都道府県レベルで活用できる効果的な研修技法の開発に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000888A
報告書区分
総括
研究課題名
都道府県レベルで活用できる効果的な研修技法の開発に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 智史(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
  • なし
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域保健法の完全施行後、都道府県では研修体制の整備を進めているところであるが、具体的な研修の内容及び技法については、研修担当者に一任され、これまで十分な配慮がなされてきたとはいいがたい。地域保健に関する住民のニーズが多様化し、行政が果たすべき役割も変化している現在、自治体の公衆衛生従事者が新たに獲得すべき知識・技術や態度が増大かつ複雑化しているにもかかわらず、効率的、効果的な修得のための研修技法の開発が遅れている。本研究では、都道府県レベルでの公衆衛生従事者教育における効果的な研修技法の開発および評価を行い、自治体における研修水準の向上を図ることを目的とする。
研究方法
平成12年度は、現場ですぐ活用できる社会調査法修得のための研修技法の開発を目的として、以下の2点を実施した。研究1.米国の公衆衛生大学院の社会調査法関連科目、海外の教科書、国立公衆衛生院の特別演習及び合同臨地訓練等を参考に、自治体の公衆衛生従事者を対象とした、演習主体の卒後研修プログラム(3日間)を開発。研究2.実際にI県の保健所、市町村保健センターの公衆衛生従事者を対象とした研修会で使用し、受講者に対して事後意見調査を実施。 以上より、基本的に本テーマのような技術伝達型の研修において、このような演習主体の方法は有効であることがある程度明らかとなった。また、このような演習主体の研修と現場での実践を組み合わせ、それを都道府県がサポートしていく体制が、研修を実際の業務に活かしていく上で必要であると考えられた。倫理面への配慮として、研修技法の試行に関しては、主催者側と事前に十分な意思統一を行い、受講者の不利益とならないよう注意した。さらに事後の意見調査に関しては、個人や地域を特定できないよう、十分配慮した。
結果と考察
研究1.海外の教科書、国立公衆衛生院の特別演習及び合同臨地訓練等を参考に、現場で活用できる社会調査法の修得を目指した、自治体の公衆衛生従事者を対象とした演習主体の卒後研修技法を開発した。第1回:調査の課題・目的の設定、対象・方法の選定。第2回:調査票の作成。第3回:調査の準備・実施、データ入力と解析。研修プログラムの内容とそれに付随する演習問題を同時に開発した。研究2.講義内容の方が易しく、課題・練習問題の方が難しいという回答が得られた。平均(ポイント)は、各選択肢の番号を単純平均したものであるが、上記の傾向を裏付けている。受講者にとって、講義は第3回が比較的難しく、課題・練習問題は第2回が最も難しかったと考えられる。回答者の一部には、事前に期待していた研修と異なると感じる者がいた。ただ、全体としては同僚に勧めたいとする者が多くを占めた。60点を合否ラインにした場合の本研修プログラムの採点は、最小値50点、最大値100点、平均値78.9点、標準偏差11.6。自由記載意見中、良かった点としては、(1)演習を主体にしていたので、グループワークや講義主体の研修より自分自身で考えることができた、(2)実際にすぐ使えそうであるなど。改善したい点としては、(1)それぞれの課題に対する受講者個人へのコメントがほしかった、(2)研修開催通知の内容と実際の研修内容が異なった、(3)今後のフォローアップ体制がほしいなど。今回実施した演習主体の研修プログラムは、課題・練習問題の内容がやや難しかったとの反応はあったものの、概ね受講者にとって満足のいくものであったことがわかる。講義やグループワークでは、ともすれば集団の中に埋没して、受講者によっては本来の研修目標を達成できないこともある。各受講者が自分自身の責任で取り組まざるを得ないこのような演習主体の研修は、特に今回のような技術
伝達型の内容の場合、有効であると考えられた。今回はプロセス評価のみであったが、今後は、研修が現場でどのように活かされているかまで評価していくことが望ましい。そのためには、県と協力しながら、研修とその後のフォローアップを組み合わせていくような体制づくりが必要であると考えられる。
結論
平成12年度の研究によって、基本的に社会調査法のような技術伝達型の研修において、このような演習主体の方法は有効であることがある程度明らかとなった。また、このような演習主体の研修と現場での実践を組み合わせ、それを都道府県がサポートしていく体制が、研修を実際の業務に活かしていく上で必要であると考えられた。今後は、本研究の成果を踏まえ、ケースメソッド、ディベート、演習主体の社会調査法プログラムなどの具体的研修事例を載せ、かつ都道府県の研修サポートのあり方にも言及した、都道府県研修担当者のための「研修技法マニュアル」を作成する予定である。

公開日・更新日

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