リポソームを用いた遺伝子導入法の開発、その有効性、安全性に関する研究

文献情報

文献番号
200000974A
報告書区分
総括
研究課題名
リポソームを用いた遺伝子導入法の開発、その有効性、安全性に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
北川 隆之(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 西島正弘(国立感染症研究所)
  • 野村義明(国立感染症研究所)
  • 安藤秀一(第一製薬(株)創剤研究所)
  • 片岡 捷夫(第一製薬(株)創剤研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,145,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脂質を成分とするリポソームは、安全性や応用性の高さなどから、遺伝子治療ベクターとして期待されているが、遺伝子導入効率が低く、実用化には至っていない。本研究では、遺伝子導入ベクターとしてカチオン性リポソームの有用性に着目し、遺伝子発現の定量的な解析を基にして、安全、かつ発現効率の高い新規カチオン性リポソーム製剤の開発を行う。
研究方法
ヒト由来の腫瘍細胞(HeLa、A549) 、HeLa融合細胞を5%ウシ胎児血清を含むDMEM培地中で20-48時間培養した後、カチオン性リポソーム(TFL、第一製薬;リポフェクトアミン, GIBCO-BRL) /GFP発現プラスミド複合体を培地(含血清または無血清)に添加した。37℃、5%CO2 中で3-5時間の培養を行った後、新しい培地で24時間さらに培養し、GFP発現効率に及ぼす血清成分の影響をFACSにより定量的に測定した。リポソーム/遺伝子複合体の体内挙動に及ぼす血球の影響についても検討した。
結果と考察
我々はヒト細胞株への in vitro 遺伝子導入について蛍光性GFP遺伝子の細胞内発現を指標とした定量的な解析を行い、血清存在下でも比較的高い遺伝子発現効率を示す新規カチオン性リポソームを開発した。新規リポソームによる遺伝子発現においては、導入したDNAの細胞内安定性と発現効率がよく相関する。また本研究では、血清などに含まれる負電荷のプロテオグリカン類が静電的な相互作用を介して、遺伝子の細胞内導入過程を阻害し、リポソームによる遺伝子発現効率に関与する可能性を明らかにした。これらの相互作用がリポソーム/DNA複合体の物性や機能にどのような影響を与えるのか、またどのような血清因子が関与するかなど、今後の検討課題である。正電荷のリポソーム/DNA複合体をマウス静脈に投与すると肺に集積した後、肝臓に移行する。マウス投与後、血液中の血球細胞数変化について検討した結果、正電荷複合体が白血球、血小板などの血球細胞との相互作用により凝集物等を形成して肺に分布し、その後、肺から遊離して肝臓に取り込まれたのであろうと推定した。
結論
ヒトの遺伝子治療への応用を目的に、血清添加培地中での安定性と遺伝子発現効率を指標に開発された新規カチオン性リポソーム(TFL-08)は、血清存在下でも比較的高い遺伝子発現効率を持つことが特色である。新規カチオン性リポソームのヒトがん細胞への外来性遺伝子の導入効率において、リポソーム/DNA複合体の細胞内安定性の重要性についてこれまでの研究で明らかにした。今回、リポソームと血清成分との相互作用に関する解析より、血清などに含まれる負電荷のプロテオグリカン類が静電的な相互作用を介して遺伝子の細胞内導入過程を阻害し、発現効率を調節する可能性を明らかにした。今後これらの相互作用が、どのようにリポソーム/DNA複合体の構造や機能に影響を与えるのか、さらに検討する必要があろう。またリポソーム/DNA複合体と血球成分との相互作用がDNA複合体の体内挙動にも関与することが示唆され、標的細胞に対する遺伝子治療を検討する際の重要な課題と思われる。

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