難治性腎疾患の病態解明と医療への応用に関する研究

文献情報

文献番号
200000953A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性腎疾患の病態解明と医療への応用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
藤本 純一郎(国立小児病院小児医療研究センター病理病態研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 上出利光(北海道大学免疫科学研究所)
  • 雨谷 栄(株式会社ツムラ中央研究所)
  • 木庭 守(大鵬薬品工業株式会社)
  • 前田雅弘(株式会社免疫生物研究所)
  • 宮浦修一(生化学工業株式会社)
  • 森山雅美(東レ株式会社)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
16,251,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各種の難治性腎障害の克服を目指し、その発症を、各種の機能分子の発現変化ならびに機能修飾に着目して研究することを目的とする。また、その成果を新しい疾患制御法の開発に応用する。
研究方法
1)オステオポンチン(OPN)組み換え体および抗OPN抗体作成:OPNのアミノ酸配列情報を基に10数個のアミノ酸からなる合成ペプチドを免疫し、新たな抗体を作成した。
2)OPN定量ELISAによる各種疾患患者血清値の測定:昨年度までに作製したヒトおよびマウスOPN測定 ELISAを用いて、腎疾患を含む各種難治性疾患患者の血中OPN値を測定した。
3)OPN発現系の確立:ウイルスベクターによるOPN発現系を作成した。
4)腎炎モデル:抗基底膜抗体のマウス投与による腎炎モデルを用い、尿量測定、OPN分布、抗OPN抗体投与を行った。
5)Stx1感受性試験:ヒト腎尿細管上皮細胞(HRCEC)などを用いたStx感受性測定系によりNBTの効果を解析した。Stxの細胞内輸送は共焦点レーザー走査型顕微鏡により観察した。
6)StxのGb3受容体と結合力に関する速度論的解析:糖脂質Gb3を固相化したメンブレンを用いて表面プラズモン解析(Biacore解析)を行い、結合速度定数と解離速度定数を求めた。
結果と考察
1)新たな抗OPN抗体作成:OPNの非RGD部位に相当する部分の合成ペプチドを免疫した結果、OPNによる細胞遊走および細胞接着を抑制する単クローン抗体を樹立した。非RGD部位もOPNの機能に関係すると考えられる。
2)各種疾患でのOPNの作用:肝障害モデルでは病変局所へのマクロファージの浸潤は肝内クッパー細胞によって産生されるOPNが制御していることを明らかにした。また、肺の肉芽腫形成や糖尿病性動脈硬化病変の増悪にOPNが関与することを明らかにした。本研究で、OPNはマクロファージが関与する病変成立に関与することが明らかになった。
3)腎炎モデルでの抗OPN抗体の治療効果:腎炎モデルに抗OPN抗体を投与すると、尿中OPN排泄量の増加の抑制、メサンギウム領域の細胞外基質の拡張およびボウマン嚢と糸球体の癒着の抑制が見られた。炎症反応制御に抗OPN抗体が有用と予想される。また、OPNは尿細管上皮細胞のみならずマクロファージ浸潤部位に一致して強い陽性所見が得られた。
4)NBTによるStx1毒性抑制効果: NBTが皮膚毛細血管内皮細胞やHRCECのStx感受性を抑制すること、それがアポトーシス抑制によるものであることを示した。
5)Stxの細胞内輸送の詳細とNBTの効果: Stxは細胞内ではEE→LE→Golgiへと輸送されることが明らかになった。一方、NBT処理はEE→LE 経路を阻止し毒素を細胞外へ放出する作用を有した。
6)表面プラズモン共鳴を用いたStxとGb3受容体との結合親和性解析:糖脂質Gb3を種々の比率で固相化したセンサー膜を用い、Stxとの結合親和性を解析した。Stx1は結合速度定数、解離速度定数がともに高く、逆にStx2は両定数がともに低いことが判明した。
結論
1)合成ペプチドを用いてOPNによる細胞遊走や細胞接着を阻止する新たな抗体を作成した。
2)OPNが肝障害、糖尿病性動脈硬化症、肉芽腫形成に関与することをアデノウイルス発現系などで明らかにした。
3)抗GBM抗体投与によるマウス腎炎モデルにおいて、OPNがマクロファージ関連病像の形成に関与することを示した。また、同系での抗OPN抗体投与により病変の重篤化を抑制することができた。
4)NBTはStx1によるHRCECのアポトーシスを抑制することによりStx1毒性を抑制する作用を有することを示した。
5)Stx1は細胞内に取り込まれた後、EE→LE→Golgiへと輸送されるが、NBT処理細胞ではEEからLEへの輸送が阻止されておりEEから細胞外に放出される機序の存在を示した。
6)Stx1とStx2は受容体Gb3への結合親和性が異なることを速度論的に明らかにした。

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