用した医療情報提供体制のあり方を検討する。
研究方法
愛媛県医師会では平成7年より愛媛県医師会地域医療情報ネットワーク(EMAネット)が構築され、平成13年2月現在、県医師会員の850名(県医師会員の32%)、松山市医師会員の350名(市医師会員の36%)が加入している。このEMAネットを軸にネットワークによる医療情報提供体制を整え、病診連携を進めた。
本研究では、
1.医療機関間で、電子メールを活用し、患者情報の提供、交換をおこなう。
2.情報端末を診察室の患者の見えるところに設置し、医療の情報を患者に示しながら説明する。
3.医師会ホームページに医療機関情報マップ(クリッカブルマップ)をおき、各診療科、疾患ごとの医療機関情報を提供する。の3項目を目標に掲げ、研究を推進する。医師会のインターネットによる情報発信のための基盤整備、連携のための情報発信を行う。これらが実効性をもつためには地域の病院と開業医がインターネット(EMAネット)に参加しなければならない。インターネットの有用性を啓蒙し、会員間にインターネットに対するニーズを創出する。またインターネット入門の援助、各医療機関にはネットワーク管理者が必要であり、その養成を支援する。
本研究では、
1.医療機関間で、電子メールを活用し、患者情報の提供、交換をおこなう。
2.情報端末を診察室の患者の見えるところに設置し、医療の情報を患者に示しながら説明する。
3.医師会ホームページに医療機関情報マップ(クリッカブルマップ)をおき、各診療科、疾患ごとの医療機関情報を提供する。の3項目を目標に掲げ、研究を推進する。医師会のインターネットによる情報発信のための基盤整備、連携のための情報発信を行う。これらが実効性をもつためには地域の病院と開業医がインターネット(EMAネット)に参加しなければならない。インターネットの有用性を啓蒙し、会員間にインターネットに対するニーズを創出する。またインターネット入門の援助、各医療機関にはネットワーク管理者が必要であり、その養成を支援する。
結果と考察
1.システムの基盤整備:松山市医師会のEMAネット専用線接続(64Kbps->128Kbps)(平成10年度)とEMAネットのがんネットからの独立(平成11年度)によりネットワーク基盤は整った。平成12年度は常時接続型高速インターネットに向けた整備を行った。すなわちEMAネットは愛媛情報スーパーハイウエイ(http://www.pref.ehime.jp/joho/sido2.htm)と接続され県内あまねくダイアルアップアクセスポイントが出来,県内すべての救急医療機関は専用線接続されることになった。またインターネットの出口が愛媛CATVに変更され高速回線でインターネット接続されることになった(平成13年4月開始)。高速の常時接続型VPN(Virtual Private Network)網が医師会に整うことになり,本格的な病診連携ネットワークの基盤は完成することになった。平成12年度中は医師会内のサーバー群にサービスの充実を図り,イントラネットWebサーバー,FAXサーバー,医療機関データベース,文書管理,病診連携のための掲示板(症例検討,学術情報,週間疾患情報など)によるWebサービスをさらに充実させた。
2.医療機関情報の公開(医師会専用ホームページ):松山市医師会所属医療機関の対応可能医療を,病診連携ガイドとして医師会専用ホームページ上に公開した(平成10年度)。平成11年から12年度にかけては緩和医療,在宅医療,後方病院(入院受け入れ医療機関),脳血管障害対応マップを充実させ,Web連携データベース化し機能を強化した。
3.市民への一般情報サービスとして,医師会ホームページの充実を図り,地区別および診療科別に松山市医師会医療機関案内を公開した(平成11年度)。すなわち1医療機関1ページを設け,アクセス情報,診療科案内,診療時間案内,入院の可否を掲載し,ホームページを持つ医療機関のホームページへリンクを張った(平成12年2月公開,URL<http://www1.ehime.med.or.jp/mma/koukai/annai-indx.html>)。平成12年度はさらに医師会公開ページをiモード化し,携帯電話からのアクセスも可能とした。
4.医師会員ネットワーク入門講習会:医師会員のインターネットへの参加を援助するため,パソコン一人一台の環境のネットワーク講習会を平成11年1月から開始し,月1回開催した。平成13年3月までに24回開催,参加延べ人数180名であった。
5.ネットワーク管理者講習:医療者のネットワーク管理者養成を目的に“愛媛医療情報ネットワークの集い"を平成11年8月から定期開催した。この講習会では情報通信分野の専門家を招き,ネットワーク技術の解説を聴講し,討論する。平成13年3月までに14回開催した。毎回30から70人が参加した。
6.医師会員インターネット利用状況調査:医師会員のインターネットに関する実態調査を行った(平成11年2月,平成12年10月)。病院のインターネットネットワーク化は急速に進展し(病院LAN化は松山市基幹病院の6病院中2病院から5病院へ,ホームページ公開は1病院から4病院へ増加),医師会員のインターネット参加率は47%から61%に増加した。EMAネット以外に病院の独自ネットワーク,民間プロバイダの活用も目立った。医師会員のインターネット利用者数は40歳代まで80%以上,50歳代73%,60歳代41%であった(回答者構成比から全体を推定するとネットワーク利用率は70%を超えている)。今後は60歳代以上の高齢医師を如何に導くかが課題である。また診察室にパソコンを設置する医師はまだ少なく,患者への情報提供のための啓蒙が必要であった。医師会のネットワークサービスとしてはメールによる情報配信に評価が高く,ホームページの活用は低調であった。しかし利用度の低い項目も必要度は高いと認識されていた。
平成12年度にはEMAネットのブロードバンド化(CATV高速回線への移行)が決まり、また愛媛県が企画する愛媛情報スーパーハイウエイへも協力し、県民への医療情報提供にいっそう貢献することになった(平成13年4月開始)。患者の個人情報に踏み込んだ情報交換は不十分であったがこれはユーザーのネットワークレベルとEMAネットの整備が不完全であったためである。50代までの会員のネットワーク参加率が70%を超え、常時接続型のVPNネットワーク網が構築されるにいたりようやくその環境が整った。
2.医療機関情報の公開(医師会専用ホームページ):松山市医師会所属医療機関の対応可能医療を,病診連携ガイドとして医師会専用ホームページ上に公開した(平成10年度)。平成11年から12年度にかけては緩和医療,在宅医療,後方病院(入院受け入れ医療機関),脳血管障害対応マップを充実させ,Web連携データベース化し機能を強化した。
3.市民への一般情報サービスとして,医師会ホームページの充実を図り,地区別および診療科別に松山市医師会医療機関案内を公開した(平成11年度)。すなわち1医療機関1ページを設け,アクセス情報,診療科案内,診療時間案内,入院の可否を掲載し,ホームページを持つ医療機関のホームページへリンクを張った(平成12年2月公開,URL<http://www1.ehime.med.or.jp/mma/koukai/annai-indx.html>)。平成12年度はさらに医師会公開ページをiモード化し,携帯電話からのアクセスも可能とした。
4.医師会員ネットワーク入門講習会:医師会員のインターネットへの参加を援助するため,パソコン一人一台の環境のネットワーク講習会を平成11年1月から開始し,月1回開催した。平成13年3月までに24回開催,参加延べ人数180名であった。
5.ネットワーク管理者講習:医療者のネットワーク管理者養成を目的に“愛媛医療情報ネットワークの集い"を平成11年8月から定期開催した。この講習会では情報通信分野の専門家を招き,ネットワーク技術の解説を聴講し,討論する。平成13年3月までに14回開催した。毎回30から70人が参加した。
6.医師会員インターネット利用状況調査:医師会員のインターネットに関する実態調査を行った(平成11年2月,平成12年10月)。病院のインターネットネットワーク化は急速に進展し(病院LAN化は松山市基幹病院の6病院中2病院から5病院へ,ホームページ公開は1病院から4病院へ増加),医師会員のインターネット参加率は47%から61%に増加した。EMAネット以外に病院の独自ネットワーク,民間プロバイダの活用も目立った。医師会員のインターネット利用者数は40歳代まで80%以上,50歳代73%,60歳代41%であった(回答者構成比から全体を推定するとネットワーク利用率は70%を超えている)。今後は60歳代以上の高齢医師を如何に導くかが課題である。また診察室にパソコンを設置する医師はまだ少なく,患者への情報提供のための啓蒙が必要であった。医師会のネットワークサービスとしてはメールによる情報配信に評価が高く,ホームページの活用は低調であった。しかし利用度の低い項目も必要度は高いと認識されていた。
平成12年度にはEMAネットのブロードバンド化(CATV高速回線への移行)が決まり、また愛媛県が企画する愛媛情報スーパーハイウエイへも協力し、県民への医療情報提供にいっそう貢献することになった(平成13年4月開始)。患者の個人情報に踏み込んだ情報交換は不十分であったがこれはユーザーのネットワークレベルとEMAネットの整備が不完全であったためである。50代までの会員のネットワーク参加率が70%を超え、常時接続型のVPNネットワーク網が構築されるにいたりようやくその環境が整った。
結論
愛媛県、松山市医師会のネットワーク利用の機運は大いなる高まりを見せている。IT時代の流れに乗り3年間の研究活動の成果は当初の予想を遙かに上まわった。医療におけるネットワーク化は確かにブレイクし始めている。他方、全国的に見るとまだ医療のネットワーク化には温度差が大きい。本研究成果をネットワークによる医療情報交換基盤構築のモデルとして大いにアピールし、医療におけるネットワーク活用を推進していきたい。
公開日・更新日
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